少女を中心とする話1
17.少女を中心とする話1
『委員長、放課後ちょっと手伝って欲しいから職員室に来てねー!ヨロシクぅ』チーリ先生は自分の用件だけ話すと、こちらには有無を言わせずどこかに行ってしまう。
はぁ、何をするかは分からないが、どうせ面倒なことなんだろう。それより面倒なのは部長に一言今日の部活に遅れるか出れないかの報告をしに行かなければならないということだ。
仕方なく、隣のクラスへ足を運び部長を見つけて呼びかけようとした時見つかりたくない奴に見つかった。
『やあ、こんにちわ。どうしたんだい?こんな時間にこんな場所で』部長に向けていた視線を遮る様に俺の前に出てきたのは、同じ部活動仲間のリンだった。
返事を返すのが少し遅れると、勝手に話を続ける『もしかして、部長に用事だったかな?でもダメだよキミは部活動の時以外では部長に近づいてはいけない事になっているんだ。引き返してくれたまえ』
何様だおいっと思いつつも下手に出る『やあ確か君は違うクラスなんじゃないかな?何でまた少しの休み時間にも他の教室にいるんだ?邪魔だからカエッテロ!』後半は気持ちが抑えられていない気もするが気のせい。
『私は部長のおそばにいて、お守りしなければならないのです。貴様のような虫がウロチョロしないようにな!』下にずれたメガネを戻しながら睨んでくる。
『何が守っているだよ、教室の外からそっと覗いているだけだろ、大体あの女が守られるような弱い立場の人間に見えるか?逆だろ!弱い立場の人間を従え統率し、酷使した挙句に使えないと判断するなりポイッと捨てちまう鬼畜騎士様だろ』この教室の前を通るたびにコイツがコソコソ教室の中を覗いてるもんだから、この廊下すごーく通りづらい。
『ば、ばかやろう!部長に従う事こそが崇高な正しい行動と言うものだろう。そんな事さえ理解できていないようではこの先剣術部としてやっていけないぞ!クビだー!』
もうこいつ終わってる。あきれたその時リンの後ろから恐ろしいほどに冷たく透き通る声がした。
『貴方達・・・そんなに斬られたいの?』
即答で『ふざけんな!』『はい!』
お前マジ斬られろ!
『騒がしい、うるさい、目障りだ、鬼畜じゃない、お前が家畜なだけだ。それとリン、勝手に家畜をクビにしてはだめだろう?めっ!』おい、何だ最後鳥肌立ったぞ。俺だけ怒られた感じになっているし。それとそこのメガネ何ぽわーっと顔赤くしてる!
『家畜じゃないから!まぁとにかく用件をシノに伝えに来たんだ』
『な、お、お前今、名前で呼んだな!』
『え?怒るの?嫌われてるのは分かるけどそこまで!?』
『別に嫌ではないがいきなりでビックリしただけだ。で、何だ用件は、早く言え』
そんなやり取りをしてれば、割り込んできそうなリンはまだ顔を赤くして異次元へとトリップしている。
『あぁ、そうだな。部活動なんだが、担任の先生に放課後呼び出されていて、もしかしたら部活動に遅れるか、最悪行けないことになるかもしれない』
『分かったそれだけか?なら帰れ。ついでにコイツも帰しておいてくれ』そういってシノは自分の机に帰って行った。俺は当然リンはそのまま放置して自分のクラスへ戻っていった。
その放課後言われたとおりに職員室へ行った。ハルと一緒に行こうとしたのだが、気づいたらもういなくなっていた。先生の言いつけを無視するような奴ではないが居ないのなら仕方が無いので一人で行った。
やはりというか、案の定職員室にチーリ先生の姿は無い。またあそこかと思い、職員室のある校舎を一番上まで上り屋上へ行く。
扉を開けるとまず、タバコの匂いそして煙それから声が飛んできた。
『こらー、ここは生徒の立ち入りは禁止してい・・・ってユウキか何してるのかな?所で』
『何しているって、先生が放課後呼んだんでしょう?もう歳っすか?』少しムッとしたので軽い冗談を言った。
気づいたら左目の眼球のすぐそこ、まばたきをしたら睫毛が触れてしまう距離に吸い途中のタバコの先端があった。
『歳が・・・何だって?あぁ?焼くぞ?』
コエーよ!キャラ変わりすぎでしょー!距離を取るために後ろに下がろうとするが足がもつれて尻餅をついてしまう。
『なななんでもないいっす!』
『いいっす?何が良いのかなー?』徐々に言葉が戻ってくるけど目が目が変わってないって!殺されることを意識してしまう。
『すいません、なんでもないです』
『言葉には気をつけようね?取り返しのつかない事ってあるからさー、目って何で二つあるか知ってるかな?それは一つなくなっても何とかなるように、だよ?試験に出すから覚えてね?』
『そんな物騒な問題出さないで下さいよ』
フフフ『まぁ分かればいいんだけどねー、えっとぉ放課後呼び出した理由だっけ?そういえば先にもうハルに伝えたけど?』なに?それでか?それで先に居なくなったのか?
『ちなみに、用件ってどんなことなんですか?』
『んー確か・・・中等学校の女の子が飛び級で高等学校にくるって言う事だったからその案内をしてもらうんだったかなー?まぁ良いじゃないハルちゃんに任せれば問題なし!』
この街の学校に関していうと学業のレベルが到達していれば飛び級は大いに有り得る。有り得るが、飛び級用のテストを受けて良い点数をしっかり取らなければいけないしそんなにメリットが無いので何か理由というか動機がしっかり無ければそうそうしない。というのも進学は意思があれば基本的にどんなに頭が悪くても出来るのだ。働きたければ働く事も当然可能だ。学校の中でも本当に成績が優秀であれば特別クラスに入ることも可能で、全校通しても数人しか居ないが一応ある。そういった人たちが後々にこの街で役所仕事に着くことが多い。ちなみに成績だけならハルも特別クラスに入るだけの力はあるらしいが、役所の仕事には興味が無いらしく特別クラスには入ってないらしい。
『そうですか、一応僕も中等学校行ってみます。問題はないと思いますが、なんか気になるんで』なんでハルは俺に何も言わずに一人で行ったんだ?
『おやー?まさか年下がお好みなのかなー?先生は悲しいョ、どこで教育を間違えたんだろう・・・』
『何言ってるんですか!先生だって見た目はとても可愛いじゃないですか!』本心だ、身体は小さくて綺麗な赤くて長い髪少し童顔でキャラに合っていると思っている。
『見た目は・・・ね?まぁ言いや、行くなら早くしたほうがいいぞ?授業終わってすぐに出たならもう中等学校には着いている頃だと思うからね』
『分かりました、ありがとうございます、失礼します』さて行くか、小走りで学校を後にする。
最初に告白してしまうが、その日結局俺はハルを見つけることは出来なかった。それだけではなく、その日見学に来る予定だった少女も結局来なかったという。
中等学校と高等学校をその日何往復かして暗くなってから戻ってチーリ先生に確認したところ、もう今日は来れなくなったという連絡が入っていたらしい。まずホッとした、というのもやはり最初の一往復目はどんな少女なのかと楽しみにしていたが、二往復、三往復となってくるとさすがに心配になる。遠回りしたのかと思って少し回り道をしてみたりもしたがいなかったので心配は募る。そしてさして次に連絡貰ったならすぐに教えてくれても良いのにぃー確認しに何回か来たじゃないか!と思い少しムッとした。先生曰く、『少し前に連絡があったばっかりなんだよ?本当だよ?』という事だが、俺は先生の机を見た、時にメモがあったことに気が付いた。それは紛れも無く探していた少女からの連絡だ。丁寧に時刻も書いてある。俺が一回目出て行ったすぐ後だった。
そんなこんなで見つけられなかった訳で、家に帰る途中ハルの家に寄ってみた。
こんばんわーと言いながらノックをする。ハルは居ますかー?と言いながらさらにノックをする。
ハルが顔を出した。『あ、ユウキどうしたの?』顔だけではなく外に出てきた。もう制服は着替えて白地のワンピースに薄いピンクのカーディガンを羽織って髪は一つに結んで背中ではなく胸の前に髪を垂らしている。
『お、おう、どうしたってチーリ先生に頼まれた事を一人でやっちゃうし、後を追ってもなかなか居なくってどうしたんだろうって思ってな』
『ん?心配したの?』
『そ、そういうわけじゃねーけどさ、勝手にされるとなんかな・・・な』なんなんだよ、別にそんなつもりで・・・ってどんなつもりだったんだ俺は?
『何だ心配してくれたんじゃないん、だね。・・・でもごめんね、確かに勝手でした』ユウキに向き直って頭を下げる。
俺は驚いていた、頭を下げて謝られた事もそうだったが、それよりも顔を上げて目を合わせた時ハルが泣いているそんな風に見えたからだ。言葉が出ないで驚いていると。じゃあ、また明日ね、寝坊しないでね。と言って家の中に帰って行った。どこか逃げていったようにも見えたが俺には何も何からハルが逃げていたのかまるで想像ができなかった。
次の日ハルは変わらずに迎えに来てくれて変わらず一緒に登校した。頭の中であの時、泣きそうな顔のハルが何度も蘇る。
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