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百十一話

予約投稿するのを忘れてました。すみません

「二体死んだか」


 スピアはまだ生きている、と思っていた。

 自分は武刀に負け、新しいドラゴンの身体を得た今、勝てると考えていた。

 最悪の可能性も考え、三体も投入した。

 

 自身は腹に穴が開き両腕をもがれ、修復するまで時間がかかり、戻って来た。

 その時間も二分はしない。

 

 なのに、全滅した。


 一人は槍によって無数の穴が開いて倒れ、もう一人は燃やされ口から氷漬けにされている。

 

「当り前だ。お前が成長しているように、こっちも色々変わってるんだよ」


 あとは、目の前にいるのが唯一生き残ったスピアだけだ。

 武刀は最後の敵を殲滅するべく、ゆっくりと近づいた。

 

「もう少し、人が大勢いる前で実験したかったんだがな」


 スピアが小声で言い、武刀は何か口を動かしているのを見て嫌な予感がした。

 

 大抵、絶体絶命になった者は後がなくなったことでろくでもない事をするのが常だ。

 

 それは武刀の予想通り、スピアはろくでもないことを行った。

 

 突如、スピアの身体はアイスが溶けるように身体の原型がなくなった。

 

 武刀はその光景を見た瞬間、全力で町とは反対の方向に逃げ出した。

 

「どうしたの?」


 突然の事にストリアが思わず声を出した。

 

「あれは駄目だ。似たようなのと戦ったことがある。それに、あれには俺の武器なら炎撃か氷撃しか役に立たん」


 液状になってしまえば、まず槍は効果がない。

 効果があるとすれば、燃やせる炎撃か凍らせる氷撃くらいだ。

 

 武刀は戦いながら移動する際、町に行ってしまえ被害を出すのを防ぐため、その反対側へ逃げて行った。

 

 だが、武刀の予想をスピアは予想のさらに上をいった。

 

 武刀はスピアから逃げていると、強烈な風圧に襲われた。

 風圧は草木を揺らし、武刀は走ることも目を開け続けることもできず、立ち止まって両腕を交差して目を守った。

 

 風がほんの僅かだが治まり目を守っていた両腕を解くと、目の前に化け物が存在した。

 

 巨大で三対の翼、三つ首の黒竜だった。

 黒竜は翼を動かし滞空したまま、武刀を見下していた。

 武刀はこのドラゴンに見覚えがあった。

 ジブだ。

 

 迷宮からこの近くに転移された時、空中でただ落ちて死ぬのを待っている時に、ジブがドラゴンとなって救ってくれた。

 

 だからこそ、武刀は見覚えがあった。

 

「ハハ」


 武刀は乾いたを笑いをするしかなかった。

 

 てっきり、スライムか液体となって襲ってくると思っていた。

 なのにドラゴンだ。

 強さといえば、どちらが強いかなんて誰だって分かる。

 

 だが、これは好機だ。

 スライムもどきならば勝てる可能性は皆無だったが、今なら違う

 勝てる可能性は十分にある。

 

「先手必勝!!」


 攻撃される前に武刀は倒そうと、槍を宙に浮くスピアに向かって投げた。

 強化魔術によって加速した槍はスピアの胸へと吸い込まれていくが、スピアは防ごうとせず息を大きく吸い込むだけだった。

 

 やばい!

 

 スピアの息を吸い込む動作で次に何をしてくるか予想し、左腕に括りつけているバックラーを前に出して障壁魔術を起動させた。

 

 武刀が障壁魔術を起動したと同時に、スピアは口から火炎を吐き、辺り一面を燃やした。

 

「くそったれが」


 周りが火炎に包まれ、武刀は唯一生きていた。

 それは障壁魔術による恩恵で、障壁魔術が盾よりも前方に展開したことで、炎が盾に触れるよりも先に障壁が炎を二つに割った。

 

 その結果、武刀は生き残っていた。

 しかし、周りの炎の熱がチリチリと武刀を炙り、蒸し風呂の気分である。

 

 周りが森だということもあり山火事が起こり、さらに投げた槍もスピアが吐いた炎の中に包まれ、溶けてなくなった。

 

「くそったれが。本当にふざけてる」


 槍を失い、盾の障壁魔術はもう焼け切る寸前。

 周りは燃えて逃げ場を失い、本当の意味で絶体絶命。

 

「ああ、どうしよう……」


 武刀は絶望するしかなかった。

次回は木曜日になります

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