居場所♂
日が空きましたが、よろしくお願いします。
6.居場所
よく知っている天井が目の前にはある。ユウキは目を覚ますとそのまま天井をしばらくぼーっと見ていた。頭ではすでに昨日の事を思い出していて、ここは俺の家ではないんだと分かっている。分かっているから起きて現実を見つめる事が怖かった。こうやって天井をずっと見ていればそれは自分の家に家に居るようなそんな錯覚を起こしてくれるからである。
『ユウキー!起きなさーい。朝ごはんできているわよ、早くしないとおいしくなくなっちゃうわよ?それとも部屋まで行って優しく起こして欲しいのかしら?』優しく、元気な声が聞こえてきた。これは親父と同じだなと思いながらもやはり少し起きるのが億劫であるし、昨日の事を思い出すとなんか少し恥ずかしい気持ちになる。恥ずかしがっていると返事するタイミングを失ってしまう。
『あれー、まだ寝てるのかなー?』階段を上ってくる音が聞こえてくる寝たふりを決め込もう。
バン!という音と共に部屋の中におばさんが入ってきた気配がする。
『男の子になっても朝が弱いなんて・・・我が子ながら情けない』独り言をこぼしてから、さてどうやって起こそうかと考える。
『・・・。』狸寝入りなんて何でしなくちゃいけないのかと自問自答するがもはや流れに任せるしかなかった。
薄く目を開けて確認してみるとティッシュを手に取り、細く長く巻いている、これは・・・と思っていると、こちらを振り返りそうだったのでまた目をつぶる。こ、これは、鼻に差し込まれるやつなんじゃないかー?
少し覚悟をしていると、布団の中に何かが入ってきた。ん?なんだ?
このおばさん布団の中に入ってきたよ!昨日抱きしめてもらった事がリアルに思い浮かぶ、とても暖かい。
って体が全く動かない、いつの間にかしっかり抑えられている。
動け!動け!動いてよー!
そして、鼻に異物感があり、鼻の奥に何かが差し込まれた。さらに耳元で『ユウキ君朝だよー』っとささやかれる。
『ハックション!』さすがに飛び起きようとしたが、まだしっかりと抑えられている『な、何してるんだよ!布団の中まで入ってきて!』
『ふふ何?恥ずかしいのー?そんなに顔を赤くして、カワイイわね。いつまでも狸寝入りしてるのが悪いのよー』
そうして少しの間、遊ばれた。
『早く起きなさいねー』そう言って下りていった。
『・・・気づいてんじゃん』居なくなったところに向かって言う。
下に行くとすでにご飯の支度が済んでいた。あとは食べるだけだ、至れり尽くせり。いや、至り過ぎだろ。
パンとハムエッグそれにサラダがあった。早く食べちゃってね?と言われたのでパン、レタス、ハムエッグ、ケチャップ、レタス、パンの順番で挟みサンドイッチのようにして、さくっと食べてしまった。
唐突におばさんに話しかけられた『学校なんだけど、今日はお休みって事にしましょう、あなたは親戚の家から一人で転校してきたことにしてもらおうと思うの、イツキとは従弟って事で良いかな?』特に嫌な事も無く、これから学校とかはどうなるのかと少し考えていたが、自分一人では決めかねていたのでちょうど良かった。『構いませんよ、よろしくお願いします』
『まっかせなさーい!』とても元気に言った後で、『それとイツキの休学の手続きもしないといけないわね』同じくらい明るく言ってはいるが、やはり無理しているんだろうと思う。やっぱり大人はすごい、改めて、感謝をしなければと思う。
『あのぉ、おばさん。本当にありがとうございます。これからお世話になります。ご迷惑をかけるかも知れませんが、よろしくお願いします。』こんなにしっかりと頭を下げた事は初めてなんじゃないかとお辞儀をしながら思う。
『はい、こちらこそよろしくお願いね、でもこれだけは言っておくわ』
少し間が空いたので、覚悟をする。
『次におばさんと行ったらグーでチョップするからね、覚悟して』
え?『あ、はい。じゃあ、なんて言えばいいんだ?』
『そうねー、お母さんが抵抗あったら、お姉さんとでも言ってちょうだい、もしくはカミーナさん。これ私の名前ね』
『そうかー、考えておきます』お姉さんは嘘になるし、お母さんは恥ずかし過ぎる。
そんな話をしていると玄関の扉がコンコンコンと叩かれる音が聞こえてきた。はーいとおばさんが返事をする。
『今手が離せないから、ユウキ君出てもらって良いかな?』
扉を開くとそこには昨日の夜にラルの家に居た女の子が出てきた、確か名前はハルとかっていっていたような気がする。
『あなたは、昨日の夜に私の家に来た変態・・・なんでここにいるの?』
『それはなぁ・・・俺にも良く分からん。俺の家だと思ってきたら違ったんだよ』俺が誰かに説明して欲しい。
『分からないって、そんな事・・・イツキは?イツキはどこ?』
家の中から声がした。『イツキは今日はちょっと学校行けないの、ハルちゃん悪いんだけど学校行って、先生に伝えておいてもらえるかな?』
『って事なんでまたな』手を上げて挨拶をする。
『んー、分かった学校終わったらイツキの様子見に来るって、イツキのお母さんに伝えておいてもらえるかしら?』
見送っていると、振り返ってハルが聞いてきた。『あなた、お名前は?』
『ユウキだ。よろしくな、ハル!』このラルに良く似たハルって女の子なかなかいい奴だな、恐ろしく良いパンチも持ってるしな。
『呼び捨てにするんじゃないわよ、馴れなれしい。まぁ良いわまたねユウキ』手を振って颯爽と学校へ向かって行った。お前はすでに呼び捨てなのな!
その後、おばさんと学校へ行き、転入学の手続きをして、制服を購入した。学校ではすれ違う人の多くは知らない顔で、通り過ぎていく。中にはこちらを気にして視線を向けてくるものもいるがすぐに視線をそらす。きっとイツキって奴と見間違えてるんだろうと思う。友達だって言ったハルでさえ最初見間違えるほどに似ているらしかったからそうなのだろう。そういえば、俺のいた学校に居て仲良くしていた奴にそっくりな女の子もいたなと思い返す、一瞬見間違えるほどにそっくりさんで制服がスカートでなかったら間違えていたかも知れない。そんな人が二、三人いるんだから不思議なもんだ、それにハルだってラルにそっくりではないか・・・マジで分からん、一体ココはどこなんだっての!
しかし、ようやく自分が知っているのに、知らない場所に来てしまったんだろうという実感が沸いてきた。
こうなったら、自分のいた場所に戻れるように色々調べて行くしかない。とにかく明日からこの学校に入学するのだ、色々な人と話してみよう。
『ユウキ君これから私は仕事に行くからお昼ご飯はてきとうに家のもの食べても良いし、これで何か買っても良いわ』といって、五百ガルンを渡されたこれだけあればそこそこ食べる事ができるが『いや、大丈夫だ全然おなか減ってないし』そんな簡単にもらえない。
『何言ってるの?男の子なんだからしっかり食べないとダメでしょう?あなたのお父さんから預かってるんだから、ちゃんと食べさせないとダメなの!』と言って笑顔で無理やり押し付けてきた。
そこまで言ってくれて押し返すのも気がひけるのでもらう事にした。
昼ご飯を食べて、図書館に行き周辺の地図を見てみたが、自分のいた場所とやはり全く同じで、街の名前はコート。世界の名前はレヴィル。世界の端っこの街であり隣の街まで行くには山を二つ越えなければならない孤立した所となっている。
確認はしていなかったがやはりこの世界は俺の知っている世界で俺の知っている場所にいる。変ったのは人だけだ、そう簡単に言うと性別が変ってしまっているという事だ。
今いるこの世界が俺の居場所なんだ。
ありがとうございまあした。感想やレビューを書いていただけたら幸いです。辛口なものでもお願いします。




