二十六話
更新遅れてすみません。三十九度の熱には勝てませんでした。
「どういうことだ?」
アルフィーがこちらを半眼で睨んでくる。
「さあ?」
即座に顔を明後日の方に向け、視線を逸らす。
「明らかに知ってるよね?」
「いえ、知りません」
「話さなければ魔法で橋から落とす。魔術、使えないんだよな?」
さっきよりも声に迫力があった。
それが言ったことを本当に起こしてしまう、ように思えた。
「了解です。喋ります」
顔の向きを戻し、正座する。
正座をしたのは、正直に話すという意思表示のためだ。
もしくは、正座することに慣れているからかもしれないけど。
「その姿勢は何?」
「正座です。正直に話そうとする私の意思表示です」
「分かった。で、どういうことなんだ?」
「はい。元々、魔物を人に変えてしまう短剣は本来、ありとあらゆるものを変える術式なんです。例えば、普通の人間を魔術師に変えたり、とか」
「それは凄いことだな」
「そうなんです。おかげでうちの世界じゃもの凄い戦争が起きました」
思い返せば、浮かび上がる。あの記憶が。
市民が魔術師となって、大勢で襲い掛かってくるあの出来事を。
もう、嫌だな~。
「アハ、アハハ、アハハハ」
「おーい。戻ってこーい」
死んだ目をして笑っていると、アルフィーが武刀の頬を何度も叩く。
「ハッ! 俺は何を?」
「気にするな。で、話の続きだがそれなら、短剣はどうして魔物を人に変えられるんだ?」
「それは短剣の変える、という術式で魔物を人に変えたんです。この短剣は、本来起きないようなことを起こしてしまう物なんです」
「なるほど。それで男が女に変わるのは?」
「それは魔物を人に変えて、性別が男だったら俺が愛せないでしょ?」
また、時が止まった。
「ん? あれ?」
周りが静まったことに驚き、あたふたしてしまう。
「なるほど。そういうことか」
ジブラリアがゆっくりと立ち上がる。
「俺が女になったのは」
左足を一歩踏み込み、武刀の手前に来る。
両手は握って、右手を下げて左手は前にいる。
「貴様の趣味が原因かー!」
ジブラリアの右ストレートが、武刀の右頬に直撃する。
「ぐほッ!」
見た目は女。中身は竜。ジブラリアの一撃はとても重く、きりもみしながら吹き飛び、顔から着地する。
「まあいい。男が女になることは滅多に、いや、絶対にない経験だからな。面白そうだ」
主を殴ったジブラリアは、スカッとした表情をしていた。
ただ、今の行動にアルフィーは疑問に思うことがあった。
「なー。ジブラリアはムトウに危害を加えないんじゃなかったっけ?」
尻を突きあげているようにして、倒れている俺の元にアルフィーが近づき、しゃがんで言う。
「あれは正確には、殺せない、というだけで殴ったりは、出来る、よ」
腕だけを弱々しく動かし、言い終えると腕は力尽きた。
「なるほど、そういうことか。それでジブラリア、でいいのか?」
「ん? そうだが。何用だ?」
「単刀直入に聞くけど、あなたは私を殺す?」
「それはまたどうして?」
「私達がここを抜け出すには、下に潜らないといけない。だから、協力してほしいの」
「なるほどな」
ジブラリアは頷き、考えるために少し間が空く。
その間に、元気になった武刀がゆっくりと立ち上がり始めた。
そのことに、ストリアは気づいていたが二人は気づかなかった。
「それは俺に、いや私に、あの魔物と敵対しろ、ということか?」
「そうだが。その魔物はスピアか?」
「ああ。私の封印を解いた奴だ」
「封印されていたのか? 私は倒された、と聞いていたが」
「私はそう簡単に倒されんさ。それでお、私はスピアを倒すことに協力しても構わんぞ」
言いながらも、ジブラリアは首を何度も傾げながら不満そうな顔をしていた。
「どう、したん、だ?」
立ち上がった武刀が、殴られた右頬を抑えながら立ち上がる。
よく見れば、殴られた頬は少し赤くなっているだけで腫れてはいなかった。
「ん? ああ。性別が変わったことだし、一人称を変えようと思ったんだが、上手くいかなくてな」
「そうなの、か。なら」
表情がキリッとなる。
「一人称だけじゃなく、いっそのこと口調も変えてみたらどうだ? ぶっちゃけ、僕っ子なんてどうでしょう!」
興奮しながら、身体を前のめりにして言う。
「僕っ子? それはなんだ?」
顔を近づかせて興奮している武刀に、ジブラリアは意に介さなかった。
「それについてはな」
二人は顔を近づかせてその場でしゃがみ、小さな声で話だす。
その二人を上から眺めているアルフィーが、呆れた表情をしていた。
「ムトウ、怪我はいいのか?」
「問題ない。身体だけは色んな意味で頑丈だからな」
答えたあと、武刀はまたジブラリアと話し始める。
「一応ここは敵地なんだが、そんな無防備で話してていいのか?」
「敵地といっても、ここは安全地帯でしょ。魔物はいないし、門番は近づかない限り襲わないからね」
「スピアは見てるぞ。いや、見ているよ、か?」
「「え?」」
ジブラリアの突然の言葉に、アルフィーと武刀は驚きの声を上げた。
「そうなのか。なら、スピアもジブラリアが敵対したことは知ってるはずだ。」
アルフィーが一人でこのあとの事を考えている時、しゃがんで喋っていた二人は立ち上がった。
「俺は出来る限りの僕っ子を教えたぞ」
「ありがとう。お、僕はなんと、か分かった、よ。けど、つんでれ? というのは難しい、よね」
所々片言になりながらも、ジブラリアはやろうとしていた。
「ツンデレはやろうと思ってやっても、それはツンデレではない。本来のツンデレは自覚しなくても行えるのが、ツンデレということだ」
「そういうものなんですね」
「無駄話をしてないで行くぞ!」
アルフィーが既に歩いていて、二人の元から離れて下に進む道の方にいた。
「はいはーい、行きまーす。よし、ジブラリア。行くぞ!」
ジブラリアの右手を握って、歩いた。
彼女の手の感触は、ツルツルした滑るようで、人肌のような温かみを感じる。
「ああ、凄く最高」
小さい声で心に思ったことを呟くと、後ろのジブラリアは声が聞こえたが意味が分からず、首を傾げた。
武刀とジブラリアがアルフィーの横に並んだ時、橋が大きく揺れた。
その揺れで立つことができず、両手を地面に置いた。
「なんだ、これは?」
二人の無事を確認すべく見ると、アルフィーは同じように手を橋の上に置いている。
ジブラリアは仁王立ちのまま、上を見ている。
「崩れている? アイツ、この空間ごと消す気なのか?」
「ちょ! それって!」
ジブラリアの言葉が理解できた。
なんせ、同じようなことを体験したことがあるのだ。
「どういうこと?」
アルフィーは、分からず難しい顔をしている。
一週間に一回以上投稿できるよう、心がけます




