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向かい合う時に向かう時

 28.向かい合う時に向かう時



 夢の中で俺はイツキと話をした。またイツキも今の状況を把握していた。

 戻らなければこちらの世界の状況がドンドン悪くなっていくという事をイツキも境界ドロップを読んで知っていた。

 そしてこちら側の世界で災厄が起こり始めている事を伝えるとひどく動揺をしていた。早くしないといけない。

 でも、正直自分がしっかりと元の世界に戻りたいと願う事が果たして出来るのか、自信が無い。もちろん覚悟は出来ている、こちら側の世界のい皆と別れて元の世界に戻る覚悟は出来ている。ただ、覚悟は出来ても、本心はどうなんだろうと思う。ハルやシノ、リン、ツバキ、チーリ先生、カミーナさん、もっとずっと一緒に・・・。




 夢の中で私はユウキと話をした。ユウキも現在の状況を把握していた。

 私たちが戻れば、平和な世界に戻る、こちら側は全く変わらないけれど、向こう側がこのままでは崩壊してしまう、それはつまり私の友達が皆死んでしまうという事。

 頭の隅っこで最低な自分が居る。でもそんな事は絶対に出来ない、今まで私を助けてくれた、ハルちゃんだってチーリ先生だってお母さんだって死なせることになっちゃうんだ。目を瞑って知らん顔なんて出来ない。

 でも、ラル君とはもう一緒に居られないんだ。そんな事をずっと考えてしまっている。このままではダメだ、もし失敗したら、死んでしまうのかな?きっとそうなんだろう。私のお父さんが帰って来なかったって事はそういうことなんだ。




 夢の中ではお互いの情報を補足しあったり、考えを話し合った。

 眠ったのにまだ疲れが残っているのはそうしたことが原因なのかもしれない、頭はしっかりと働いていたからな。

 授業中も頭がボーっとしてしまい、思いっきり眠ってしまった。

『ユウキ!起きろ!』授業中で先生に怒られてしまう。

『すいません』

『お前の為に授業しているわけじゃないから、お前が勉強について来れなくても俺は一向に構わないんだが、もしそれで私のやる気が無くなったら、困るのはお前の友達だろうが』

『はい、気をつけます』うん、そうだ自分の行動で周りに与えている影響っていうのいつでも少なからずあるものなんだ。


 放課後になり、部活動に出る。相変わらずシノにべったりとくっ付いて離れないリンと俺とツバキの四人で活動をする。一対一で向かい合ってゆっくり交互に木剣を振る、それを受けるというのを繰り返したり、素振りをしたり、あまり実戦形式の練習は最近していない。きっと怪我をしてまだそんなに経っていないので軽めの練習という事になっているんだろう。大会もまだまだで先で、基礎的なことを行っているといった感じだった。

『今日はここまでだ、各自片づけをして、帰り支度をするように』

『はいよ、お疲れ様』練習が終わると、床を綺麗に雑巾がけをして、着替えをして、道場の戸締りを行い、四人で学校を後にする、シノとリンは二人で帰り、俺はツバキを家まで送り届ける事になった。

『ユウキさん、いつもありがとうございます』

『あぁ、家の方向一緒なんだから、一緒に帰るのは普通だろ?』

『そうなんですけど、何となく私よりも、もっと一緒に帰りたい人とか居るのかなって思いまして』何をニヤニヤしている。

『な、なんだよ、どういうことだよそれ、俺は別にそんなこと思ってないぞ』

『またまたー、お姉ちゃんが待っててくれないかなーとか思ってたんじゃないんですか?それとも、部長を送って行きたかったとかですかね?』ニヤニヤ止まらねーなおい!

『な、なんで、シノが出て来るんだよ、関係ないだろうが』

『そんなこと言うけど、実際はどうなんでしょうかね?』

『バカ!実際も何も無い』

『へえ、じゃあ、私は?』ん?何だって?突然だな。

『今、一緒に帰ってるだろう?』

『ユウキさん、本当にニブチン何ですね?今のをユウキさんにも分かりやすく言うと、私の事は好きですか?って事です』

『うん、まぁ好きだよ』

『何だ、ロリコンだったんですね』

『おい、お前なぁ。嫌いじゃあないけどそういう対象としても見てねーよ』

『いやらしい目で見ないで下さい、ロリコンお化け!』

『新しいお化けを勝手に作るな!色んな意味でマジで怖いからそのお化け!そして俺は確実に生きている!』

『ふふ、まぁ冗談はこれくらいにして、嬉しいです。好きだって言ってくれて』

『上手い冗談だよ本当に』

『それで、どれくらい好きなのかな?私の事』

 前に回りこんでこちらに振り返りながら言うにふさわしいセリフと可愛さだ。先程のロリコンお化けを肯定していたら、世界で一番だって言ってしまいそうなほどだった。

『世界で一番だ』実際に言っていた。

『出た!本物のロリコンお化けだ』本気でヒカレテはいないかい?

『少女というカテゴリーの中で、だけどな』危ない、うっかり言い忘れていたぜ!本当だぜ?

『コドモ扱いする人は嫌いです』

『ああ、そうだったな、子供じゃあないよな、うん』拗ねる所がもっとも子供みたいだけどな。

『私、今度から少し練習に参加させてもらおうと思ってるんです』

『そうなのか?』

『ええ、守ってもらって嬉しかったですけど、やっぱり、それで他の誰かが傷付くのはやっぱり嫌です。今回のことでとても強く思いました。ユウキさんにコドモ扱いされないようになって、本気で好きになってもらいます』

 うん、え?え?

『お、おう』上手い事とか、なんて言ったら良いか分からん。

『そういうわけで、少し元気になってもらえて良かったです。何か今日疲れてるというか元気なさそうだったから』

『うん、そうだな、だいぶ元気になったよ。ありがとう』

『どうって事無いです、大人の階段を上り始めてるんで』

『そうなんですか、シンデレラ、大人になるのが楽しみです』

『?シンデレラ?何でですか?』

『それが分かったら、認めてやるよ』

 気が付いたらハルの家の前まで来ていた。

『上から目線ですね、気に入らないです。まあいいや、じゃあまた明日です』

『おう、またな』

 そうだ、皆の未来を俺の自分勝手で無くすことなんて出来ない。例え、例え、俺がどうなろうと。

戻るんだ、あの場所に。




『イツキ、そろそろ起きなよ』とんとんと肩を叩かれて起きる。どうやら眠っていたらしい。

 周りを見ると完全に皆下校していて、肩を叩いて起こしてくれたのはラル君だった。

『私寝ちゃってたの?』いつ寝たのか全く記憶に無い。

『うん、思いっきりね、最後の授業が終わったと同時に寝始めて、もう二時間くらいは経つかな?』

『え?!そんなに?どうしてもっと早く起こしてくれなかったのさ!』

『いや、だって気持ち良さそうに寝てたし、今日は朝から寝不足みたいだったから少しそのままにしておいた』

『ありがとう、ここに居てくれたの?』

『ああ、そうだね。、それとこの本見つかったんだね?』

 ラル君が持っていたのは私が教頭先生から借りた境界ドロップだった。一瞬読まれたと思った。

『うん、そうなんだ。ちゃんと見つかったよ』

『なるほどね、確かに、イツキの状況を考えると、これはノンフィクションだったことになるね。驚きだけど』

 しっかり読まれてました。

『うん、そうなんだ、帰り方分かったんだ』

『良かったね、これで元の世界に戻れれば全部元通りなんだ』

『元通りなんかじゃないよ、私だってこっちに来て少しは変われたんだ、あの時のままじゃないもん。私だってラル君に会えたから変われたんだもん。元通りなんかにはしたくないよ』

『そういう意味で言ったんじゃないんだけど、ごめん、配慮が足りなかったかもしれない』

『別に謝って欲しいわけでもないし、何もラル君は悪くないよ・・・』

だけど、でも、だから、だから、だから、だから・・・

『いや、やっぱり俺が悪いんだイツキが頑張ってるのはいつも見てたのにな、帰ったらきっと向こうの奴らは適度に驚くよ?自信持って帰って良いさ。何か手伝える事があれば協力するよ。でも早くしないと向こうの世界は危ないかもしれないんだよね、無事で居てくれれば良いけれど』

ラル君はいつも、優しくて正しいなぁ。正しいんだ。だけどさ!

椅子から立ち上がりラル君を見る。

『どうした?怒らせる事言ったかな?』

少なからず睨んでしまってたのは自覚しているけれども、どんな表情をしているのかは自分では確認できないから分からない。

『ラル君は!ラル君は、いつも優しくて正しい、ずっとそうしてきたんだと思う、だけど!だから!優しくて正しくしか出来ないんだよ!私は間違ってても、こっちの世界に居てくれとか。行かないで一緒に居たい、とかそういう、正しくないことだって必要な時ってあるんだよ!』

『いや、それは・・・』

それはの続きを待ってみたものの、その後に言葉がついてこない。

『もういい!私帰る』

一人で教室を出て気づいたら駆け出していた。その場から逃げ出すように。

家に着きとても後悔をした。あんな事どうして言ってしまったのかと。それを言えない理由も頭の中ではしっかり理解してるし、ラル君の方が正しいに決まっているのにな。私が最低だ、何も変わってなど居ないのかもしれない。思った事を口に出来る人は限られてるし、思った事を口に出しすぎてしまう事もある。不用意な一言で誰かを傷付けてむしろ悪くなってるんじゃん!

布団の中で後悔に苛まれながらいつの間にか眠ってしまっていた。さっきまで学校でグースカ寝てたというのに、だ。

うん、戻るんだあの場所に。


読んでいただき、ありがとうございまあした。感想やレビュー、評価を書いていただけたら幸いです。辛口なものでもお願いします。

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