ボス戦
追跡してくるオークウルフに追いつかれないようにする為、俺は時折魔法攻撃で牽制しつつ走る。
……あ、そういえば「催眠魔法」を取っていた。
直接攻撃した方が手っ取り早いから、あまり使ってこなかったが、この機会に試してみるか。
えーい、震えて眠れ!
「グウ……!?」
お、オークウルフがふらついて──あ、駄目だ。
すぐに持ち直した。
やっぱり魔法の耐性が高いな。
ここは光属性の魔法でも撃ち込んでおこう。
ダメージは通らなくても、眩しさには怯むはずだ。
そんな感じで、たまに足止め目的の攻撃をしつつ、とにかく走る。
そして走りつつ、アイ様に貰ったポイントの使い道を考えた。
戦闘技術系や魔法系のスキルは、どの程度オークウルフに通用するのか分からないので却下。
実際、手に入れたばかりのスキルは、即使いこなせるのかは怪しいからなぁ……。
ある程度練習する余裕がある場合なら、話は違ったのだが……。
……となると、「毒無効」みたいに入手後すぐに効果を発揮するスキルか、攻撃力の高い武器か……。
しかし武器も、どの程度の強さなのかは分からない物が多い。
まあ、高いポイントの物は、今持っているナイフよりはマシなのだろうけど、まずはスキルを取って、残りで武器を手に入れるようにした方がいいかな……。
う~ん、何がいいのだろう?
走りながらリストを確認するのは大変だが、必要な条件で検索をかければ……よし、かなり絞れた。
え~と、これがいいな──って、うわぁ、オークウルフが追いついてきたっ!!
さっさとスキルと武器を取っておこう。
それに……オークウルフを迎え撃つのに、丁度いい狭さの通路にも辿り着くことができた。
よし、ここでやるか……!
俺はオークウルフと対峙した。
が、それはほんの数秒の間で、すぐに真横に向けて走り出す。
「グゥ……!?」
オークウルフは困惑の声を上げたようだった。
俺が向かった先には、ダンジョンの壁しかないからな。
だけどそこは垂直でもなければ、足掛かりがまったくないほどツルツルでもない。
緩やかな斜面の部分もあれば、凹凸もある。
それを利用すれば壁面を走ることも、そこを足場にしてジャンプすることも可能だ。
これくらいなら獣人の身体能力を駆使すれば難しくないが、「身体能力強化」を併用すれば更に超人的な動きも可能だった。
だから──、
「ガッ!?」
オークウルフの死角を突いて、頭上などから攻撃することができる。
しかも俺の攻撃は、オークウルフの分厚い毛皮を確実に斬り裂いていた。
ポイントで新しく手に入れたコンバットナイフの切れ味が鋭いというのもあるが、それ以上に新たなスキル「防御貫通」の効果が大きいのだろう。
このスキルはおそらく、問答無用で相手の防御力を無視して攻撃を通すことができる……ほど、便利なものではない。
そんなことが可能なら、俺のコンバットナイフはオークウルフの首を切断することもできていたはずだ。
しかし実際に可能だったのは、オークウルフの皮膚に10cmほどの傷を作っただけ──致命傷には程遠い。
それでもスキルがある程度、オークウルフの防御力を弱めたからこその結果だと思う。
そして傷をつけることが可能ならば、攻撃を繰り返すことで出血多量による撃破も狙える。
……まあオークウルフが、俺みたいに「HP・MP超回復」を持っていたら無理だろうけれど……。
とにかくオークウルフが倒れるまで、攻撃を繰り返す。
しかし壁を走ったり跳んだりするのは、なかなか体力を使うぞ……!?
これは早めに倒さないと、疲れで動きが鈍って、こちらが不利になってしまいそうだ。
というか、オークウルフが痛みで無茶苦茶に暴れている。
その動きは予測が難しく、動きが制限される空中からの攻撃をこれ以上続けるのは、少し危険なのかもしれない。
意図しないオークウルフの動きが、偶然俺に命中してしまうこともあり得る。
ならば「見切り」を駆使して、正面から攻めるか。
そろそろ決定打を与えたいところだし。
……よし、オークウルフは暴れているけど、じっくりと動きを見極めればいけそうだ。
オークウルフが振り回した腕をかいくぐり、わき腹にコンバットナイフを突き立てようとしたその瞬間──、
「!?」
普通のオークには存在しなかった狼のような尻尾が、俺に向かって振られた。
それが俺の顔面に直撃する。
くっ、オークの尻尾は細くてそんなに長くもないので、それならば直撃を受けても大したことは無かった。
しかし、オークウルフの魔法すらも弾く獣毛──その塊ともいえる尻尾は、想像以上に重かった。
なんというか、タワシをぶつけられたかのような衝撃だ。
結果、俺は大きくよろめいてしまう。
勿論それは、致命的な隙に繋がりかねない。
事実オークウルフは今が反撃のチャンスとばかりに、俺に噛みつこうとしているのか、大きく口を開いて迫ってきた。
「させるかっ!!」
俺は電撃の魔法を発動させる。
本来ならオークウルフには通用しないが、今は全身に傷があるので、そこから電流が体内へと通るはずだ。
ただし、至近距離であるが故に、俺自身にも電流は襲い掛かる。
一応「魔法抵抗力強化」のスキルを取ってあるので、致命傷にはならないだろうが……でも痛いというか痺れるというか、今までに経験したことが無い衝撃が俺を襲った。
「ぐうっ……!」
俺は床に倒れ込んだ。
だが、同時にオークウルフも、電流によるダメージで倒れている。
これは先に立ち上がった方が、相手にトドメを刺す権利を手に入れるってことになるのか……!
しかし残念なことに、先に起き上がろうとしているのはオークウルフの方だった。
くっ、もう一度電流を流すか!?
だけど今度は相手も警戒しているようだし、簡単には当たりそうにない。
それでも時間を稼げば、俺のHPは回復する、体勢を整えることは可能だ。
どうにかしてオークウルフの動きを牽制し──ている暇は、今この瞬間に無くなった。
「なっ!?」
何故ならば、唐突に予想外の方向から横やりが入ったからだ。
何事!?
フライドチキンとチャーハンの素で炊き込みご飯を作ってみたけど、割とチャーハンっぽい物が完成しました。米を炊く段階で油分を加えると、パラパラになります。




