録画配信と単独行動
遅ればせながら、明けましておめでとうございます
●:お、始まった
●:今回は生配信じゃないんだっけ?
●:録画だな いきなり最後の方にも跳べるぞ
●:ん? いきなりダンジョンの中から?
●:あ、画面端からナオ君が出てきて……座ったー!?
●:何故、ダンジョンの床に?
「皆様、今日もご視聴ありがとうございます」
●:こっ、これは妹ちゃんの声!?
●:ナレーション担当か
「今回のお兄ちゃんは、『気配遮断』と『気配感知』のスキルを得るべく、特訓をすることにしました」
●:なるほど 気配を消す為にじっとしている訳か
●:ついでに精神集中をして、魔物の気配を探るのね
「ただ、非常に地味な画面ですので、早送り推奨です」
●:確かに……10分経過した映像でも、ナオきゅんは動いていないね……
●:30分後でもそうだぞ
●:これ、撮影している妹ちゃんの方もきつくね?
●:退屈だよな?
●:なので1時間後から動き始めて、ナオ君を色んな角度から撮影し始めましたね
●:やったーカワイイー!
●:つむじと猫耳のアップ助かる 20000P
●:しかし、ギリギリスカートの中は映してくれない
●:でも、太ももが映るだけでも御の字 5000P
●:男ってホントバカ
●:待ってください、男の娘が好きなお姉さんもいるんですよ
●:なんの主張だよw
●:※お姉さん 数万歳
●:ちなみにお兄さんは数億歳だぞ
●:×お兄さん ○お爺さん
●:夕飯はまだかのぉ……?
●:お爺ちゃん、ご飯は100年前に食べたでしょ
ボケている場合じゃないですよ
●:鬼畜過ぎて草
●:というか、改めて男だとは思えんわ、ナオきゅんは……
●:いいよね
●:いい……
●:お、スライムが近づいてきた
●:戦闘態勢に入っている時しか跳ねないから、ゆっくり転がっている所為で音も無いね
●:ナオ君、気付いてるのかな?
●:じっとしているから分からにゃい
●:耳が動いているから、反応しているんじゃない?
●:「気配遮断」はできてる? スライムが気付いているのかどうかも分からん
●:こちらから攻撃しないと、あまり攻撃してこないみたいだし
●:くっ、なんでこのスライム、ボール型なんです?
●:粘液タイプなら、スライムプレイが見られたのに……
●ナウーリャ:BAS○ARD!!……懐かしいですね
●:お、スライムが素通りしようとしている
●:やはり「気配遮断」はできているようだね
●:猫は気配を消すのが上手いから
●:気配を察知するのもな
●:スキルは無事に獲得できたということかな?
●:まだ完全にではないかもしれないけどね
●:あ、ナオ君が包丁を握った!
●:スライムの背後からとびかかったー!?
●:倒すのをすっ飛ばして、直接解体するつもりか!
●:活造りだねぇ
●マルル:誰かわさび醤油を用意して
●:ナオ君、スライムを何十匹も倒しているから、さすがに手馴れているわ
●:なんだかんだでネコ科は猛獣が多いし、狩りのポテンシャルは高いからね
●アイ:野 生 解 放 !
●:成長したなぁ 10000P
……そんな感じの配信を投稿しておいたので、今日の配信活動は休みだ。
お兄ちゃんもなんだかんだであの撮影に疲れたということで、朝から爆睡しているし。
じっとしているのって、下手に運動するよりも疲れるよねぇ……精神的に。
あ……病院のベッドの上でのことを、思い出してきた。
あの頃にはもう戻りたくないよ……。
その点、今は自由に飛び回れるし、別に人間の身体に今更戻らなくてもいいと思っている。
でも、お兄ちゃんは、必死で私を人間に戻そうとしているみたいなので、それについては否定することはできないんだよなぁ……。
だから、私も応援することにはやぶさかではないよ。
で、今日はお兄ちゃんが寝ているので、私1人で探索者協会へ行って資格を取ってこようと思う。
その手順は前にお兄ちゃんがやっているのを見ているし、素人が本来持ってといないはずのスキルの数々も、「能力隠蔽」で隠せるようになったから、問題なく手続きできるはずだ。
そんな訳で、先日の探索者協会の支部に来たんだけど……、
「それでは神無月水杜さん、面接を行いますね」
やはり茲富さんが出てきた……。
まあ、面接自体は普通に、滞りなく進んだのだけど……。
しかし彼女は突然──、
「そういえばこの前、あなたのお兄さん……ですよね?
彼の面接を担当したのですけど……」
お兄ちゃんについて突っ込んできた。
この人、お兄ちゃんに執着を見せているから、何かしらの形で関係を強めようとしてくるとは思っていた。
だけどお兄ちゃんは私のだ。
どこの誰ともしれない馬の骨とは、同担拒否をさせてもらうよ!
「あの時、お兄さんとは別の気配を感じたんですよね」
「!?」
え……あの時の私に、気付いていたの、この人!?
もしかして「気配感知」のスキルとか持ってる……?
でも、私だとは確信していない感じなのだろうか……?
分からない……。
全てを見抜いている可能性もあるし、カマをかけているだけの可能性もある……。
だけど、ここは素直に認めても、何の得もないよね……。
「……亡くなった両親が、見守っていたのかもしれませんね」
お父さんお母さんには悪いけど、ちょっと誤魔化す言い訳として使わせてもらおう。
ううん、神様が存在するのなら、魂だって存在するだろう。
きっと見守ってくれているはずだ。
……あのお兄ちゃんの姿を見て、なんと思うのかは分からないけど、まあ可愛いからいいよね。
「そうですか、そうなのかもしれませんね……」
……これ以上突っ込んでこない?
それとも、やっぱり確信が持てずに、探りを入れてきただけ……?
「それで……この後は探索者について、様々な注意事項を説明するのですが、あなたには必要ないでしょうか?」
「えっ!?」
お兄ちゃんと一緒に聞いていたから!?
「既にお兄さんへ説明しているので、彼から聞く……という形でもいいのですよ」
ああ……そういうこと……じゃないな。
たぶんこの人は、気配の正体が私だと確信している。
だけど、深く追求してはこない。
私達の秘密を他人に知られたら、色々とマズイのは確かなんだけど、それをあえて見逃すことで、恩を売ってお兄ちゃん攻略の足掛かりにしようとしている……とか?
直接脅してこないだけ、良識はあるのかもしれない……。
だからと言って仲良くする理由もないけど、怒らせると面倒なことになるのも確実だよねぇ……。
「……兄の写真、見ますか?」
「いいの!?」
釣れた!
こうやってこちらの妥協できるラインでご機嫌を取って、満足してもらおうかな……?
取り合えず、今回は私が配信スキルで撮影して編集した画像をマホに保存してあるので、それを見せることで許してもらおう。
必要なら服を買った時のを、1~2枚は贈呈してもいい。
お兄ちゃんに直接会いたいとかいう要求ならちょっと考えるけど、この程度なら安いものだよ。
「ありがとう、妹さん!
もしもなにかあった場合は、遠慮なく私に頼ってくださいね。
私の権限でやれる範囲でしたら、探索者協会も動かしてみせますよ」
「……覚えておきます」
正直言って、頼りたくないと思っていたけど、彼女の手を借りなければならない事態がこの後発生するなんて、私は考えもしていなかった。
料理に使ったチンゲン菜の余った芯を水耕栽培しています。葉と根が出たのでそろそろ植木鉢に植えようかな……。




