表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
110/126

百十話

 それは武刀がいなくなった日、シュトラドラッハの王都では大騒動が起きていた。

 それは各地で魔物の襲来、又は魔物の大群を見たという報告である。。


 既に侵攻された村は防衛戦力が劣り滅ぼされ、町も現在は防衛中ではあるが幾つかは侵略され、敵の駐屯基地になったという報告があった。

 

 どこからか現れた魔物にシュトラドラッハはてんてこ舞いとなり、他国の勇者を招いて開催しようとしていた闘技大会を一時中止。

 

 王都に滞在する冒険者や兵士を集め、援軍を送ろうとしていた。

 それは王都の中にいても気づいており、魔術師達も行動を決意した。

 

 魔術師達、男性ではなく女性の姿をしたアリシア、大量の串肉を持って食べているフェン、熱くてボーっとしている万里、頭を左右に可愛らしく振っているアル、愛用の狙撃銃を手入れしているユーミル、計五人が宿の一室で円になっていた。

 

「なんか戦争~? が起きているみたいだし~戦力を分散しようと思いま~す」


 司会を務めるのはアリシア。

 いつもなら司会なんて周りを纏める仕事は一切しないが、今回は誰も司会をしたりするような者がいないため、アリシアが務めた。

 

 フェンは戦闘時に大量のカロリーを消費するため食事をし、万里は熱さと日の光が弱くまだ朝になったばかりのためへばっている。

 

 アルに至ってはまだ小学生で纏めることはできず、ユーミルは成人してこの中で大人の部類だが、人見知りで無口であり喋ろうとしない。

 そもそも、今は銃の手入れに集中しているためそれ所ではなかった。

 

 五人は武刀が最後に消息がなくなったアザカの国から船を使って隣の国のシュトラドラッハに辿り着いたのだ。

 

「え~ここで情報収集した結果~二つ、北と南に迷宮があることが分かりました~パチパチ~」


 アリシアだけが拍手をするが、彼女は特に気にすることなくいつも通り話し続ける。

 

「そこでみんなはどっちに~……」


「「南!!」」

 

「みなみ」


「ひひゃみ」


 へばっていた万里と銃の手入れをしていたユーミルは即座に、アルは可愛らしく、フェンに至っては行儀が悪く食べながらであった。

 

 ユーミルが精霊との会話により、武刀が南にいることは既に知れている。

 そのため、彼女らは南に行くことを既に決めていた。

 

 四人同時ということもあり、彼女らの目線はぶつかり火花が散る。

 彼女らの思いはただ一つ。

 

 どうやって他の者を出し抜こう。

 

 ここまでは四人で仲良く来た。

 しかし、ここまで来れば敵同士。

 彼とずっと一緒にいるには、彼女達からすればここは好都合だった。

 

 四人の目線に火花が散っているが、蚊帳の外になっているアリシアが異議を申し出た。

 

「え~。私も南行きたい~。南はオーガとかゴブリンとか、人みたく立つ魔物が多いから~輪姦すのは凄く気持ちいと思うんだ~」


 四人が己の欲望に忠実であるように、アリシアもまた己の欲望、性欲に忠実であった。

 

 話し合いは長く続き、万里が立ち上がった。

 

「ちょっとお手洗いに……」


 彼女はそう言うと部屋の扉を開けて外に出た。

 万里が抜けても話は続き、どれくらいの時間が経っただろうか、万里が帰ってこないのだ。

 

 それだけ彼女達三人、フェン、アル、ユーミルは気づいた。

 

「抜け駆けした!!」


「ヴァルから貰った大剣は誰だっけ?」


「万里だよ」


 万里が抜け駆けしたユーミルが気づき、フェンの質問をアルが答えた。

 

 ここに来る前、ヴァルに武刀の武器を貰ったのだ。

 そもそも、彼女たちはどうしてヴァルが武刀の武器庫の鍵を持っているのか問いただしたかったが、それについては何も言わずヴァルに武刀の武器を貰ったのだ。

 

 もらう理由として、私達が合うかもしれないしから貸して、と頼むとヴァルは満足げに渡した。

 きっとヴァルは、そこには武刀がいないのに、とでも思っているのだろう。

 

 いないのはヴァル達の方だと知らずに。

 互いに喋りはしないが、その裏ではぶつかり合いが起きていた。

 

 他にも、電話がないこともあり通話手段として周宇から通話ができる札を各自もらった。

 

 ヴァルからもらった大剣は物が物だけに、影に収納できる万里に預けたのだがその万里がいなくなった。

 

 もし武刀に万里が武器を持って来れば万里だけを褒める、それだけは阻止しなければならない。

 

 善は急げという言葉通り、彼らは即座に行動を始めた。

 部屋を出て、先に行ったであろう万里を追った。

 

 一人残されたアリシアはゆっくりと立ち上がる。

 

「あ~あ、みんな南行っちゃった~。ま、いっか~! 北は虫が出てくるみたいだし、まだヤったことないから楽しみだな~」


 アリシアの欲望は変わらず、欲望のまま彼女は動き出した。

 

 

 

 

 

 どうしてこうなった。

 

 武刀はついさっきまでの有利だった頃を思い出す。

 今の状況は絶望的だ。

 

 今まで右手に持っていた槍はどこにもない。

 それは突き刺したり投擲して手元にないということではなく、本当にないのだ。

 

 槍は燃えて溶かされ跡形もなくなった。

 左腕で括りつけている盾、バックラーはまだ形があるが、魔術回路は熱く焼き切ろうとしていた。

 

 本当に、どうしてこうなった。

 

 目の前には黒竜、ジブがドラゴンだった時の二倍ほどの大きさの三つ首で、三対の翼がある。

 

 武刀が絶体絶命の状況になったのは少し前、残ったスピアと戦う時に辺りまで振り返る。

次回の投稿は月曜になります

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ