百四話
「起きて。時間」
「ん……」
薄暗い森の奥で木に背を預け、体育座りのように座って顔を膝に伏せていた武刀はストリアに起こされ、目を開けて顔を上げた。
辺りからは充満した血の匂いが武刀の意識を覚醒させる。
しかし、ここ最近は徹夜続きで寝不足で目がいつも以上に開いておらず、半眼であった。
「もう朝か……」
いつもよりテンションが低いのは、寝起きだからというのもあるがそれだけじゃなかった。
周りを見ると、寝るまえよりも魔物の死体が増えている。
「ストリアがやったのか?」
「うん、寝てたから起こしちゃ悪いと思って」
「そうか」
ストリアも武刀と同様テンションが低く、いつもより声に覇気がなかった。
「今日で何日目だっけ?」
「四日」
「そうか。そんなに経つのか」
武刀が魔物の大群を見つけた時、町に戻って知らせる手も考えたがやめた。
それは他の者がしている。
現に、アルフィーは偵察をすると事前に聞いていた。
なら、偵察以外のことをしようと考えた武刀は足止めをすることにした。
魔物の大群の横っ腹に武刀は突撃した。
警戒していた魔物達からすれば、慌てふためいた。
何故なら、いきなりいたのだ。
それは武刀が強化魔術バージョンⅤを使い、一瞬で距離を詰めたからだ。
最初は慌てていた魔物達だが、時間が経てばそれは治まり、武刀が徐々に劣勢に追いやられていた。
武刀が魔術を使えるからといっても、量が違う。
それに、魔術がずっと使えるわけではない。
時間経てば熱くなり、魔術回路が壊れてしまう。
そのため休憩の時間を設ける必要があり、武刀は劣勢に追いやられていた。
その武刀を助けたのは、ストリアだった。
彼女は武刀の身体に纏わりついているが、その身体の一部を外に出して魔術で刃物に変えて戦ってくれたのだ。
そのお蔭で武刀は九死に一生を得て、休憩する時間も兼ねて寝る時間を作った。
朝は武刀が戦い、夜はストリアが戦う。
そのスケジュールを四日も行い、今の状況となる。
「ストリア、見張りありがとう。あとは寝てろ。これからは俺の時間だ」
「うん、おやすみ」
「俺のせいで突き合わせて済まない」
寝て聞こえないストリアに、武刀は万が一起きていて聞こえないよう、小さい声で謝った。
「さて、駆除の時間を始めるとしよう」
武刀は手足、鎧、盾、槍と触って具合を確かめる。
魔術回路は熱くなく、万全の状態ということが分かった。
この辺りの魔物はもういないだろうな。
血の匂いで嗅ぎつけられてここまで来られたんだ。
なら、町の方に行くか。
戦闘を初めて四日ぐらいは経ってるはずだ。
もう町のほうに辿り着いてもおかしくない。
槍を右手で持った武刀は、そこらに転がっている魔物の死肉を選別して頃合いの物を探す。
最近死んだ魔物で、まだ腐っていなさそうなものを。
見つけた武刀は槍を器用に使い、死肉を斬って突き刺し、左手で死肉を掴んで魔術を使って焼いて食べた。
「ああくっそまずい。けどまあ、菌やウイルスにかからんからマシか」
もしかかっているのなら、武刀はこの世界に来た時に特殊な力が使えていた筈だ。
特殊な力が呪いか何かと判断したからこそ、俺に掛けられた魔術が防いでくれた。
「クソ不味い朝飯も食ったことだし、魔物を駆逐しようか。目指すは町の方角」
武刀は槍を背負い直し、強化魔術と瞬風を使って木の枝へと飛び別の木の枝に飛び移りながら移動した。
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