思い出話
とあるカフェでのお話
「お客さん、なんになさいますか?」
呼ばれた無駄に眉の濃いスタッフがいかにも仕事帰りですといった風貌の男に声をかけた。
「とりあえずウーロン茶で」
「かしこまりました」
カフェに来たわりに紅茶やコーヒーといった部類が苦手なこの男、田中広はいつものようにウーロン茶を頼んだ。
そんな男がこのカフェに来た理由は待ち合わせの相手がこの店を好きなのだ。
その店はカフェにしては珍しくカウンター中心で、見た目的にはカフェというよりはバーに近い感じだ。
よって店員と距離が近くお話できる環境にあった。
その客もまた、話は好きな男であったため店員との会話はよく弾んだ。
「いやー、お客さんかっこいいですからとてももてますでしょう?」
「そんなことないですよー、特に最近はそういう話はぱったりで」
「まさか、恋人がいたからというオチではないでしょうね?」
「うーん・・・実はそんな感じなんですがね」
「ほら、やっぱりでしたね」
店員はおかしいとでもいうように笑った。
「では、待ち合わせというのはその方と?」
「そうですね。」
「もし差支えなければ、どのくらいおつきあいされているのですか?」
「かれこれ二年ですかね」
「ほお、近頃の若い方にしてはお長いですね。よろしければ、お話を伺ってもよろしいですか?」
「うーん・・・・・・」
田中は悩んだが
「そうですね、たまには話してもいいかもしれません。」
店員は悪いことを聞いてしまったかとひやひやしたが、その言葉でほっとした。
「では、お聞かせ願います」
その言葉で田中は懐かしそうに、そして嬉しそうに話し始めた。
「あれはちょうど二年前のことでした・・・・