十四話
朝食を終えて、俺は書庫に向かった。
向かうと、
「面白いことをしたようだな」
到着するなり、アルフィーが面白い物を見つけたような笑みをしている。
「面白いことって?」
本棚から能力について記されてある本を探しながら、答える。
「勇者同士の戦いだよ。兵士達の間で噂になってたぞ」
「そんなにか……」
あまり注目されたくなく、嫌な顔をする。
「そんなにだ。そのせいで、私も聞かれたんだぞ」
「何を?」
「戦いのときに使った魔法だ。そのせいで私が何度質問攻めされたことか。……知らないから濁したが、教えてくれるだろうなあ~」
彼女が笑いながら、こちらを見る。
ただし、それは純粋な笑みではない。
明らかにキレかけてある。
それほど質問攻めされたのか。
「俺の使った魔法は、アルフィーに教えてもらった身体強化だよ。ただそれを、全身に、ではなく一ヶ所に、場所を絞って使ったんだよ」
「そんな使い方があるのか。知らなかった……あとでやってみるか。それで、デメリットはあるのか?」
「デメリットか。身体強化の魔法は肉体に負荷が掛かるから、身体が壊れることがある」
冷静に、何もないように言うと、アルフィーは苦笑いする。
「よくそんな魔法が使えるな」
「いつものように使ってたからね。失敗しちゃったよ」
本を探しながら、上の空で答えていた。
そのため、自身が墓穴を掘っていたことに気づくのが遅れた。
「いつものように? それはどういうことだ?」
さっきまで空気とは打って変わり、緊迫した空気になる。
「あ~。それは出来上がったときに説明するよ」
「そうか、楽しみにしてる。で、何を探しているんだ?」
うろちょろしている武刀を見て、アルフィーは首を傾げる。
「能力についての本を探してるんだが……」
「そんなものないぞ」
「え!?」
アルフィーから真実を知って、彼女の顔を見ながら大きな声を出してしまう。
「そんな険しい顔をするな」
険しい顔になっていたらしい。元に戻さないと。
じゃなくて!
「ないっていうの、本当!?」
「うん。そういう関係は、全て国が持っていかれたから、ここにはない。どこか別の場所に置いてあると思う」
「まじかよ。……どうしよう」
「悩み事か? 私が答えられる程度なら答えるぞ。これでも、歳だけは取ってるからな」
「実は──」
裕一のことは言わないが、能力を強化する方法について説明する。
「なるほど。能力の強化、か。それについては分かるぞ」
「本当か!?」
「ああ。そもそも、能力はマナを使用する。だから、そのマナを増やせばいい」
アルフィーは悪戯をした子供のような、含んだ笑みをする。
「どうすれば?」
「魔物を倒せばいい」
ドヤ顔で、アルフィーは言う。
「魔物を?」
「うむ。魔物を倒すことで、マナが増えるということが分かった」
「なるほど。……なら、数を倒すには効率を優先した方がいいな。範囲攻撃で一撃で殲滅できれば」
「強い魔物ほど、手に入れるマナの量が増えるぞ」
ぶつぶつ言っていると、アルフィーの言葉に考えを改める。
「強い奴を一気に殲滅するしかないか」
「何をキメ顔で言ってる、この馬鹿め。そんなする暇があるなら、さっさと例の物を仕上げて秘密を教えろ! 待ちぼうけを喰らう私の身にもなれ」
「はい、すみません。ですが、紙の量と一回も失敗できないため、時間がかかるんです。はい」
平身低頭になり、謝る。
「いつ頃に仕上がる?」
「えっと、最悪一週間、最短で三日あれば」
「そうか。期待するぞ」
「はい。それでは!!」
すぐにここから立ち去る。
今はまだ昼時ではない。
時間はたっぷりある。
書かなければ!
使命感に駆られ、自室に走った。




