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ダンジョンの奥へと

「さて、今日はダンジョンの少し奥へと行ってみたいと思います」


 ●:がんばえ~


 ●:敵も強くなるだろうから、気をつけてな


 今日も配信しつつ、ダンジョンの探索を行う。

 ちなみにこのダンジョンは、web小説によくあるように階段があって、階層に分かれている……というようなことはない。

 ……たぶん。


 ダンジョンは広大で未探索な部分も多い為、中には例外はあるかもしれないけど、基本的には道が横に分岐しているだけで、階層には分かれていないらしい。

 ただし緩やかに傾斜はついているので、地中深くまで伸びてはいるそうだ。

 そしてその先に、異世界へと続く扉があるのだとか。


 だけど別の何処かへと、繋がっている可能性もある……らしい。

 少なくとも、分岐した道の先に何があるのか、そのすべてが解明されている訳ではないようだ。


 まあ、これから俺が行くのは、入り口から1kmも進まない、まだまだ浅い所だ。

 異世界に到達する為には、数百km以上は進む必要があるらしいので、本当にまだまだ入り口のところである。


「あ……近づいている気配がありますね」


 ●:完全に「気配感知」は習得したようだね


 ●:何が近づいてきているのか分かる?


「気配ではちょっと……。

 あ、でも足音は2足歩行っぽいから、スライムや小猪ではない……?」


 ●:ああ、聴覚の方が鋭い感じだね


「あ……見えてきた」


 ダンジョンの暗がりから出てきたのは、幼児くらいの背丈をした人間に似ている生物だった。

 まあ、顔付や皮膚の感じは人間というよりも、猿と爬虫類が混じっているかのような感じで、醜いという印象が強い。

 そんな存在が、錆びて刃こぼれがしているとはいえ、ナイフを持っているのだから、なかなか怖いな……。


 ●:ゴブリンだな


 ●:ゴブー!


 ●ナウーリャ:古典的なコボルトの方が近くないですか?

 私が知ってるゴブリンは、もっと可愛いです


 ●アイ:元々は爬虫類タイプだったのに、いつの間にか犬型のイメージが定着したよね


 コボルトってそうなんだ……。

 まあ、こいつはコボルトではなく、ゴブリンらしいけど。


「人型はなんかやりにくいですねぇ……。

 ここはやっぱり魔法で……!」


 ただ、火を使うと焼死体がグロくなりそうなので、地属性魔法で尖った石を生み出し、それをゴブリンにぶつける。

 それが上手いことゴブリンの胸に突き刺さり、その息の根を止めた。


「うへぇ……流血が……」


 人型からの流血は、どうしても気分が悪くなるね……。


 ●:これから、解体もあるんですけど


 ●:覚悟を決めるんだ


「うう……それでは、魔石を摘出しますね……」


 人型の解体は、人間のそれをしているような気分になるんだよなぁ……。

 幸いにもゴブリンは、人型ではあるけど、人間には似ていないから、なんとか割り切れる。


「わ……スライムとかよりも、魔石が大きいですね。

 でも、解体の手間を考えると、効率はそんなに良くないかも……。

 錆びたナイフも、そんなに高額では売れないだろうし……」


 ●:ゴブリンはすぐ増えるから、倒しておいた方が後々楽だぞ


 ●:放置していると、集団で襲われることが増えると思う

 まあ、他の探索者も狩っているだろうから、ナオ君がやらなくても、今すぐどうなるってものでもないと思うけど


 ●:強くなれば、集団を狩ることで効率を上げられるから、いずれはあえて増やしてまとめて倒すのも有り


「なるほど……」


 その為には、複数の敵を対象にした範囲魔法を使いこなせるようになっておいた方がいいだろうな……。

 だけど今は、ゴブリンと戦うことに慣れることが先決だ。


 その後も1~3体のゴブリンとの戦いを繰り返した。

 魔法を使って離れた場所から攻撃しているから、特に危険は無かったのだが……。

 そうなると──、


 ●:そろそろゴブリン相手に、近接戦闘の練習もした方がいいんじゃないかな?


 魔法での戦闘は単調だから、リスナーが飽き始めるんだよな……。

 まあ、今後魔法が使えない──あるいは通用しない敵との遭遇とか、そんな状況もあり得るから、近接戦闘の訓練は必要かもしれない。


 だけど、ゴブリンは武器を持っている。

 刃物で斬られるリスクは、あまり考えたくないなぁ……。

 それならば──。


「じゃあ、まずはゴブリンを……あ、あっちにいるみたいですね」


 ●:おや、ナオ君が気配を消した?


 ●:包丁を握ったね


 ●:そしてゴブリンの背後から忍び寄り……


 ●:喉を掻っ切ったーっ!?


 手に嫌な感触が伝わってくるけど、これでゴブリンは即死したはずだ。

 こちらのリスクは皆無。


 ●:アサシンかな?


 ●:忍者じゃない?


 ●マルル:その昔、テンチューとかいうゲームがあったよね

 あれを思い出した


 ●ナウーリャ:猫耳……尻尾……忍者……はっ、メタル忍者!?


 ●アイ:そんな古いアニメのことは、思い出さなくてもいいよ?


 どうやらこの闇討ちスタイルは、神々に受けたようだ。

 正面から戦うよりは、こっちの方が気分的には楽だし、今後はこの戦闘スタイルでいこうかな。

 まあ、敵に気付かれていない時にしか使えないけど。


「さあ、魔石を回収して、次へ行きましょうか」


 今の俺の実力では、ゴブリンをスライムほど大量には狩れないから、手際よくやらないとな……。


 ●:あ


 ●:え!?


 ●:ちょっ、その床踏んじゃ駄目!


「え?」


 リスナーが突然騒ぎ出した──そう認識した瞬間、俺が踏んだ床から光が(ほとばし)った。


「お兄ちゃん!?」


 そんな水杜(みもり)の叫び声が届いたのを最後に、俺の意識は途切れるのだった。

 夜勤をしていると、たまに無人の玄関で人感センサーが反応します。誤作動だと思いたいけど、私が宿直室のドアを開けた瞬間や深夜2時ピッタリに鳴ることがあって、なんらかの意思を感じる……。

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