高い所から降りられない猫
「う……む……?」
ダンジョンで初めて迎える朝。
朝……なのか?
周囲は洞窟なので、今が昼なのか、それとも夜なのか分からないが……。
体内時計があるから、なんとなく朝かな?……って感じ。
ともかく俺は、毛布の中から起き上がる。
いざという時に備えて、野営ができる道具を用意しておいて良かった。
で、俺が寝床にしていたのは、このダンジョンの天井付近に壁から突き出した岩の上だ。
この岩までは高さが7mほどあるが、今の俺なら簡単に駆け上ることができる。
ここならば空を飛ぶか、壁を這いずり回るような魔物以外からの襲撃は防げるぞ。
つまり、条件付きの安全地帯だと言える。
しかも平らな形状をしているので、眠りやすかった。
それでもダンジョン内で眠るのは不安はあるけど、「気配感知」があるから敵が近づけば反応できる……はず。
いや、眠っている時の自分なんて、客観的には分からんし、絶対安全とは言えない。
だが、だからこそ「超ショートスリーパー」のスキルを取ったのだ。
これで無防備な睡眠時間を、劇的に短縮できるぞ。
実際、たぶん1時間も眠っていないはずだが、10時間は眠ったかのような満足感がある。
取得ポイントは高かったが、取っておいて良かった。
ともかく、この岩棚をベースキャンプにして、探索の範囲を広げようかな?
「マグロうみゃ~」
で、起床した俺は、アイテムボックスに保存していた寿司で、ちょっと豪勢な朝食だ。
猫耳が生えて以来、本当に魚が美味しい。
しかしこの寿司も、無限にストックがある訳ではない。
魚が食べられなくなるような事態は、あまり考えたくないな……。
考えただけで、身体が震えてきそうだ……!
そうなる前に、このダンジョンから脱出しなければ……。
しかし問題がある。
なんか下の方で、魔物が沢山うろついているんだよなぁ。
その数、10匹以上。
俺が目覚めた時には、既にこうなっていた。
ここまでは登ってこられないようなので放置していたが、そろそろ現実と向き合わなければならない。
なんでバレた!?
いびきがうるさかった……!?
いや、下にいるのは狼型の魔物だ。
臭いを辿られたか……?
くっ……「無臭」のスキルも、取得しておくべきだった。
今取ったが、もう遅いか……。
さて……下にいる連中をどうしようかな……。
「フシャーっ!!」
……駄目か。
威嚇しても逃げてくれないし、戦うしかないようだ。
一気に火属性魔法で燃やしたいけど、煙にやられてこっちまでやられそうだな……。
しかし他の属性魔法では、下にいる連中を一網打尽にできるほどの術は持っていない……。
岩や氷のような個体生み出す魔法は魔力を大量に使うし、空気の流れがあまり無いダンジョン内だと、風属性魔法はちょっと弱いからなぁ。
時間をかければ個別撃破はできるだろうけど、魔物の死体が増えると、他の魔物を呼び寄せる可能性もあるから、あまり時間をかけるのもまずいような気がする。
……あ、水属性魔法で作った水を撒いて……と。
狼達が冷たい水を浴びて、「キャイン」と悲鳴を上げている。
だけど、これは攻撃ですらない。
本命はこれからだ。
「これでどうだ!」
風属性魔法で生み出した電流を、濡れた床に向けて流す。
本来なら単体攻撃の魔法だが、濡れたもの全体に電気が流れて、狼達も一網打尽にでき……ないな。
一撃だけでは威力が分散して、威力が足りない。
だけどそれならば、何回でも繰り返すだけだ。
俺のMPは30秒に1Pくらい回復するから、タイミングと出力さえ間違えなければ、MP切れを起こすことは無い。
だから狼達が電流のダメージから立ち直る前に再び電流を流し、それを繰り返すことでゲームで言うところのハメ技みたいな状態に陥れることができた。
相手が死ぬまで無限に。
まあ結果として、電流による攻撃を30回くらい繰り返すことになったが……。
それくらい繰り返して、ようやく狼達は沈黙してくれた。
やべぇ……あの狼達はHPか魔法抵抗力のどちらかが、無茶苦茶高かったんじゃ……。
俺に「HP・MP超回復」があったからどうにかなったが、本来ならこんなに連続して魔法なんて使えないから、こっちの方が詰んでいた可能性が高いぞ……。
普通に戦った場合、一対一ならともかく、集団で襲われたら逃げるしかないな……。
もっと強い全体攻撃魔法を練習しておいた方が良さそうだ。
あ……でも、そんな強い狼達を倒したおかげか、HPやMPが伸びている。
このダンジョンに入った頃は20くらいだったのが、今は60以上。
レベルアップしたということかな。
いや、ステータスにレベルの表記は無いけど、成長自体は確実にしているようだ。
よし、このダンジョンで生き抜く希望が見えてきたぞ。
さて、狼達の死体をアイテムボックスに収納して、探索を再開するか。
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酢と醤油とみりんで鶏肉を炒めたら美味しかったです。




