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百八話

 三対一。

 普通なら勝てる確率は低い。

 もし武刀が最強であれば勝つ可能性はある。

 が、武刀は魔術回路に枷が嵌められておりどちらかというと弱体化している。

 

 弱体化している武刀では三人のスピアに勝てないかもしれないが、ここにはもう一人、武刀の仲間がいることをスピアは知らない。

 

 それを武刀が上手く利用することができれば、勝機はある。

 

 正面のスピアは右手から鋭い爪を伸ばし、指を閉じることで剣のようにして突き刺す。

 武刀は右に紙一重で躱し、右手で持つ槍を突く。

 

 爪は武刀の脇腹をかするが、革の鎧が削られるぐらいで済んだ。

 槍はスピアの腹に当たり、完全に腹を貫通した。

 

 即座に武刀は槍を抜き、耳を澄ませて周りからの音を確認する。

 近づく音は聞こえず、他の二体のスピアが襲ってくることはないようだ。

 

 武刀は後ろに目を回し確認すると、後から現れた二体のスピアはその場から動いてすらいなかった。

 

「お前らは参加しないのか?」


 できれば、参加して欲しいな。

 参加しないことが逆に怖い。


 相手の方が数では勝っているのに、参加しないことが武刀にとっては不気味で、逆に怖くなり参加してほしかった。

 

「少し実力を知りたくてね」


「それに、俺らの肉体もまだ把握しきれてないからな。どれだけの再生能力があるのか知りたい」


「再生能力?」


「そうだ。目の前の物を見てみろ」


 同じ声、同じ身体、同じ口調、どちらが喋っているのか分からなくなるが、後ろにいるスピアに言われ、前を向く。


 そこには腹部を槍で貫いたスピアがいるはずだが、槍によってできた穴は修復されて何もなかったように見えた。

 

「この程度の傷なら一分もせず直るのか。なら腕が千切れても大丈夫だな」


 まるで何事もなかったように、スピアは平然と答える。

 

 再生能力もあって、ジブであるドラゴンの肉体を持つ。

 くっそやばいな。

 どこまで回復するのか知りたいが……。

 

「再生能力の範囲も分かった。そろそろ始めるとしようか」


 三体のスピアの肉体、筋肉が異常なまでに膨れ上がり、戦闘状態だということが一目で分かる。

 

「いい加減かかってこいや!!」


 今回は武刀から襲い掛かり、前方にいるスピアの間合いを詰める。

 正面から迫る武刀に対し、スピアは両手の爪を伸ばして、抱き着くように左右から武刀の選択肢を狭める。

 

 爪は剣のように鋭そうで、さっきは指を閉じていたが今回は開いて爪の範囲は広かった。

 

 相手には槍で突いても再生し、こちらが怪我をすればずっとつき纏う。

 ならば避けるしかない。

 槍で目の前のスピアを貫いたとしても死なず、抱きしめられて拘束されて後ろの二体のスピアが攻撃してくる。

 

 だが、今は違う。

 迷宮の時とは魔術の数も違うからこそ、選べる選択肢の数も違う。

 

 武刀は槍でスピアの腹を突き刺すが、予想していた通り腕の動きは止まらない。

 槍を持つ両手を離し、左右から回り込むようにして迫るスピアの手首を掴んだ。

 

 スピアの怪力と強化魔術で引き上げた武刀の力は互角で、二人の腕は振るえる。

 攻撃の手段がなくなったと思ったスピアは、笑みを浮かべて口を大きく開いた。

 

 口から覗く歯は人間のそれだが、大きく開いたのと同時にドラゴンの牙へと変わる。

 このままでは噛まれるだろう、それを武刀は黙って見ていなかった。

 

 両手にある魔術、炎撃と氷撃を起動する。

 武刀の右手が掴んでいるスピアの左手首は燃え、左手が掴むスピアの右手首が凍る。

 

 魔術はそれほど広がらず、触れている部分だけにしか影響が及ぼさなかった。

 炎撃と氷撃により、スピアの動きが一瞬だけ止まって余裕が出来た。

 又、後ろから近づいて来る音が聞こえた。

 

 遊ぶ暇はないか。

 

 動きが止まった一瞬で武刀は判断すると、正面のスピアが噛みつこうと動き出したが、それよりも先に武刀が右足が槍で貫いた腹部の横をしっかりと踏みつける。

 

「気張れよ!」


 炎撃と氷撃を解いて強化魔術をバージョンⅢからバージョンⅤに引き上げ、スピアの両手首をしっかりと握りしめた後、右足の瞬風を発動して蹴り飛ばした。

 

 強化魔術バージョンⅤと瞬風の合わせ技により、スピアは遠くへ、森の奥へと吹き飛んで行った。

 瞬風は風を固めて足場にする他にも、固めた風を弾き飛ばすことが出来る。

 

 今回はその後者を使用した。

 無理矢理やったことで武刀の両手にはスピアの両腕を持っており、弾き飛ばす時にスピアの身体が、耐えきれず千切れてしまったのだ。

 

 武刀はスピアの腕を放り捨て、後ろへ向く。

 こちらに迫っていたスピアは、足止めのスピアがいなくなったことで立ち止まり、二人は反対の方向に、武刀を挟むようにして移動する。

 

「一分足らずの修復と言ったな。なら、腹部と両腕、これで少しだけあいつは戦力外だな」


 武刀は転移で瞬風でスピアと一緒に吹き飛ばした槍を右手に呼び戻し、両手で握る。

 

 炎撃と氷撃は共に効果がなかった。

 

 今まで発動していた強化魔術バージョンⅤをバージョンⅢに引き上げる。

 

 強化魔術バージョンⅤは熱くなりやすい。

 そんなに使えないし、どうやって倒すか。

 

「ストリア、ここからお前の出番だ。頼むぞ」


「うん。頑張る」


 武刀がスピアに聞こえないように小声で言うと、ストリアから武刀同様小さな声で頼もしそうな返事が聞こえた。

次回の投稿は木曜になります。


現在の執筆状況としまして、現在今の戦争の話が127辺りで終わりました。そのため、来月に今のお話が終わるよう下旬に連続で投稿を予定しています

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