なんだこいつ
俺は狐耳と九尾を持った女神の像へ、祈りを捧げてみた。
すると──、
「おおっ!?」
像がぼんやりと光を放ち始めた。
これは神様の誰かに、チャンネルが開いたか!?
『あ……あ……ナオ……ちゃ……聞こ……る?』
お、途切れ途切れだけど、誰かの声が像から聞こえる!!
ただ、受信状況はあまり良くないようで、いつ通じなくなってもおかしくない雰囲気だ。
「はい、聞こえていますよ!」
『お……や……た!』
この声は……配信の時に、脳内で聞こえてくるリスナーの誰かの声として聞いたことがあるな。
え~と、確か名前は──、
『わた……アイ……よ』
そう、アイ様だったっけ。
獣人の神様だということで、記憶している。
今や俺も獣人だからな。
「ボクは今、コボルト達の村にあった神像に語りかけています。
場所は分かりますか!?」
『おk……とりあ……ポイン……』
えっ、ボイン!?
いや、違うな。
今ポイントって言ったか!?
どれ……おおっ!?
確認したら、10万近くポイント増えてる。
緊急で付与してくれたんだな。
「ありがとうございます!
それと、ダンジョン内のコボルト村から、どう移動すれば脱出できますか?」
『ガピ……かゆ……うま……』
なんて!?
ただでさえ聞き取りにくかったのに、更に分かりにくくなったぞ!?
「あの……!!」
『ザー……ザー……』
ああ……もう雑音しか聞こえない。
電波状態の悪いラジオかよ……。
って──、
「やばっ、気付かれた!!」
何かの気配が近づいてくる。
神像が光っていたし音も発していたから、さすがにオーク達に気付かれたか。
これはさっさと撤退した方がいいな……。
でもその前に神像を、「アイテムボックス」に回収して……と。
よし、この像があれば、後で再度交信を試みることができる。
回収が終わったら、全速力で逃走だっ!!。
レベルアップした今の俺の脚力なら、狼でもギリギリ追いつけないだろう。
しかし問題なく逃げ切れる……と、思っていたのに、俺に追いついてくる気配があった。
なんかオークっぽい気配だが、彼らよりも存在感がある。
これはより高位の魔物か!?
……どうやら逃げ切れそうにないので、迎え撃つことにする。
俺は立ち止まって振り返り、接近してくる存在を待った。
「うぉ……!」
近づいてきたそいつは、シルエットだけならばオークそのものだった。
いや、オークよりもちょっと大きいけど、2本足で直立する豚のような──いや、豚か……これ?
全身が黒い剛毛に覆われているから、どちらかというと猪っぽく見える。
だが、口にはイノシシのような牙以外にも、鋭い犬歯が見えた。
まるで狼のような……。
いや……まさか、そうなのか……?
物語などに出てくるオークは、人間とか他種族の女性を襲って繁殖するという。
そしてここのオークも、俺を見て性的に興奮したかのような反応を示した者もいたから、同じなのだろう。
つまりこいつらはオーク同士だけではなく、他種族とも交配が可能なのだ。
おそらくこいつはオークと、彼らが飼育していると思われる狼との間に生まれた、特殊な個体なのではなかろうか?
だからオークと狼、両方の特徴を持っている。
って、見境なしかよ!?
「ウォォォォォォォォォォォォーっ!!」
……やっぱり。
その遠吠えも、狼のそれだ。
オークウルフとでも呼べばいいのか。
むう……かなり強そうな雰囲気。
ただ、誕生する確率が低いのか、追いついてきたのは、こいつ1匹だけだ……。
他に同種はいないのかもしれない。
……1匹だけなら、なんとかなるか?
それじゃあセオリー通りに、水属性魔法で作った水球で顔を覆って、窒息を狙ってみよう。
「ガウオっ!!」
げっ、一声吠えただけで水球を消し飛ばした。
それなら、別の魔法で──。
「電撃!!」
俺はオークウルフへ向けて電流を放つが、それは毛皮に阻まれて、さほど効果を現さなかった。
ちょっと怯ませることができた程度だ。
こいつ……!!
狼なら2発くらいで倒せるのに、なんて魔法抵抗力の高さだ!?
こりゃ、魔法で倒すのは無理だな……。
とはいえ、俺が装備しているナイフでは、毛皮を貫通できるとは思えない。
さっき貰ったポイントで、何かスキルを取るか……?
だけど、何がいいのか、すぐには決められないぞ……!
「くっ……!」
俺は時間を稼ぐ為に、オークウルフに背を向けて走り出した。
すぐに追いつかれると思うが、せめて戦いやすい場所まで誘導したいな……。
たぶんこの広間だと、俺の能力は活かしきれないだろうし。
もっと狭い所がいい。
その場所へ向かって、俺は全力で走った。
読んでいただきありがとうございました。
たまにホームセンターから値引きされた多肉植物を買うのですが、3000円くらいのが500円とかになっていてお得。……のようでいて、既に手遅れで後は狩れるか腐るだけの状態のもあるので、ちょっとした賭けではあります。復活に成功する場合もありますが、駄目になって植木鉢だけ残るという悲しい結末になることもありますねぇ……。




