A hallucination and auditory hallucination
二作目です。まだまだ勉強不足なので、文法などめちゃくちゃですが良ければ読んでいっていください。
――僕は一人、道を歩く。隣には誰もいない。
僕は今、とある場所へ向かっている。家からそう離れていないところにある展望公園へ。展望公園があるさほど標高のない小さな山にはなだらかな傾斜の坂道が続いている。午前2時手前ということもあって人影は見当たらない。あるのは人魂のように空中にぽつぽつと浮いているようななんの変哲もない照明灯とガードレールだけだ。
僕「ハァ・・・・・・ハァ・・・・・・思ってたよりも時間がかかるなぁ。何回も来たはずなのに、こんなに時間がかかったっけ?」
そう離れてはいないと言っても、さすがに歩いて行くには少し時間がかかる。少なからず息が乱れる。だが僕は休むことなく歩き続ける。ここまで来て諦めて帰るのはなんだか許せなかった。そもそもなぜこんな時間に展望公園に行こうかと思い立ったのかというと、恋人であった人が好きであった場所だったからだ。僕も彼女とよく足を運んだことがあり、僕自身も好きな場所だ。
でも、もう二人で行くことはできない。なぜならもう彼女はこの世にいないからだ。そう思っているとまた涙が零れる。彼女との思い出が頭の中に絶えず溢れ出してくる。溢れて溢れて頭から零れ落ちそうだ。
僕はまた性懲りもなく、君との出会いから別れを振り返ってしまう・・・・・・・・・
***
今からおよそ1年前、僕は君とであった。君との出会いは、僕がよく行くコンビニでだった。ある日、ポテトチップスを買いにコンビニへ立ち寄ったとき君が新人アルバイトとしてそこに居た。一目見た瞬間僕は恋に落ちた。恥ずかしいけど『一目惚れ』っていうものはあったんだなと実感した。それが僕にとって君との出会いだった。(君はそう思っていないだろうが)
それからというもの、僕は特に用がなくてもコンビにへ行くようになった。最初は会計のときに少しでも話せるだけでよかった。僕が話しかけると君は笑顔で答えてくれる。最初は僕が客だからだと思った。でもいつしか君からも話かけられるようになっていた。僕はそれだけでものすごく嬉しかった。だけど人間というものは欲深い。僕はもっともっと君と話がしたい、もっともっと君のことが知りたいと思った。そして僕は告白する決心をした。
僕「呼び出すのは悪いし時間を取らない手紙がいいかな?ちょっと古臭いけど・・・・・・」
そう思い、僕はラブレターを書くことにした。
僕「一目見たときから好きでした、よろしければ僕と付き合ってください。お返事待っています・・・・・・と、こんなもんかな?いやいやもっと情熱を込めなくては!」
そんな感じで僕はラブレターを書くのに没頭した。最終的な内容な今思えば恥ずかしくて自分で書いたものとは思いたくなかった・・・・・・
そしてラブレターを完成させた翌日の午後2時頃、僕は君にラブレターを渡しにコンビニへ足を運んだ。この時間帯は客が少ないからだ。
君「あ、いらっしゃいませ。今日もポテトチップス?あんまり食べ過ぎると太るよ~、たまには違うものも・・・・・・」
君が話している途中だが、僕は話しに割り込むように口を開く。
僕「今日は買いに来たんじゃないんだ。実は、受け取ってほしいものがあるんだ」
そう言い、僕は手紙の入った洋封筒を手渡した。今思えば少し強引だったかな?
君「え!?これってもしかして・・・・・・ラブレター?」
君は少し頬を赤らめながら聞いてきた。やっぱり可愛い。
僕「うん。呼び出したりするのも悪いし、こっちのほうが時間も取らなくて良いと思って」
君「いまどきラブレターを貰うなんて思ってもなかった・・・・・・」
僕「迷惑・・・・・・かな?」
君「ううん!そんなことないよ!嬉しい。でも少し考えさせてほしいな。今は仕事もあるし・・・・・・」
僕「うん。それでいいよ」
君「じゃあね・・・・・・明日まで待ってほしいな。私も手紙を書くから」
僕「うん。わかったよ。じゃあまた明日」
君「うん。また明日」
こうして僕はコンビにを跡にした。僕としては好感触だった。あぁ、明日が待ち遠しい。今日は眠れなさそうだ。
翌日、案の定僕は興奮してほとんど眠れなかった。でもそんなことを気にしている暇はない。コンビニへ行かなくては。時計をみると12時過ぎだった。僕は顔を洗い、昼食を食べ、服を着替え、身だしなみを整える。そうこうしているとちょうど良い時間になった。
僕「よし!行くぞ!」
僕は両頬を手で軽くペチペチと打ちつけ気合を入れた。家を出てからコンビニへの道中、僕は何を考えていたかは緊張しすぎて覚えていない。気づけばコンビニの前に居た。
僕「うぅ~、緊張する」
そう言いながらコンビニの中を覗くと、君がいつも通りいる。笑顔で接客している姿を見ると、やっぱり可愛くて、綺麗で、なぜか少し落ち着いた。
僕「よし、行くぞ」
僕は、店内に人がほとんどいなくなったタイミングを見計らってから中に入った。
君「あ・・・いらっしゃいませ。」
彼女は少し恥ずかしがっているように見えた
僕「うん。約束通り来たよ。返事は・・・決まった?」
君「うん・・・はいこれ。」
そう言い差し出された洋封筒にはハートがところどころに散りばめられていて、とても君らしく可愛らしかった。
君「帰ってから読んでね・・・・・・恥ずかしいから・・・・・・」
君は照れているのか、顔を背けながら言う。
僕「うん。そのつもりだったよ。じゃあ僕はこれで」
君「うん。じゃあね」
僕が立ち去るときに君は満面の笑みを浮かべて見送ってくれた。そのときの笑顔は本当に、本当に素敵だった。それまで見た笑顔の中で最も。
それから僕は家に帰り着くと慌てて自室のベッドに潜りこみ、手紙の封を開けた。中には半分に折られ、封筒に入るサイズになっていた紙が一枚入っていた。パッと見たところ、あまり文章は多くないようだ。
僕「よし・・・・・・開くぞ・・・」
僕は心臓が飛び出そうなほど緊張していた。本当に心臓が飛び出ないように気合を入れて恐る恐る手紙を開ける。内容はこんな感じだった。
『お手紙ありがとうございます。あなたの気持ちはとても嬉しいです。私も実はあなたのことが気になっていました。こんな私でよければどうぞよろしくお願いします。P.S. 私はあんまり文章を書くのが得意ではないので、こんな無愛想な手紙ですみません^^;』
そういった内容のほかに、彼女の携帯のものと思われる電話番号とメールアドレスが書かれていた。僕はまさに天にも昇るような気持ちだった。『あの子と付き合える!』そんな気持ちが溢れて思わず『やったぞ!』と、叫んでしまった。その後僕はさっそく電話番号とメールアドレスを自分の携帯に登録し、君にメールを送信した。
僕「本当に泣きそうだ」
そんな言葉がつい僕の口から洩れる。実際自分で気づいていないだけで泣いていたと思う。その後、僕は疲れていつの間にか寝てしまっていた。
目を覚ますと、午後11時頃だった。ふと携帯を見ると一件のメールが届いている。確認すると君のものだった。僕は急いで内容を確認した。
『メールありがとう^^唐突だけど今度暇なときに会えないかな?色々な話がしたくてたまりません!』
僕は『うん。僕もたくさん話したいことがあるんだ。今度の休みはどうかな?』と返信をした。そして返信をしてすぐに君からのメールが届いた。
『うん!いいよ^^待ち合わせの場所と時間はどうする?』
僕は『駅前の広場に12時にどうかな?』と返信をした。するとまたすぐに君からのメールが届いた。
『うん!オッケー!楽しみにしてるからね^^』
こうして初のデートの約束が決まり、僕は嬉しすぎてベッドの上で飛び跳ねてしまった。幸せすぎて爆発してしまいそうだった。その後、僕は晩飯を食べ、また眠りについた。
それからというもの、僕のなんでもない生活は天国に変わった。君といろんなところへ行った。海へ、川へ、山へ、遊園地へ。そのなかでも近くの山にある展望公園は特にお気に入りだった。そして君といろんな経験もした。泣き、笑い、怒り、悲しみ・・・・・・どれもかけがえのない大事な思い出だ。僕はこんな生活がいつまでも続くと思っていた。巷ではそんなセリフは死亡フラグとして扱われていたが、そうそう漫画やアニメみたいなことは起きないと僕は思っていた。
――しかし、現実はそう甘くはなかった。
後1週間で君と付き合い始めて1年というときの昼の1時頃、僕の携帯に君の両親から着信が入った。聞けばなんと君が轢かれたというのだ。轢いた相手の男は精神に異常があり、何を思ったのか車で歩道に突っ込んだらしい。そこに運悪く、買い物に出かけていた君がいたとのことだった。僕は慌てて君がいる病院へと向かった。
――だがもう遅かった。
やっと辿り着いた病院では君の両親と僕の両親が先に待っていた。君の母親は泣き崩れている。君の父親も涙を流すまいと歯を食いしばっているようだが、それでもその両目からは雨がっ降ったときの雨水が、家の壁を伝い、流れるようにその頬を涙が流れていた。僕の両親も似たようなもので、母はさすがに泣き崩れることはなかったが、それでも顔が涙でぐしゃぐしゃになっている。父は冷静に見えたが、目から細い線がキラリと頬を通って顎にまで伸びているのが見えた。そしてお互いの両親が見つめる先には『君』がいた。そう、『君』が仰向けに、白い布を掛けられて寝ていた。周りの状況を考えると、どういうことかは言われるまでもなくわかってしまった。わかりたくなかった。僕はもう声も出せず、唇を強く噛み締めた。なにも考えられず、ただ時間が過ぎた。僕の父は、僕になにか言っているようだった。だけどそれは僕の耳に入らない。目の前が霞む。頭に血が上るのはわかった。頭がボーッとする。直に僕は、真っ暗な底なしの闇へ落ちていった・・・・・・・・・
それから僕は自分の家のベッドで目を覚ました。一瞬訳がわからなかった。『今のは夢なのか?』と思った。だが枕は水に浸したように濡れ、目は乾き、唇からは少し血が出ており、夢ではないことが明白だった。いくら怖い夢などを見たからといっても、目が乾くほど涙を流したり、血が出るほど唇を噛み締めたりしないだろう。一応漫画やアニメのように頬を手ではたくがなにも変わらない。『これからなにをすればいいんだ。なにをして生きればいいんだ。』そんなことを考えてもなにも答えはでない。答えを出せるわけがない・・・・・・・・
しばらくの間僕は無気力状態だった。部屋に閉じこもり、心配して声をかけにくる両親でさえも部屋に入れず、ただ、君とやり取りをしたメールを何度もなんどもナンドモ見ていた。食事もろくに喉を通らない。
僕「もう死のうかな・・・・・・そうしたら君に会えるかも知れないし・・・・・・」
そんなことを口走る。でも実行には移せない。やっぱり死ぬのは怖いものだ。それに死んでも君に会えなければ意味がないし、会えなければ死に損になってしまう。
僕「どうすればいいんだ・・・・・・・」
そう言い、僕は君との思い出を思い出す。海へ泳ぎに行き、君の水着姿がすごく可愛かったこと。川へカヤックの体験に行ったこと。山へキャンプをしに行き、身を寄せ合いながら寝たこと。遊園地の夜のパレードよりも君のほうが綺麗だったこと。展望公園で満点の星空の中、君と初めてキスをしたこと。ほかにもいろいろな思い出があるが数え出したらキリがない。どれもこれもハッキリと覚えている。展望公園での出来事は特にだ。そうしていると今まで無気力だった僕の中に、無性に展望公園へまた行きたいという気持ちが生まれた。
僕「なにもすることがないし、なんとなく行ってみるか。もしかしたらなにか見つかるかもしれないし・・・・・・」
そう呟いていると、そんな気がしてきた僕は、身支度を整え、家を出る。特に必要性も感じないため、なにも持たない。時刻は午前1時になろうかというところ。
僕「そこまで離れてないし、割とすぐ着くだろう」
そう呟きながら、僕は展望公園に向かって歩き出す。
***
そんな思い出を振り返っていると、展望公園の入り口にいつの間にか到着していた。ここの展望公園は山頂が比較的平坦で、木々も無く360度周りを見渡せる、この辺り屈指のデートスポットだ。ここからは僕の住む町も見え、キャンプ場がある山が見え、遊園地が見える。カヤックの体験ができる川は、キャンプ場がある山の近くにあるのだがここからだと山が邪魔で見えない。僕は町が良く見える側にあるなぜかひとつだけ色が赤いベンチに座る。
僕「やっぱりここは星が綺麗に見えるな」
そう言いながら夜空を見上げると無数の星たちが様々な光を放っていた。まるでいろいろな個性を持った人のようだ。町では見ることのできない光の小さな星もたくさん見える。すると夜空に一筋の線が見えた。
僕「流れ星か・・・・・・」
一筋の線は流れ星だった。流れ星が流れている間に、願い事を唱えるとその願い事が叶うと昔から言われている。これは多くの人が知っているだろう。だが僕はそんなことは信じていない。もしそうなら誰も不幸になっていないはずだから。そう思っている間に流れ星は消えてしまった。
僕「願い事を叶えてくれるなら今すぐ彼女を生き返らせてくれよ・・・・・・・・・」
僕は叶わないとわかっていてもそう呟く。もうなにかに縋るしか心を休められなかった。もういつ心が壊れてもおかしくないだろう。そう僕は思った。
僕「このベンチで彼女と初めてキスをしたんだよな・・・・・・・・・」
僕はまた彼女との思い出が頭に湧き出てくる。
***
僕と君が付き合って半年が経とうかというある日の午前0時頃、僕は君に呼び出された。
僕「こんな時間にどうしたんだ?」
君「うん。急に思い出したことがあってね。それにしてもごめんね?こんな時間に」
僕「僕はいいよ。君と一緒にいられるし」
君「もう、そんな恥ずかしいセリフよく平気で言えるね」
僕「ところでどこかへ行くんじゃなかいの?」
君「あ、うん。一緒に展望公園へ行きたいんだ。」
僕「展望公園?どうしてこんな時間に?」
君「いいからいいから!行こっ!」
そんなやり取りをした後、僕は君に腕を引っ張られながら歩き出す。展望公園へ行く途中、様々なことを話しながら展望公園へ向かった。君といると時間が経つのが早く、いつのまにか目的地である展望公園に到着した。そして僕らの町がよく見える側のなぜかひとつだけ色が赤いベンチに並んで座る。ちなみに恥ずかしくてまだキスは出来ていない。自分でも思うがさすがに腰抜けすぎる。
僕「着いたはいいものの・・・・・・なにをするの?」
君「見せたいものがあるんだ。向こうの空を見てて」
そう言われ君は夜空へ指を差す。しかしそこには良く見る星空しかない。
僕「・・・・・・・・・いつもの空じゃん」
君「もう少し待ってて・・・・・・あっ!」
君がそう言った瞬間に夜空を一筋の線が出来るのが見えた。しかしその線はすぐに消えてしまう。だがしかし、その線を追いかけるようにいくつもの線が新たに出来ては消えていくのが見えた。
僕「もしかして、これって流星群?」
君「うん、そうだよ。今日見えることを忘れてて急いで呼び出したの」
そんな会話をしている最中にもいくつもの流れ星が流れていく。
僕「そうだったのか、確かにこれはすごい」
君「でしょ?」
流星群なんて気にしたことがなかった僕でも、そのすごさがわかった。星が自分の速さを競うかのように、次々と流れていく。まるでかけっこをしているみたいだった。
君「あのね、私、あなたに言いたいことがあるの」
僕「なに?そんなに改まって」
君「私、あなたに出会えて本当に良かった。まだ半年くらいしかたってないけど、毎日がすごく楽しい。全部あなたのおかげでね」
君は顔を赤らめながら言う。
僕「ぼ、僕だって同じさ。君に出会えてから、毎日が楽しいよ」
僕も顔を赤らめながら言う。
僕「君と過ごしていると毎日が待ち遠しいんだ。早く君に会いたくて・・・・・・」
君「うん・・・私も。・・・・・・・・・ねぇ?」
僕「なに?」
君「キスして・・・?」
僕「ゴフッ!」
唐突にそう言われ、僕は思わず吹き出してしまう。漫画やアニメだとこんな流れでキスシーンなることが多いけど、まさか現実でそんなことになるとは思ってもみなかった。
君「今日は恥ずかしいからって逃がさないからね。もし逃げたら一生呪ってやるから」
僕「そ、それは怖いな・・・・・・わかった、僕も男だ。さすがにこんな状況では逃げるわけにはいなかいよ」
君「そう?じゃあ・・・・・・んっ」
僕が腹を括ると、君は目を閉じて唇を僕に差し出す。
僕「じ、じゃあいくよ」
君「うん・・・」
そんな情けないセリフを言った後、僕は自分の唇を君へと近づける。
僕「んふぅ・・・・・」
君「んっ・・・・・・」
少しずつ二人の顔が接近し、ついに二人の唇が接触する。君の息遣い、唇の感触がわかる。君は緊張で息遣いが少し荒くなっていた。(まぁそれは僕にも言えるが)唇はまるでマシュマロのようだった。やわらかいが確かな弾力がある。そして君の匂いが鼻にいっぱいに広がる。頭がクラクラする。確かにこれは心地が良い。だが僕の恥ずかしさが限界を向かえ、それ以上の分析をする前に唇を反射的に離す。
僕「あぁっ!」
君「んっ・・・・・・ふぅ・・・・・・もっとしてくれても良かったのに」
僕「さすがにもう恥ずかしいから勘弁してください・・・」
君「ちぇー、まあ許してあげる。」
僕「ありがとうございます」
君「それにしても、あなたにファーストキスをあげられて良かった・・・・・・」
僕「えっ」
君「えへへ、お互いに初めてをあげちゃったね」
僕「お、おう」
こうして僕と君のなんともいえないファーストキスは成功?した。
***
――どうして君が死ななきゃならない。
――君はなにも悪いことはしていないのに。
――変わりに僕を殺せば良かったんだ。
――そもそもの原因はなんだ?あの男じゃないか。
――そうだあの男が全部悪いんじゃないか。
――あいつは絶対に許さない。
――殺してやる。
僕の頭の中にそんな考えが浮かぶ。さすがに殺すのはダメだと思い、頭の中からその考えを無くそうとする。だが無くそうとすればするほどより深く、鮮明に、考えが頭をよぎる。這いずり回るかのように。
僕「誰か助けてくれ・・・・・・!」
無駄だと思いつつも助けを求める。やはり誰も助けてはくれない。
僕「誰か助けてくれよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
性懲りもなく僕は助けを求める。が、やはり誰もたすけてはくれない。もう諦めるしかない。そう思った矢先、誰かの声が僕の耳へ囁く。
『そんなことしてもなにも楽にならないよ。余計に辛くなるだけだよ』
そんな声が聞こえる。その瞬間、さっきまで頭の中を這いずり回っていた考えが消える。
『あなたは優しい。だから殺してやるだなんて言わないで』
それはとても暖かく感じる声だった。それにどこかで聞いたことがある。そうだ、彼女の声だ。
僕「どこにいるんだ・・・?出てきてくれ!」
そう叫びながら、ふと左隣を見るとそこには死んだはずの彼女がいた。
僕「・・・!?生きてたのか!」
僕は彼女に問いかける。
君『いいえ、わたしは死んでしまったの。今はこうして姿を見せれているけど、もうすぐまた見えなくなるの』
僕「え!?また僕を置いてどこかへ行くのか!?」
君『いいえ、姿は見えなくなるだけでわたしの魂はずっとあなたと共にいる。次に姿を見せられるのはいつになるのかはわからないけど、それだけは確かよ』
そう言いながら彼女は僕の手を取る。
君『だからね、あなたは一人じゃない。あなたが死んでしまうときまでわたしは一緒だから』
僕「そう・・・なのか」
君『だからね、わたしの変わりにもあなたには生きてほしい。これ以上後悔しないように、精一杯に』
僕「あぁ・・・あぁ・・・!わかったよ。君のためにも僕は生きる。君の分まで」
君『そう、それでいいの』
そう言う彼女をよく見ると、少しずつ色がなくなり透明になっていく。そんな光景に僕は驚く。まるでなにもかもが消えるように思えたからだ。
僕「!?だ、だいじょうぶなのか!?」
君『えぇ、ただ時間が来ただけ。もうこれ以上あなたに姿を見せることはできないの。ごめんなさい。」
僕「なにもかも消えるわけじゃなんだよな!?」
君『えぇ、さっき言ったじゃない。魂はずっとあなたと共にいるって』
僕「あ、あぁ」
話しているうちに彼女の姿はほとんど見えなくなる。辛うじて輪郭が見える程度だ。
君『最後にあなたに伝えなければならないことがあるの』
僕「なんだい?」
君『今も、これからも、愛しています』
僕「あぁ、僕もだよ」
君『ありがとう』
そう言いながら彼女は消えた。だが不思議と寂しくはない。なんとなくだがこの胸の中に、彼女がいるように感じられるからだ。
僕「ありがとうはこっちのセリフだよ・・・・・・・・・これからも僕は生きるよ。悔いのないよう、一生懸命」
そう僕は決意し、ベンチから立ち上がる。そして家へ帰るために歩き出す。
――僕は一人、道を歩く。隣には誰もいない。だけど僕にはわかる。ずっとずっと、僕の隣には彼女がいることが・・・
***
俺「ハッ・・・ハッ・・・ハッ・・・ハッ・・・」
俺はもうすぐ始まる試合に向けてコンディションの調整をしていた。試合まではあと1週間もない。今は午前2時頃だろうか?なかなか寝付けない俺は、気晴らしに軽くランニングをしていた。俺が住んでいる町の近くの小さな山には展望公園があり、そこまでの道がちょうど良い傾斜で、距離も長くもなく短くもないトレーニングにはちょうど良い環境だった。今日は天気も良くて星がよく見えるだろうからそこへ行こうと思う。
俺「ハッ・・・ハッ・・・ハッ・・・・・・・・・ふぅ・・・今回はなかなかいいペースだな」
そうこうしているうちに俺は展望公園に到着した。なかなか調子が良く、思ったよりも少し速く着いたな。
俺「それにしてもやっぱりここからの眺めは良いな。星がこんなに見える」
夜空を見上げると数えきれなほどの星が輝いている。そんじょそこらではそうそうお目にかかれない景色だ。景色を見ながら少し休もうと思いベンチのある方へ行くと誰かが座っている。男のようだ。男はなぜかひとつだけ赤い色のベンチに座ってなにかぶつぶつと呟いている。男は左の虚空に向かって、まるで誰かと話すかのように語りかけている。
俺「なんだ・・・?気味が悪ぃ」
男はぶつぶつなにか呟いているかと思うと急に叫んだりして実に気味が悪かった。俺は見つかったら面倒だと思い、気づかれないように細心の注意を払いながら急いでその場を離れた。
俺「なんだったんだありゃあ?もしかしてそういう危ない薬をヤッてんじゃないだろうなぁ・・・・・・」
あの男は明らかに正常ではなかった。おそらく禁止されている薬を服用しているのだろう。それか精神病かなにかだ。だが、正直なところ真相はどうでもよかった。あんなやつには誰だって関わりたくはない。それに自分にはもうすぐ試合がある。あんな男を気にしている場合ではない。
俺「よし!なんか萎えちまったが気合入れていこう!」
俺はあんな男を忘れるために、ランニングにより集中した。するといつしか男のことなんて気にならなくなり、いつしか男のことなど完全に忘れていた。
――そう、所詮俺が見たことはその程度のことだった。
もし最後まで読んでいただけた方がいれば恐縮です。前書きでも言った通り、圧倒的に勉強不足なのでイライラさせてしまったかもしれません。特に回想のキスシーンは、自分自身が恋愛経験がないせいでなんのひねりもなく面白くないことになってしまいました。もっと勉強してより良いものを書けるように努力していきたいと思います。ありがとうございました。