3. 約束。
図書館からの帰り道。私は仁崎さんのことを考えていた。
図書館の子供用の広場で、子供達に囲まれて楽しそうに読み聞かせをしている仁崎さん。
私を呼び止めお話をしてくれた。明日も来て欲しいと。
「明日。明日。図書館に・・・」
仁崎さんがいる。
そう思うだけで、明日が楽しみになった。
“you got mail”
ケータイが、なっている。
ポケットから取り出して確かめる。
「あれっ、宮野?」
桜美宮野はわたしの友人。あのバレーに誘ってくれた私の親友とも言える人。
高校時代からの友達。
「どうしたのかな・・・」
メールを見る。
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遅いっ!なにやってんの?
待ち合わせ時間、とっくに過ぎてるんだけど!
あと10分で来ないと、帰るよ!
宮野
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「あちゃ~。」
忘れてた。完全に忘れてた。
「あと10分。」
今日は一緒に買い物に行く予定だった。
二人とも休みなのは珍しく、最近のストレス発散も兼ねて出かけるつもりっだった。
ケータイの時計を見る。
「9:30」
待ち合わせ時刻は9:00。
「やばっ」
私はそのまま、待ち合わせのカフェへ向かった。
「ギリギリ間に合うかな・・・」
私は急いだ。なれない踵のある靴を履いているせいで
あまり走れない。
「もっと早くにメールちょうだいよ~!」
図書館からなら歩いて5分だった。
今はもう、カフェから逆方向の私の家に帰る途中で
5分は歩いていた。
「あぁもうっ!」
私は人と人のあいだをするすると抜けた。
でも、信号機だけは私を通らせてくれなかった。
カフェはもう目の前。でも、ここの信号機は長い。
足をバタバタさせる。
周りの人が、私を変な人でも見るかのような目で見てきた。
「・・・・・・。」
恥ずかしかった。子供までもが、私を見ていた。
信号機が変わった。
私はまた、急いで横断歩道を通る。
「いたっ。」
私は、いそいでカフェに入り宮野のもとへ行った。
「・・・ごめんなさい。」
「ほら。」
宮野のケータイを見せられる。シンプルで、綺麗で、
画面も埃がついていなく大切に使っているのがわかった。
「何?」
「時計見てみな。」
時計をじっと見る。9:39・・・
9:40。
39から、40に変わる瞬間を私は見た。
「やった~間に合った!10分!」
はぁ~と、ため息をつき私を見る宮野。
「もう、美代は忘れん坊だね~。今回も忘れてたでしょ。」
「毎回すみません。宮野さん。」
「まぁ、いいけど。」
毎回だしね~なれたよ。と、言われてしまった。
「座って、なにか頼む?」
「うん。」
メニュー表を開く。
開くけれどいつも私の飲むものは決まっている。
「じゃあ、カフェオレ。」
「いつもだねぇ~」
「だって美味しいもん!あの甘さ。少し苦い感じ。まろやかさ。たまらない!」
宮野も飲んだらいいのに・・・というと、宮野は
「私は、コーヒーがいいの。」
といった。
そう言い合っていたうちに頼んだ飲み物が来た。
コップの、取っ手に指をかけ一口。
「ふぅ~」
やっぱりコーヒーだなぁ~
宮野はつぶやいた。
「そうだ、いまなにかやってることあるの?」
たいてい、この流れは私の挑戦を聞いている。
「ないかな~」
私がそう言うと宮野は『それならっ』と私にコーヒーを近づけた。
「コーヒー。挑戦してみない?」
私は過去にコーヒーをのんだことがある。
その時飲んだコーヒーは私には味のないものに思えた。
「・・・おいしい?」
「もちろん。」
私が美味しいって言うんだから。
でも。というと、宮野はコーヒーを机に置いた。
「挑戦心はどこいった?」
「うっ」
私は、その言葉に弱い。自分が誰よりも挑戦心が強いと思っているだけに。
「・・・飲んでみる。」
私は、コップを口に近づけ一口のんだ。
「・・・にがっ。」
まず一言目。
宮野はえぇ~といった。
「後味は?」
「苦い。」
「甘党なんだね。でも、何口か飲んでみて。」
宮野が言うままに、何口か飲んでみる。でも苦い。
そして・・・・少しずつあじが一定過ぎて、飽きてきた。
「わたし、あんまり量いらないかも・・・」
「そっち~?」
はぁ~むりかぁ・・・と完全に諦めた。
「ほんとに美代って・・・飽きないで今も続けていることとか、食べてるものとかないの?」
よく考えてみなよ。
「そういわれても・・・ないものはない。」
「はぁ~そうなの・・・」
今日のこの数分で宮野はどれだけため息をついていたのだろうか。
それから少し話をしたあとに、店から出た。
「ねぇ。美代は、好きな人いないの?」
歩きながら宮野は私に聞いてきた。
「いないよ~別に。」
「じゃぁ~気になる人は?」
「いないなぁ~」
つまんない・・・
宮野は、そのまま話を続けた。
「昔から思ってたんだけど・・・美代って、鈍いよね。」
「そうかなぁ~」
「うん。めっちゃ鈍い。」
そんなにはっきり言わなくてもいいじゃん・・・
「そんな美代に、これを貸してあげよう。」
いきなりカバンから取り出したのは、恋愛漫画だった。
「なんで、恋愛もの?」
「鈍いから。」
えぇ~。そこまで・・・・
とにかく私はその漫画を受け取った。
「また見てみる。」
「今日家に帰ったら見てね。」
「えぇ・・・家に帰ってから・・・」
「うん、明日には返してね。」
「明日は、仕事。午後から別の約束で図書館。無理。」
そして、仁崎さんに会う。読み聞かせを聞く。
「図書館?珍しい・・・」
私は、ほとんど図書館にいかないのを宮野は知っている。
その分、図書館でというのは気になったらしい。
「なんで図書館なの?」
「そこで働いている人だから。」
へぇ~そんな友達いたっけ?
そんなつぶやきを聞いた。私の友人関係を把握してるのか?!
「なんでそんなつぶやきになんのっ!」
「だって。・・・」
高校からの友達とかで図書館で働いている人なんていないし・・・
美代の仕事は、そうゆう関係じゃ全くないし・・・
ということらしい。
「私も行っていい?本見たいし。それに・・・」
宮野は、その私の友人に会ってみたいという。
「男?女?」
「男の人。」
沈黙。
「えっ~ほんとは気になる人もいないんじゃないの?」
「いないよ~」
両肩を持たれてゆっさゆっさと、ゆられる。
「落ち着いてよ・・・」
私はその人との出会いというのか、約束をした時までの経緯を話した。
「美代って・・・・・・・」
宮野は、頭を2・3回左右に振ってから
「明日っ!私もホントに行くからっ!」
「う・・・うん」
私たちはいつの間にか目的地の、ショッピングモールについていた。
1・2話、見ていただいた方。ありがとうございます。
3話です。