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十三話

十九時にまた投稿するので、良かったら見てください

 夜になり、作業中をしていた。

 長時間するせいか集中できなくなり、部屋の外に出る。

 

 城の中は、壁に掛けられた灯りがぼんやりと照らしてるだけ。

 薄気味悪く感じる。

 

 こういう場合、幽霊がいたりするのでは、とか考えたりする奴がいる。

 俺は普通に日常で会っているから、考えたりはしない。

 

 そんな不気味な廊下を、少し歩く。

 すると、窓から照らす月の光を浴びながら、月を眺める少女がいた。

 

 彼女はクラスメイト。

 名は……知らない。覚えようと努力してないから当然だ。

 月の光を浴びる少女は、それほど大きくなく、黒髪で肩口辺りまである。

 

 肌は運動をしているせいか薄茶色。

 半袖短パンの寝間着から覗く太股、腕は細く、引き締まっている。

 

「ん?」


 彼女がこちらに気づいて、目が合う。

 

 可愛い風貌だが、ただ可愛いという訳ではない。

 元気なのだ。いつも笑顔だ。

 それでこっちも元気をもらい、明るくなる。

 

 だけど、今は違った。

 なんか寂しげな、悲しげ表情だった。

 

「よ!」


 右手を上げて、挨拶する。

 

「武刀君か。どうしたの?」


 彼女の表情は元に戻り、元の明るい表情になる。

 けど、さっきの表情を見たせいか、それが空元気だというのが、察しがついてしまう。

 

「俺か? 俺は気分転換だな。眠れなくて」


「そうなんだ。私もなんだ、眠れないの。家族のことを考えると、ね」


「そんなの、魔王を倒せば帰れるだろう」


 彼女を元気づけるため、嘘をつく。

 帰れない、と知ったら彼女はどんな顔をするだろう?

 どんなことを思うだろう?

 

 俺はドSじゃないから、言わない。

 あのバカなら言うかもしれないが。

 

「そうだね。うん、そうだよね」


 彼女は、多分今が本当の笑顔なんだろう。

 さっきまでと、何か違う気がする。

 

「武刀君と話してたら、元気が出たよ。ありがとう」


 お礼を言い、手を背中に回して腰辺りで組み、奥の方に消えていく。

 が、立ち止まってクルリと、反転する。

 

「そういえば武刀君。私の名前、知ってる?」


 質問をされ、背中から冷や汗がでるのを感じる。

 どうしてこんな質問をした! と相手に怒るが、次に、どうして名前を覚えなかった、と後悔と過去の自分に罵る。

 

 武刀が答えないのを理解し、彼女は笑う。

 

「やっぱり、私の名前は分からないか。いつも人の名前を言わないからもしや、と思ったけど、私は神山かみやまゆいって言うの。よろしくね」


 唯はそう言い残し、去って行く。

 彼女の後ろ姿を見ながら、俺は思った。

 名前、憶えよう、と。


 

 

 


 朝食の時、いつもは一人で食べている。

 だけど、昨日の夜、唯に話してからちょっと気分というか、心構えが変わった気がする。

 

 前は、名前を憶えようとはしなかった。

 昨夜の唯に会って名前を聞かれた、それが動機だ。

 

 だから、


「なあ、一緒に食べないか?」


 いつまでも一人で食べている裕一に、声をかけた。

 

「構わないよ」


 裕一は顔をこちらに向けず、食べながら言う。

 

「そう? 良かった」


 トレイを机に置き、座って食べ始める。

 

「俺の名前、知ってる?」


「阿崎、なんだっけ?」


「武刀だよ。武士の武に、刀。俺も名前知らないから、教えてもらってもいい?」

 

 本当は知っている。けど、本人の口から名前を聞きたかった。

 

「俺の名は玄道裕一。よろしく」


「よろしく。裕一の能力はたしか……」

 

短距離移動ショート・ワープ。物を移動させる能力」


「そうそう、それ。その能力、強くならないの?」


「分かんない」


 自分のことのはずなのに、裕一は気にする素振りを見せず、食べ続ける。

 

「調べてみようか?」

 

「出来るの?」


「うん。もし何か分かったら教えるよ」


「そう、ありがとう」


 今まで無表情だった裕一が、この時だけ、笑っているように見えた。

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