始まりの邂逅~本当の始まり♂
さむーい、キーボード打つ手が冷たすぎるー、何か良いアイデアは無いものか・・・。
3.~始まりの邂逅~
♂♀
ここは?『真っ暗だ』
ここは?『真っ暗ね』
ん?前から何か来る?物音を立てずにゆっくりと近づいて来る。いや、こっちも近づいているのか?少しだけ進んでいるような感覚がある。それは有無を言わせず近づいていってしまう。
だんだんと近づいて来るモノの正体がおぼろげながら見えてくる。
『人?』
『人?』
互いに認識できるようになって驚く。
そこには自分がいる。驚いた顔をした自分がいた。
正確に言うとそれは自分とそっくりな顔をした女の子といった感じだ。
近いところまで来たが驚いて言葉が出ない、というか口が、いや体が動かない。
『・・・・・・』
『・・・・・・』
お互い固まっていると、また勝手に動き出した。さらに近く、もっと近く。
そしてもうぶつかると思って目を瞑ったがぶつかった衝撃はやってこない、代わりに分厚い空気というか湿った暖かい空気どれといった描写が正しいか分からないが、そんな空気の中に入った感触があった。
振り返れない。身体は動かない。また真っ暗の世界へ行ってしまった。
4.~本当の始まり♂~
気が付いたら切り株に腰掛けながら、うたた寝をしてしまっていたようだ。しかし何だったんだあの夢は、女の自分が近づいてきて、それで・・・それで、それだけだったような気もするが・・・。
うわ、やっばい、もう陽が暮れてしまいそうだ。そう考えると寝てしまったのはほんの数分間だけだったという事になるのか?
自問自答しながら、ラルの待っている入り口に向かった。
待ち合わせの場所に行ったが、いっこうにラルの姿は現れない、何だ?先に帰ったのか?でもそんな薄情な奴ではないし、もしかして迷った、とか?いやそれも考えにくい何年もこの山で遊んだりしている、たまに抜けたところはあるが、基本的には頭も良い。おかしい、どうしたんだ?もしかして怪我したのか?動けないとか?
色々な想像が頭を駆け巡るがどれも良くないものばかりだ。どうする?少し探してみるか?親父に相談するか?ラルの家にも行かなくては・・・そうだ、まずはラルの家に行こう。居れば、それは良かったで終わるし、居なくても、この状況を伝える事ができるはずだ、そうすれば皆で探して早く見つかるかもしれない。
考えがまとまったら走り出していた。ラルの家はこの山からも近くで、走れば五分位の距離だった。
家の前まで着くと、家に明かりが灯っていた、迷わずドンドンと扉を叩いた。
『おばさん、おじさん、俺だ、ユウキだ。ラルは、ラルは帰ってませんか?』扉の前で、中に聞こえるように大きな声で叫んでいた。
ドアが恐るおそる開いた。
その扉から出て来たのはラルだった。
『おい、良かったー、帰ってるのならそう言えよ・・・な・・・?』ん?何かさっきまでのラルとは明らかに違うような。
『えっとぉ・・・あのぅラルではなくてハルと言うのですが、お家を間違えてるのではないですか?』あれ?でもこの人どっかで見たことあるような。
分かった、こいつ俺を驚かせるために、先に帰って女装して焦らして楽しんでんだな?『お、お前、俺がどれだけ心配したか分かってるのか?先に帰って、女みたいな格好でしかもこんな小細工までして・・・ん?』少しムカついたからやけにリアルな胸をわしづかんでみた。
『な、何するんですか!変態!』反射的に変態の顔面を殴り飛ばしてしまった。
ぐはぁ。まるで劇のような声でぶっ倒れた変態の顔を良く見たら、親友のイツキの顔に似ている事に気づいた。
『え?イツキ?じゃないよね?』声も似ているけれどもやっぱり少し違ったし。あれ?でもでもあれ?見れば見るほどにイツキに見えるし、違うようにも見える。
『どういうこと?』向こうもそれを察したようで。『あれ?ラルじゃない、でも顔はラルにそっくりなのにでもラルじゃないって事は・・・おおおおおおお!何て事を、スミマセンデシタごめんなさい!』立て続けに同じ意味の言葉で謝ってしまった。しかし、あれが本物のおっぱ・・・すみません!さらに心の中でも謝る。
『ま、まぁ何かそちらにも事情がおありの様なので今回は許しておいてあげます。こっちも思いっきりぶん殴ってしまったわけですし。すいません、痛くはありませんでしたか?』本当に心配だ明日になって頬骨が折れちゃったんだけどどうしてくれるの?とか来られても困ってしまうし。
『いや、大丈夫!これくらい親父によく殴られるし、余裕だ』マジで痛いけどこのお姉さん親父並みに強いな。
『あなた、どの辺に住んでいるの?』
『あぁ、すぐそこだよ。しかし、おかしいなこの家は間違いなく親友の家だと思ったんだけどなぁ・・・まぁ良いや。それじゃ、これだけ近ければまた会うだろうから、その時は見つけてもぶん殴らないでくれよな!結構痛かったから。またな!』そう言って家に帰った。
家に帰ってみると、外に女の人がいた。あれ?どうしたんだろう?っと思って近づいてみる。うん、知らない人だ。この辺りで知らない人に会うなんてさっきぶり、いや考えてみれば、さっきのはもう何年ぶりになるんだ?
『あのぉ、どうかしたんですか?』
『家の子が帰ってこないんですよ。山の畑にトマトを採りに行ったきり戻ってこないの、心配で外に出てみたんだけど』
心配そうに山のほうを見ながら話してくれた。
『そうなんですか?でも俺も山のほうに行って山菜採っていましたが、トマト畑に人はもう居なかったですよ?』うん帰り道の途中にある畑には誰も居なかった。他に畑なんかないもんな?
『そう、親切にありがとうね、きっと帰りの途中で道草くっているのね』といってこちらに振り返り、目線を合わせた。
『ん?』この人・・・
『あれ?』この子・・・
『いやいや』『いやいや』
『オ、オトウサマ?』『イツキ?』
『いやいや』『いやいや』
(でもこの顔・・・全然ごつさは無くなってるし、目も優しい感じだけど、親父の雰囲気が顔に出ている。)
(でもこの雰囲気ウチの子供と顔がそっくりで声も少し似ているような気がするのよねー)
『そ、そうだ、あなたのお家ってもしかして、ここだったりするのかしら?』もしそうなら、イツキが入れ替わっちゃったって事?
『そ、そうだよ、おばさんももしかしてお家ここ?』何だこの得たいの知れない緊張感は!誰かここで緊張のほぐれる曲を流してぇー。
そんなことを思っていると、通りすがりの酔っ払いが『タクナマタタ♪タクナマタタ♪心配ないさー♪』とちょうど良く歌ってくれた。
『そ、そう、ここは私の家で、娘と二人暮らし』
なんの効果も発揮してねーじゃんか!酔っ払いに八つ当たりをしたい所だがここはそんな場面では、ない。
『へ、へぇ奇遇ですね、俺もこの家で親父と二人暮らし』
『私はここに暮らし始めて、もう二十五年よ!』
『俺は生まれてこのかた十六年この家以外は住んだ事が無いんだよ!』
『嘘をおっしゃいな!』
『そっちだろ!』
ふぅーっと呼吸を落ち着かせて『まぁ、良いわ、とにかく入りなさい。風邪を引くわよ』もしかしたら、イツキが男の子になっちゃったとか?でもそうとしか考えられない位に似ているし、山から来たって言うし。
でも一応捜索願いを出しておこうかしら?
『私、娘が心配だから警察に行って来るけど、お風呂使って良いし、ご飯できてるから食べちゃってて良いから。あなたの家ならお風呂の場所とか使い方大丈夫よね?』
『あ、あぁありがとう』
なにいきなり可愛くなっちゃてんのかしらねこの子は?
ただいまーと言って帰ってきてドアを開けると、男の子は出て行った時のままただ立ったままだった。
『どうしたの?そんな、お風呂に入って暖まらないと冷たくなっちゃうって、もうこんなに冷たくして、風邪引きたいの?ご飯だって食べて良いって言ったのに』
だって・・・おれの・・・
『何?どうしたの?』
『俺、家に入れば親父が居て、飯作ってくれてて、見た目は、見た目は悪いしやたらと多い量のおかずがあって、それで・・・この家に入ったら全部一緒で本当に帰ってきたような気がしたんだ、でも時間が経つにつれて・・・周りを、細かいところに目が行くようになっちゃって。そしたらやっぱりここは俺の家じゃ無いんだって。そう考えたら、じゃあ俺の親父はどこに行っちゃったのかとか心配になっちゃって俺・・・どうしたらいいか分からなくて、寂しくて、体が動かなくなっちったよ・・・ねぇ、俺どうしたら良いのか・・・』
少し間を置いて右の頬に衝撃が走ったが冷えてしびれているので痛くない。ビンタされたのだと気づいたときには思いっきり抱きしめられていた。とても暖かく包み込まれた。
『ふざけないでよ!私だって私の娘がどっかに行っちゃって帰ってこなかったらって心配で、どうしようもないわ。あなただけが寂しい思いをしているなんて思っちゃダメ、私だって寂しいの。・・・そう思うと、少し寂しさ紛れるでしょう。でもね、そのまま紛らせ続けるものじゃないの、あなたは、これからとても大変な思いをすると思うわ。だからこんな事で挫けてちゃダメなのよ。あなたは私の家で一緒に住みなさい、本当の自分の家だと思って良いわ、私がおいしいご飯作ってあげるし、暖かいお風呂も沸かしてあげるわ。だからしっかりしなさい。あなたはもう私の二人目の子供なんだから!』考えるよりも先に体と言葉が出ていた。それはどこかしらイツキと繋がっているそんな気がした、というより確信した。
その日、俺は何年ぶりかに泣いた、ワーワーと赤ん坊のように泣いた。
読んで頂いてありがとうございます。とりあえず、物語がやっと動き出した感じになってきました。まだまだ先は長そうなのですが、頑張って書いていきます。感想や、ここ間違ってるとかもっとこうしたらとかあったら、ぜひよろしくお願いします。




