一話
色々と拙い所はありますが、読んでいってください
その日、俺は偉い人に呼ばれた。
「君には、とある学園に転入して欲しい」
「嫌です」
偉い人は立派な机、立派な椅子に座って、偉そうな事を言ってきたので、拒否った。
だってムカつくし。
そもそも、
「つい先日、あなた方とは敵対してましたよね? どうしていきなりあなたの言うことを聞かないといけないんですか?」
弱みを突かれ、偉い人は目線を逸らした。
この偉い人は、魔術極東本部の本部長。
日本にいる全て魔術師を統べる、トップである。
今いる場所は本部のビル、その最上階。
そこにはこの本部長である渋いおやじが、机と椅子しかない部屋にいるのだ。
そして俺は、魔術師。
阿崎武刀、十七歳。男。
子供の頃から魔術師として一人前になるため、魔術の練習を絶やさなかった。
これまで、幾度とない困難があった。
それを説明するのには時間が掛かるから割愛するが、つい先日、北米支部とちょっとしたいざこぞがあった。
その理由は、まあ俺の支部にいる人間のせいでもある。
北米支部との戦いが終わり、やっと解放された、と思ったらこの様だ。
且つ、北米支部との戦いで極東支部の連中は敵となった。
そのせいで、目の前にいる支部長は弱みを握られている。
なので、こっちが断れば相手も了承するしかない。
だけど、
「それはそうだが。君にしかできないことなんだ」
土下座をする勢いで、本部長は頼み込む。
こんなこと、いつはしない。
それだけ、呼んだ理由、が大きいということだ。
「どうしてそんなにまで俺に頼む? 他に頼む奴がいるだろう」
「いるのはいる。ただ、条件があってな。その条件が……」
「条件? なんだそれは?」
「高校生だということ、だ」
「ああ……」
魔術師、というのは高齢な方が多い。
理由としては、魔術師が秘密、であることだ。
そのせいで、魔術師になろうと心掛ける時点で二十歳を超えることが多く、一人前になるにも時間が掛かるからだ。
まあ、それは日本、関東だけの話だが。
京都になると、陰陽師がいたりするので若い奴も多いが。
「学生、ほぼいないもんな」
「そうなんだ。で、手伝って欲しいわけだよ」
「それはまあ、分かった。なら、見習いでもよくないか? 歳を偽って」
「それがそうもいかない。なにせ、今回の相手は英雄候補だからな」
「英雄」
嫌な言葉を聞いた。
それだけで、断る理由がなくなった。
「なるほどな。英雄は歴史上、神や竜、悪い奴も英雄。勿論、悪い魔法使いを殺すのも英雄だからな」
英雄は、どこにでもいる普通の人だ。
見醒めなければ、そんなものだ。
だけど、目覚めれば違う。
奴らは、途端に強くなる。まるで、英雄のようである。
人に好かれ、神に好かれ、勝利の女神に好かれる。
だから、俺は嫌いだ。
「いいさ、やってやる。で。候補、ということはまだ目覚めていない、ということでいいのか?」
「ええ。で、あなたにそれを見つけてほしいんです」
「分かった、やってやるよ。その学校はいつ転校すればいい?」
「来週だ。家も新しく用意する」
「ん~」
頭の中で、この一週間のすべきことを考える。
何せ、俺は高校生。友達だっている……いるんだ。
別れだって、……言わなくてもいいかも?
ただ、新しい家に住めば色々と必要な物がいる。
購入する時間も掛かったりする。
まあ、いつも最後になって慌ててるんだけどね。
「この話はこれで終わりか?なら、帰るが」
「いや、もう一つ。魔術、召喚は極力は控えてほしい」
「分かってるよ。人には見せないため、だろう? 安心しろ。装備は最低限、魔術も使わないよう枷も着ける。これでいいか?」
「すまんな、迷惑をいつも掛けて。終わったら特別報酬をたんまり出そう」
本部長が座ったまま、頭を下げる。
「いいさ。いつものことだ、慣れている。報酬、期待してるよ」
背を向けたまま言い、武刀は部屋から出た。
久しぶりだから、緊張します