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十話

サブタイトルが間違っていたので、編集しました

 作業を始めてから、三日ぐらい経った。

 召喚されてからどれぐらいだろうか?

 もう憶えてない。というか、眠い。

 

 作業を始めてほぼ三日。睡眠時間を削って、半分まで進んだ。

 お蔭で、目にはクマが出来上がっている。

 

 もう寝よう。

 窓の空は明るい。

 なんせ、まだ昼なのだ。

 

 だけど、眠ることにした。

 だって眠いから。

 

 両手を密着させて隙間のないようにして、

 

「水よ(アクア)」

 

 魔法を唱えると、手に水が溜まる。

 こういった方法は、魔術にはないから面白い。

 その水で顔を洗い、汚れを取る。

 顔を洗えば眠気が覚めるものだが、寝る暇も惜しんで作業をしたためか、まだ眠い。

 

 顔から垂れた水が服を濡らすが、この服は濡れても構わないし、学生服ではなくなっている。

 昨日だったか、一昨日だったか、部屋の前にこの世界の服が複数、置いてあった。

 

 濡れた服を脱いで濡れた顔を拭き、脱ぎながらベッドの方に向かう。

 そのとき、バキッ、という壊れた音が足元から聞こえる。

 

 動きが止まり、恐る恐る、脱いでいる途中の服の中から下を覗く。

 そこには、足に踏まれて壊れた、無残な眼鏡の姿があった。

 

 レンズの部分は壊れていないが、関節の部分が折れてしまって、使えなくなってしまった。

 まあ、いいや。

 元々、眼鏡なんて変装のためしてるだけだ。

 

 なくても問題ない。

 気にしないことにした。

 

 服を抜き去り、ベッドにダイブ!

 ベッドに着地すると、ふんわりと身体が沈むような柔らかい感触があり、眠った。

 

 

 

 

 

 翌日、起きると眠るまでの眠気が嘘のように消えていた。

 眼鏡が壊れたは覚えていたから、開き直った。

 いっそのこと、髪の毛をしわくちゃ、転校初日のスタイルをやめて、素を曝け出すことにした。

 

 まあ、ぶっちゃけめんどくさかった。

 こういう機会があって、良かったと思う。

 

 

 

 

 

 それで朝食の時、食堂の端っこでクラスメイト達の元に向かった。

 既に他の皆は集まっているようで、食事を始めていた。

 

 俺も、トレイに食事を乗せてそこに行き、食事を始めた。

 ご飯を食べていると、何故か視線を感じる。

 

 横目で見てみると、全員がこちらを見ていた。

 俺を見た奴らは時が止まったように、動かなくなった。

 

 イメージが違いすぎたのかな?

 それはまあ、分かる。

 だって、眼鏡や髪を弄らなければ、普通だ。

 それを弄って、根暗風にしてるからしょうがない。

 

 食事を終え、俺は外にいる。

 いつもなら、部屋に戻って作業をする。

 だけど、今回はちょっと違う。

 今回は、武器の練習をしに来た。

 

 今、俺は別媒体に魔術回路を刻む作業、別名、魔導書の作成を行っている。

 だけど、もし皆の前で紙の束を持って来たら、どう思うだろうか?

 

 ふざけている、と思う者が多いはずだ。

 そのため、別の武器、傍から見ても使える、と思わせる武器が必要だ。

 

 それが、武器。

 剣だったり、槍だったり、と。

 で、それを今、武器が置いてある場所に向かっている。

 

 それから、後ろからもの凄い視線が来る!

 

 今向かっている場所は、修練場と呼ばれる、兵士やまだ武器を扱うには不慣れな勇者のが特訓している。

 そこに向かっているのに、背後から視線がビシビシ感じる。

 

 けど、それは無視する。

 気にしてたらしょうがない。

 

 修練場の中はいろんな武器があり、武器を振っていたり、戦っているクラスメイト達がいる。

 

 俺が修練場に入ったときに、中にいた兵士の一人が近づいて来た。

 そいつには、心覚えがある。

 俺の時に、欠伸をしていた指導役だった男だ。

 

「お前は一回目しか着てないな。教えてやろうか?」


 上から目線で言ってくる兵士に苛立ちを覚え、

 

「結構です!」

 

 晴れやかな笑顔で断った。

 それが指導役の兵士の癇に障ったらしく、舌打ちをして怒った表情をし、荒い足取りで戻って行く。

 

 その後ろ姿を見て、スッキリした。

 修練場には、色んな武器が置いてある。

 剣、槍、弓、鎖鎌、鞭、爪など。

 その全てが刃を潰され、殺傷能力がほぼない。

 俺が選ぶのは、槍。

 柄は木で一メートルくらい。

 

 まあ、最初で選んだから、という理由だ。

 初めの時よりも長い感じがするし、重いようにも思う。

 

 片手で持つには難しく、少しの間は持つことは出来るが、手が震えて上手く扱えることができないと思う。

 

 後ろの方を横目で見ると、指導役の兵士が人の無様な姿を見てニヤついている。

 それを見ると、イラッ、として、魔法を使う。

 

 使うのは、身体強化。

 最初の講習で、教わった魔法だ。

 これを扱うことで、さっきまで重いと感じていた槍が軽く感じる。

 

 身体強化を使ったお蔭で、槍を片手でも持てるようになった。

 そして振り回す。

 まるでバトンのように。


 扱えはするけど、敵と戦ってみないと本当に戦える分からないな。

 槍で突いたり薙いだりしながら考えると、

 

「おい!」


 後ろから声を掛けられた。

 その声は男で、少し低いように感じる。

 その方に顔を向けると、茶髪で少し髪が長い太った男がいた。

 

「誰?」


 この男は今まで見た事ない。そもそも、記憶にもなかった。

 

「俺は平野って言うんだよ」


「あっそう。で、俺に何の用?」

 

「お前、イメチェンか? 調子に乗ってるんじゃないのか?」


 これはあれか! 根暗風からチェンジしたせいで、調子に乗ってると思われているのか。

 けど、なんでこのデブ、じゃなかった平野は喧嘩腰なの?

 

「イメチェン、というか眼鏡が壊れたからだし。調子に乗ってるわけじゃない」


「知らねえよ! んなこと!」


 右手を大きく横に振ると、虚空から剣が生まれた。

 

「俺の能力、武器錬成ウェポンズ・ラックはマナを消費して武器を生み出したり強化することが出来る」


 さらに、平野の足元に魔法陣が展開し魔法が発動する。

 この魔法は、

 

「身体強化。本気でやり合うつもり?」


「当り前だろう? お前も魔法が使えるようになったみたいだが、実力の違いを教えてやるよ」


「あっそう」


 そっけなく答え、横目で周りを見る。

 クラスメイト達はハラハラした様子でこちらを見て、兵士は賭け事のようなことをしているように見える。

 

 止めてくれるようなことは、なし、か。

「何よそ見してるんだよ!」


 平野は走って接近し、剣を上段から振り下ろす。

 身体強化の恩恵で、体型に見合わない速ってくる。

 

 それに、剣も片手で持っている。

 加えて、素人特有の無茶苦茶な振り方だ。

 指導役は何を教えてるんだ?

 

 振りがめくちゃくちゃのお蔭で受け止め、簡単に後ろの方に受け流すことができた。

 

 受け流され、平野は前のめりになってこけそうになるが、なんとか踏みとどまる。

 

「てめぇ!」

 

 簡単に受け流されたことで怒り、まためくちゃくちゃな振りをする。

 そのおかげで簡単に防ぎ、受け流すことができた。

 

 すると、

 

「平野が戦ってるんだって?」


 修練場の入口から、大きな野太い男の声が聞こえた。

 そこには、先頭に金髪の髪で長く、目付きの鋭い不良のような男、周りには取り巻きみたいな不良っぽい三人の男がいる。

 

 さらにその後ろには、外にいた残りのクラスメイトがいる。

 

「おう、平野。頑張れよ! そんな無能をすぐに倒しちまえ!」


「この無能が無様にやられる無様な姿を、見とけよ」

 

 平野が剣を持っていない左手で、後ろを見ながら大きく手を振る。

 

 なんだよ。無能無能、言いやがって。

 ムカつくなあ。なら、見せてやるよ。

 身体強化とかいう魔法とは違う、本来の魔術である強化を。

 

「お前に同じことを言ってやる」


「ん?」


 平野はゆっくり前を見る。

 そこには、穂先ではなく石突きの部分を向けている武刀の姿がいた。

 

「余所見してると、あっけなくやられるぞ」


「何を言ってるんだ? お前なんかにやられる……」


 さっきまで、離れていた。

 けど、それが一瞬で消えた。

 目の前に、武刀がいた。

 槍を突いていく。

 それも、嫌な場所を。鳩尾を狙ってくる。

 

 条件反射で剣を振るって、防ぐ。

 だが、それを分かっていて槍を下して、剣に振り上げる。

 剣が槍にぶつかる。

 

 下からの振り上げる力が強く、拮抗する間もなく剣と一緒に腕も放り上がる。

 がら空きとなった胴に、鳩尾を石突きが狙い、直撃する。

 

 鳩尾に強烈な一撃をもらい、両膝が地面につき、呼吸ができなくなる。

 身動きができなくなった首筋に、石突きが触れる。

 

「はい。おしまい」

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