プロローグ2~神頼みが肝要
俺が反射したビームの直撃を受けたドラゴンだが、その程度では死なない。
そんなことで死ぬのなら、毒蛇だって自分の毒で死ぬわな。
しかも即座にブレス攻撃が通用しないと学習したドラゴンは、接近戦を挑んできた。
●:おい、潰されるぞ!!
●:グロ動画は勘弁
●:そうなったらAIが自動で通信を遮断してくれるから大丈夫だぞ
●:全然大丈夫じゃないんだよなぁ……
●:実際に魔法使い系は接近戦弱いし……
●:これはオワタ?
「心配はいらないにゃ!」
ドラゴンの前足が振り下ろされたけど、俺は手に持っていた杖でそれをはじく。
いや、力余ってドラゴンの前足が吹っ飛んだな。
●:あん!?
●:カウンター攻撃だと!?
●:女児向け玩具のステッキみたいなので!?
●: (宇宙猫顔
●:待て待ておかしいっ!!
●:あの細腕にどんなパワーを秘めているんだよ!?
●:戦士系のジョブでもドラゴン相手には無理だろぉ!?
●:AI生成のフェイクじゃね?
●:いやリアルタイム配信っぽいし、AIじゃ無理なスピードだろ……
「そうそう、単純にパワーの仕業にゃ」
まあ実際には杖もダンジョンで手に入れたらレアドロップ品で、素の攻撃力が高いんだけどさ。
たぶん世界でも持っているのは俺だけなので、この杖の凄さを見抜ける者はいないだろう。
●:その魔法少女みたいな格好なのに!?
●:魔法系ジョブじゃないの?
「魔法使いにゃ。
ほら!」
杖から発射されたビームがドラゴンを貫く。
額を貫通しているから、まあ即死だろうな。
●:wwwwww
●:もう笑うしかないな……(ドン引き
●:でも可愛いよ?
●:今はそういう話してない
●:そういう話だろぉ?
●:可愛いは全てを許容する
「か、可愛いなんて言うなよ」
恥ずかしいだろ!
●:ん?ちょっと素が出てる?
●:満更じゃなさそうだぞこの猫
●:チョロそうだな……
ちょっと不本意だが、常連以外にも通用する可愛さだというのは、少しだけ誇らしいような気もする……。
だが、ネタバレはさせもらうぜ!!
「ボク、男の娘だけどそれでもいいの……?」
そう、俺は成人男性なんだぜ。
今はこんな猫耳少女然とした姿だが、元々は平均的な日本男児だった。
●:?
●:ハハッそんな見え透いた嘘は……えマジなの?
●:嘘だろぉ!?
●:俺は信じないぞ!
●:ふむ……続けたまえ
●:むしろいい!
●:付いててお得!!
●:うわ 昨今のオタク文化に性癖が曲げられた豪の者が湧いて出た
くそっ、性別が曖昧な常連達と、あまり反応が変わらないな……。
あまり男から、アイドル扱いはされたくないのだが……。
……よし、そろそろ終わるか。
「それじゃあ、この配信も終わりにゃ。
みんな見てくれてありがとー!」
●:え? 次の配信は!?
●:アーカイブは!? どうしたら見られるの!?
●:男の娘と分かった途端に食いつきが凄くなって草
●:リアル男の娘は供給が少ないから必死なのよ
●:なるw
「あ~、この配信ね……。
神様に本気で祈ったら見られる……かもにゃ?」
●:ええぇ……
●:神頼みってそんな……
でも、事実だから仕方が無いのよ。
「じゃあ、今日はこれでおしまいにゃ。
機会があったらまた見てにゃ~!」
●:えっ
●:そんなぁ!
ここで俺は配信を終えた。
「……疲れた」
「可愛かったよ、お兄ちゃん。
普段と違うキャラ付けをしようとして、語尾に『にゃ』を付けて頑張っているけど、どうしても不慣れさがにじみ出ているところとか」
「……言わないでくれ。
常連達が『好評だったらポイントを多くあげる』って言うからやっただけだし……」
撮影担当の妹にまで言われて、げんなりとする。
実際、俺の恥ずかしい姿が人間界にも……。
そう思うと気が重かった。
それでもとある事情で、やらないという選択肢は無かったが……。
……そんな俺の配信が、後に都市伝説化したらしいが、俺の日常生活には影響が無い……と思いたい。
あと、俺の配信見たさに神頼みをする集団が形成されたとも聞くが、そちらの方は何かしらの結果を引き起こすかもしれないな……。
何故ならば、俺がこんなことになってしまったのも、神に祈った結果だからだ。
あの時は他に選択肢が無かったとはいえ、願いと引き換えに大きな代償を支払うことになったぜ……。
男の尊厳という、大きな犠牲が……。




