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ショート・メルヘン

キタキツネのかあさん。 (改)

作者: 雪 よしの

キツネの生態の事で、ちょっと勘違いしたので、そこを修正しました。

ちょっとだけ内容、変わってます

「あ~ん。あ~~ん、おかあさ~~ん」


その人間の子の泣き声を聞いた時に、私は舌打ちした。またか。


山の中で人家もないけれど、たびたび、黒い服をきた人間が、集団でやってくる。

山裾には、ポツンと灰色の建物が立っているだけ。そこを目指してやってくるのだ。


ここには、時々、山に人間の子が迷い込んでくる。

しょうがない。ちょっと様子を見に行こう。

このままでいくと、この迷子を捜す人間で、山は大騒ぎになる。


私は、キツネだから、ヒグマと違って、見つかっても、嫌な顔されるだけだけど、

自分の縄張りが荒らされるのは、気に入らないね。

巣立ちまじかとはいえ、子狐持ちだし。



そうっと子供に近づいていくと、泣いてるのは男の子で、その子の後ろには、

人間でもキツネでもない、しいていうなら、もう”生きていないもの”が立ってる。

たまにあるのだけど、この山で”生きていないもの”が、彷徨ってる事がある。

大抵は、自分の道を見つけて、天にかえるけれど。

今回の場合は、違うようだ。


”生きていないもの”が、振り返り私をみつけると、深々と頭をさげる。


「キツネさん、後生だから、あの子を山から下りるよう、手を貸して

下され。あの子には、私が見えてないです。少しだけ、お願いします。どうか」


しょうがない。グズグズしてると夜になり、4月とはいえ、人間の子では

山で一晩すごすうち、死んでしまうだろう。そう考えて、”捜す人間”は

すぐにも来るだろう。


私は、クルっと宙返りして、人間のメスに姿に化けた。


「ボク、迷子かな?はやく山を降りないと、夜になるよ」

声をかけると、泣いてた子供は、一目散にかけよってきた。


「よかった。ねえ、僕、迷子になったみたいなんだ。

暇でしょうがなくて、外をブラブラしてたら、キツネをみかけたんだ。

で、もっとよく見ようと、後を追ううちに、帰り道がわからなくなっちゃって・・

きっと、お母さんに怒られる。」


”キツネを見かけた?誰だい一体。私の縄ばりに入ってきたのは?

それとも、うちの子狐たちか。私の後をついてきたとか。

人間の子もキツネの子も、親のいう事を聞かないときがある ってのは、同じだ。


「大丈夫よ、ほら、手を握って。ゆっくり降りるのよ。」


私は、4月でもまだ雪の残る山の斜面を、二人(?)で

ゆっくり、降りていった。

子供の体力は、限界に近い。

「歩けないよ、もう疲れた。お腹がすいた。あ~~ん」


又、泣き出した。泣くと体力も気力も落ちるのに。

後、少しで、正面に、大きな道にが見える場所につくんだけどね。


「あのオンコの木を左に曲がると獣みちにでるから、

そこをしばらく歩く。そうすると、右手に

大きな道の見える開けた場所があるからね。

後少しだから、頑張ろうね。

ボクは、あそこまで登ったんだもの。道さえわかれば、降りるのは簡単。」


子供はうらめしそうに、私の顔を見る。

残念ながら、この子を背におうことは出来ない。

この子の見てる、人間のメスの姿は、幻だからさ。

言葉も、この子の頭に直接話しかけてるだけ。

私の能力では、それが限界さね。


子供が手を握ったと思ってるのは、私の尻尾。

今は、それも離して、子供は雪の上に座り込んでる。

やれやれ。人間の子は、手がかる。


「じゃあ、私は先に行くからちゃんとついてくるのよ」


私は進んでは立ち止まり後ろを見て、子供の姿を確認して、また進む。

そうして、やっと、目的の場所までやってきた。


「やれやれ、じゃあ、ここをまっすぐ降りる。今までのように、

木に捕まりながらでもいいから。」


まずい。車の音がする。きっとこの子を探しに来た人間達だ。

間一髪だね。獣みちは、獣でなく、人間が山にフキを取りに来て出来た道。

この近辺の人がいるなら、まず、そこを足がかりに探すだろうから。

あの子供があそこにいれば、すぐ見つけてもらえるだろう。


私は、今来た道をとおらず、山を駆け上がってそして降りた。

谷間には自分の巣があり子狐が二匹、私を待っている。

やれやれの一日だった。

ー・-・-・-・-・-・--・-・-・-・-・-・-・-・-・


とんだことで時間を取られ、今日は獲物を捕まえる時間は、もうあまりない。

やっとネズミを2匹捕まえたところで、さすがの私も力尽きた。

キツネのもつ特別の能力なんか使うから、体力消耗したせいだ。


「母ちゃん、お帰りなさい。お腹すいた。ごはんは?」

2匹の子狐は、甘えた声を出してる。


「夕食の前に、聞きたい事ある。正直に答えな。

今日、山を越えて、あの人間の作った建物の近くまで行ったかい?お前達」

子供たちは、好奇心が旺盛だ。でも、人間がよくいるあの建物に近づく事を、私は許してない。

まあ、まだあそこまでは、行けないとおもうけど。


「いいかい、人間に姿をみられるのは、本当は危ない事なんだ。

食べ物をくれる人間もいるらしいけれど、どうやら、あれはキツネには毒のようだ。

毒を笑ってくれる人間ってのは、怖い動物だろう」

私は、精一杯脅した。


子狐たちは2匹とも、”そんな枯れ木の色の建物には近づいてない”

なんて、言い訳した。建物の色がわかるって事は 行きましたって事だ。

おばかだ・・・キツネをおいかけ山で迷子になった子供を笑えない。


問いただしてみると、ピーピー泣き出した。

どうやら、私を追ってきて、山の中で迷子になったらしい。

私も不注意だけど、子供ってのは、いう事を聞かないもんだ。







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― 新着の感想 ―
[良い点]  物語が素晴らしく秀逸な作品です。  母狐の語り口調で書かれているところが、この物語によく合っていると思いました。  お母さんという生き物は大変です。
[良い点] ゆるやかな展開、ゆるやかな落ちで心に染み入りました。 派手さはなくてもいいお話って書けるものですね。 なんとも言えず、ほんわかしました。 たしかな筆力が作品に安定感を与え、支えていると思い…
2018/06/16 09:59 退会済み
管理
[一言] おかあさんはいつも大変です。 人間の子供のために、奮闘してくれたキタキツネのおかあさん。 子供たちが安全にそれぞれお母さんの元に帰れてよかったと思います。
感想一覧
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