十七話
翌日、ダンジョン攻略に向かった。
朝に準備をし、ダンジョンのある町に向かった。
俺は準備として、短剣とバッグと槍を事前に用意した。
バッグは、魔導書を入れるためである。
傍から見たら、紙の束を見てふざけてるのか、と思われる。
そのため、危ないことが起きない限りは、護身用で持っていく槍で戦おうとしていた。
馬車に乗って、町に行った。
車と違ってかなり揺れ、酔った。気持ち悪かった。
他の皆も酔った人が多く、その日は本来ダンジョン攻略を行うはずだが、休憩となり一日、町の中の宿で眠った。
そして翌日、ダンジョンに向かった。
このダンジョンはジェスター迷宮、と呼ばれる城の近くにある町の、森の中にあるダンジョンだ。
このダンジョンは言い伝えで魔王の四人の眷属の内、一体が眠っているらしい。
だが、その割には浅い層には弱い魔物が多いらしく、下に潜るほど良いお宝が見つかったりと、冒険者にとっては最高の場だ。
だからこそ、俺たちはこのダンジョンを選んだ。
先頭には新堂と安藤といった、攻撃専門の能力を持つ者が、支援だったりと戦闘向けじゃない能力は後方に控えている。
俺は、一番後ろ、能力がないのだから、当り前だ。
まあ、仕事はある。
後方から来る魔物を倒すこと。
その仕事をやる前に、控えている兵士がやってしまうのが悩みだが。
クラスメイト達によるダンジョン進行は、もう遠足の気分である。
だって、
槍や剣を持った人みたいな大きさの、軍隊アリが走って来る。
まだ十分な距離があり、新堂が手の平から巨大な剣を呼び出し、放つ。
安藤は両手を上げて巨大な球体を出現させ、投擲する。
唯が無数の魔法を放つ。
他、攻撃能力専門のクラスメイトが攻撃し、アリたちを蹂躙する。
弾幕が納まると、アリの姿が一つたりとも残っていない。
これは最早、アリたちに同情するしかない。
合掌。
そのせいで、クラスメイト達は浮かれている。
簡単すぎる。
だからだろうか。
一方的な虐殺だ。無双だ。
先に進んでいると、兵士がクラスメイトの進行を止めた。
「ここから先はとても危険です。今までは危険な罠はありませんでした。ですけど、ここから先は危険な罠が幾つもあります。魔物もより狡猾になります」
騎士が忠告する。
だけど、彼らは聞く耳を持たない。
クラスメイト達は猛反対。
「大丈夫。行けますよ」
「もうちょっと、先に行きたい」
「弱すぎる」
「ダンジョンと言えば、お宝!」
と、クラスメイト達が口を揃えて言う。
中には、あまり先に進みたくなさそうな顔をしているクラスメイトが数人いる。
それは後方にいる、戦闘向けの能力じゃない者たちだ。
けど、戦闘向けじゃない能力を持つ者も、戦いたい、と言っている者もいる。
俺は、戦いたいです。
だって、
「どうするんだ? 魔術とやらを見せてくれるんではないのか?」
騎士と勇者達が口論している中、アルフィーが近づく。
アルフィーは緑色のフードに、木で作られた杖を持っている。
「ハイ、スミマセン。ですけど、戦えないんです。戦わせてもらえないんです。どうすればいいですか?」
「まあ、私はこの先より進むのは危険だから行きたくないがな」
「行ったことあるの?」
「まあな。だから私は言う。こんな未熟者達と一緒にこの下には行きたくないな」
アルフィーはクラスメイト達を見下したように言う。
「そんなに危険なのか?」
「ああ。危険度としては段違いに変わる。そして、こんなダンジョンの真っただ中で口論してる時点で駄目だな。ここはダンジョン、危険地帯だ。警戒してない時点で私はこいつら一緒に行きたくない」
彼女は皆に聞こえないよう、小声で断言する。
「なるほどね~」
アルフィーの言葉に頷き、頭の中で考える。
すると、口論が終わって、兵士が俺らの方に振り向く。
「これから、下に行きたいと思います」
騎士が折れた、譲歩したみたいだ。
「行くみたいですね」
「そうだな。何もなければいいが」
彼女がとてつもなく不吉なことを言った。
「ああ、危険なことが起きるんですね。分かります」
「なんだ? ムトウは未来視でもできるのか?」
「いや、ただアルフィーがフラグを言ったから、そうなるんだろうな~、と」
そして予想通り、最悪なことが起きた。
「宝箱だ!」
階段を降りて下の階層に向かったとき、お宝を見つけたクラスメイトがいた。
それは、水を得た魚のようにその宝箱に群がる。
その様子を、俺は遠くで見てる。
「近づかないのか?」
アルフィーが俺の左に来る。
「うん。だって、もし魔物だったら戦わないといけないしな」
「そうそう」
さらに右には、裕一がくる。
「ああいう魔物は大抵即死の魔法を使ってくるし、一撃一撃が痛いからね」
「分かってるじゃないか」
互いに手を握る。
その横で、
「何の話だ?」
三人が話している間、安藤が宝箱に触れた。
すると、護衛の騎士が止めた。
「やめろ!」
その声は間に合わず、安藤は宝箱を開けた。
宝箱の中は、空だ。
何もなかった。
「あ? どうし──」
罠が起動した。
宝箱に近くにいたクラスメイトは勿論、遠くにいた俺たちにも魔法陣の魔の手が伸びた。
「これは!」
「転移魔法? 俺たちを逃がさない気か!」
アルフィーも、この魔法陣が何か分かってるようだ。
恐ろしさも。
転移魔法が発動して、景色が変わる。
さっきまでは洞窟の迷路みたいな場所だった。
だけど、ここには空がある。
ただし、黒に近い色で不気味だ。
さらに、ここはもう迷路ですらなくなっている。
ここは、頑丈そうな石の橋だ。
今は、橋の中心にいて横幅も広い。
まるで、逃げ場のない戦闘場のようであった。
これは、魔術を使う出番か。
完全に投稿が不定期になってる・・・




