自尊心を踏み潰す♂
12.自尊心を踏み潰す♂
いつものように友人が迎えに来てくれてから学校へ向かう。こっちの街に来たのはつい三日前・・・まだ三日・・・なんだ。
自分でも以外なのは受け入れる事がすんなり出来た事だろう。まぁ全く知らないところに来たという訳ではないからかもしれないが。いや逆に全く知らないほうが開き直れるまであるが。
隣を歩くのは、ハルという女の子。成績優秀でクラス委員。優しい目をして端整な顔立ちと端正な姿勢は男子の憧れとしてクラスでも人気らしい。こうして一緒に登校する事ができると言うのは少し優越感を持っても良いのかもしれないが、俺には親友の顔がチラついたり、出会った時に左の頬を思いっきりぶん殴られた事でそういった感情は無い。今のところは・・・。
『今日剣術部に顔出すの?』こちらを見ずに前を向いたまま訊ねてくる。
『ああ、そうだな昨日チーリ先生に言われたとおりにしようと思っている』ハルの横顔を眺めながら返事をした。
『じゃあ、これは一つ忠告ね、部長には逆らわない事よ』目線だけこちらに向けてくる。ばっちりと合ったがすぐにそらされる。俺、嫌われてるん?
『逆らうなんて、穏やかじゃないな。なんだ王様なのか?』
『いえ、王様じゃなくて、どちらかと言うとそうねぇ・・・』口に手を当てて考える。柔らかそうなくちびるっすね!全然気になんかならないけど!
『とにかく強いわ、学生では並ぶ人はいないんじゃないかと言われるほどに、そして厳しいの。他人にも自分にも。口癖は騎士道の下に・・・』
『何だその口癖。下に何するの?』怖すぎる。
『まぁ会ってみれば分かるわ』最後とっても楽しそうなのね。
学校へ着教室へ入るとお互いの席に行く、クラス内ではあんまり話さなくなるんだよな。何人か昨日話した奴らに挨拶をしたり少し話したりする。ハルもだいたい同じように友人と話をしたりしている。
『しかし、ユウキは羨ましいな、あのハルと一緒に朝登校できるなんて』
『そうか?イツキと仲が良かったから朝家に来る事がもう日課になってるって本人は言ってるよ』なぜか暗に俺とハルの距離が近くない事をアピールしてしてしまう。
『そうなのか、良かった』
何を安心してるんだ?俺とハルの関係が希薄だからって、お前とハルの関係が濃くなってる訳じゃないだろ?
鐘が鳴る、廊下からダッシュしてくる人の気配、間違えなくチーリ先生だろう。
『やばい、席に戻ろう』といってそれぞれの席へ戻る。
おっはよう!今日も元気いっぱいな挨拶と共に教室へ入ってくる。今日の予定やら挨拶を済ませると名前を呼ばれた。
『ユウキ、キミにはハルと一緒にクラス委員をやってもらうね。イツキの代わりね、他の子は皆は何かしらの委員会やら仕事があるから、よろしく』
と言って颯爽と去っていく。おい、一応こっちの気持ちとか聞いても良いんじゃない?
授業と授業の合間にハルに話しかけられる『ユウキよろしくね。何をするという事でもないけれど、チーリ先生の雑用を頼まれる位だから難しい事は無いわ』
『先生の雑用なんてなんで俺がやらなくちゃいけないんだ』
『私に言われてもね、クラス委員になったからじゃない?』
有無を言わさずだったけどね。ため息をつく『まぁ、よろしく』納得いかないけれど、それが大人になるって事なのかー!なんて無理やり納得する。
放課後になり剣術部の入部届けを顧問の先生に出した、顧問の先生は登校初日に職員室の真ん中に座っていたおじいさんだった。近くで見るともう背中も曲がって声も小さいが目の力が強い、目が合った時に思わず身構えてしまった。顧問とは名ばかりで、部長に全てを任せているらしい。稽古場にもういるから挨拶をしてきなさいということだった。
自分のいた剣術部の場所と同じだったので、早速行く事にした。そういえば、前の剣術部、部長キノは剣術の腕前はたいした事なかったが努力家で皆の面倒を良く見て新入生にもしっかり教えたりしていて、皆からから好かれる存在だった。導くと言うよりも、支える方の部長だった。
思い出しながら歩いていると稽古場へ着いた。
扉を開くとそこには広い空間が広がっていて部屋全体が木製に変わって校舎よりも温かみを感じる。そこは自分の知っているそことは違って静かだった。その真ん中に冷たく静かに一人たたずんでいる女の子がいる。入り口から見て左の方を向いていた。真っ黒な長い髪を後ろで一つに纏めて細くて長い首の下には華奢であるが恐ろしく姿勢のよい身体がある。白い服に青く長いスカート。真っ黒の髪の毛と綺麗な白いシャツで清楚な印象である。そしてうなじが際立って見える。ただのフェチでそう見えたのではないことを宣言したい。
『初めまして、今日から剣術部に入部を希望のユウキと言います。部長はどちらにいますか?』丁寧に下手にでる。
切れ長の鋭い目でこちらを射抜くと静かに、ゆっくりとしっかりと言葉を発する『私が部長だ。入部希望者がいるなんて話は聞いていない』
『放課後に顧問の先生に入部届けを出したばかりなので』
『今日は出直すんだな、そういうものは早めに提出をするものだ』冷たく言い放たれる。
『は?何でだよ、顧問の先生にもちゃんと話したんだよ!』
こちらに向き直り数歩近づいてくる。『部長に対する口の聞き方がなってない、そんな奴を入れるわけにはいかないな。下のものにも示しがつかない』
『下のものってどこに居るんだ?そういえばこの時間ならもう何人かの部員が見えていても不思議じゃないような気がするんだが?』
『・・・まだ来ていない』
『まだって本当にいるんですか?あなたの高飛車な態度のせいで皆辞めてしまったんじゃないですか?』
『・・・・・・。』
『言い返さないって事は認めるのか?』
『何度も言わせるな』
その時稽古場入り口から見て右側にあるドアがガラリと開いた。
『部長遅くなりましてすいません。部長の靴が汚れていたので磨いていました。』
出てきた男がこちらを見て来た。完全に誰だコイツというような目をしている。
『なんだ、ゴミか』
『今のは俺の事を言ったのか?そこのメガネ!』
長身でメガネを掛けていて鼻筋がしっかりと通っていて適度に細長い輪郭がスッキリした顔立ちにしている。それにしっかりとした体格は鍛えられたものだと一瞥して分かる。
『部長、少しご機嫌がすぐれないみたいですが、いかがしました?』
『あぁゴミが目に入ってな』
『おい!そこは「目にゴミが」で良いんだよ。俺がゴミみたいじゃんか』
『何故分かったんだ』本当に驚いてやがるよこのメガネ。
『やめろ!悟らせていくやり方は思いのほか胸が痛い!』なんだよこの確実にダメージ与えてくるやり方は。
『そういえば、貴様先程まで生意気を言っていたが・・・何だったかな?』部長に相当に嫌われてしまったらしい。
『ああ、そうですか、分かりました、今日は帰ります。お疲れ様でした。顧問の先生に渡しておけって言われたので受け取って下さい。部長さま』
『おい、勝手に部長に手紙を渡してるんじゃない!俺を通せ!』
『何でだよ、入部届けだ、顧問の先生のハンコだって貰ってる。』
『お前のような男が入部するだと?・・・嫌だ』
『メガネのセンチな気持ちは聞いてない』ピシャッと言ってやった。
『嫌だ』ピシャッと言われた。
ってか即答かよ聞いてすらいないのに、この女
『偉っそうに』
『そうか、私は偉そうか・・・』
自覚ねーのかよ。
『まぁ、実力があるなら認めるけど、どうだろうねそんな華奢な身体でどれほど出来るか疑いますね』
『おい、お前本気か部長にやられるぞ?』
心配された、実はいい奴?
『挑発してくるとは生意気だな、ここで力の差を見せ付けてやっても良いのだが、部の一員でもない奴をぶちのめすのは気が引ける。明日だけ特別入部を認めてやる。私が勝ったら退部してもらう、お前が勝ったら・・・好きにしろ』
『今でも良いんですけどね、明日が楽しみですね』なんだけっこう喋るじゃんか。
『全く楽しみではない、結果の分かっている試合など何も感じない』
『じゃあ、明日また来ますね』
『騎士道の下にキミの自尊心を踏み潰す。楽しみにしていろ』
あーそうかよ。ってかメチャメチャ怖い事言いますね?
家の前に着くとハルがいた。何で居るんだ待ってたのか?
『そうだった?剣術部は』
『あぁ、なんだあのむかつく女は』印象最悪である。ただすごく立ち姿が綺麗ではあったな、なんて思い出す。
『むかつくって、あんたまさか失礼な事言ったりしてないでしょうね?』
ハルに稽古場であったことを話した。
『はぁ、なんとなくあんたの事が分かってきたわ。でも残念だけどきっと勝てない』
『俺だって前の学校では一番強かったんだぞ?知らないくせに勝手なこと言うな』
『そうね、確かにあなたの実力は知らなかった見くびってごめんなさい。でもシノさんの実力は見てるからね。簡単には行かないって事だけは言っておくわ。ズタボロにやられて泣きついても知らないから、じゃあね』
なんだ心配して様子を見に来てくれたのかと思って家の中に入ると、おねえさんから『ハルちゃんからおいしいチーズもらったから明日ちゃんとお礼を言っておいて』って言われた。ただのおすそ分けですか、アリガタヤ。
明日余裕だろ?自分に言い聞かせる。
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