猛 進
背中に衝撃を受けた俺は、慌てて振り向いた。
するとそこには──、
●:イノシシ……だと?
体長50cmくらいの小さなイノシシがいた。
ただ子供だから小さいのではなく、これで成獣らしい。
実際、ウリボウのような縞模様は無い。
事前にネットで調べておいた魔物の情報によると、こいつは──、
「確か……小猪とかいう魔物……!」
このダンジョンの入り口周辺には、あまり出没しないと聞いていたんだが……。
どうやらその小猪が、体当たりしてきたらしい。
その所為で、俺のHPが3も削れている。
まだ15しかない内の2だから、結構でかいぞ。
「お兄ちゃんごめん、気付くのが遅れた!」
妹で撮影役の水杜が謝ってきた。
「いや……解体に集中しすぎたこちらも悪い」
水杜も俺の撮影に、集中していたのだろうしな。
●:そういや解体の時って、臭いで魔物が寄ってくるんだよね
●:だから、本来は警戒しながらやるか、安全地帯にまで行ってからやるべきなんだ
●ナウーリャ:この辺はスライムしかいないのかと思って、油断していました
スライムなら、跳ねる音で近づいてきてもすぐ分かるけど、イノシシは素早いですからね……
「そういうのは早く言って!!」
●:今後は「気配察知」のスキルを、獲得した方がいいかもな。
そうだね!
だが今はまず、小猪を倒すのが先だ。
「にゃっ!?」
しかし、突進してきた小猪のスピードが速い。
躱すだけで精一杯だった。
小さくても牙があるから、当たり所が悪ければ、太い血管を切られて命に関わるぞ!
●:にやっ、だってw
●:可愛いw
●:悲鳴助かる
うるさいなぁ、とっさにでちゃったんだよっ!!
それはともかく、こんなに素早いと、魔法を当てる自信が無いぞ。
広範囲に広がる魔法なら当たるだろうけれど、使い慣れていない状態だと、水杜を巻き込みそうで怖いし……。
それなら棒で叩くしかないけれど、これで倒せるか?
「やっ!!
──痛っ!!」
小猪の突進を回避しつつ、タイミングを合わせて殴ってみたが、分厚い皮と脂肪に弾かれた。
反動で手首も痛めるし、こりゃ今の俺には勝てない相手か?
「……逃げてもいいですか?」
●ナウーリャ:判断が早い
●ウルティマ:ここは防御魔法を駆使してみるのは、どうでしょう?
●アイ:使いようによっては、相手の動きも封じることとができるよ
ふむ……防御魔法か。
俺は小猪の動きを警戒しつつ、リスナーに問う。
「……そうですね。
オススメの防御方法はありますか?」
●エルシー:巨大な岩とかを生成して、物理的に敵との間を遮るのがいいですよ
なんなら、その岩で相手を押し潰せます
●ナウーリャ:物質具現系は、かなり魔力を使うでしょ……
初心者の魔力じゃ足りないと思いますよ
それよりも空気中の魔力を操作して、高密度の魔力を身体の周囲に纏うのがいいでしょう
空気中に魔力がある限り、無限に防御できますし
●:それ、めっちゃ技術力がいるやつぅ~
「おおぅ……なにやら高等レベルのを求められている……?」
●アイ:炎の壁を作れば、攻守一体でいいよ
炎の壁……悪くない。
「こんな感じですか?」
俺は炎の壁を形成に成功した。
しかし──、
●:自ら炎に突っ込んでくる奴はいないわなw
●:敵の攻撃に合わせて作らないと、意味が無いよ
小猪は炎の壁に怯みはしたが、それを迂回して攻撃してこようとしている。
MP3も使ったのに不発は痛い。
●ナウーリャ:ここは風属性魔法で、空気を圧縮して壁を作るのが良いでしょうね
極限まで圧縮すれば、鉄のように強固な壁になるので、突進してきたイノシシを衝突させて自滅させることも狙えます
まあ、魔法初心者では、そこまでの硬度を持たせることは難しいかもしれませんが、動きを遅くする程度のことならできるはずです
なるほど……。
上手く動きを止めることができれば、魔法攻撃を当てることもできるかもしれない。
ただ、防御と攻撃を瞬時に切り替える必要があるので、これはこれで難しそうだが……。
とにかくやってみるか!
まず、俺と小猪の間に、空気の壁を作る。
壁は透明だから、小猪には存在を察知することはできないはずだ。
後は小猪が突進してくれれば成功だが、先程の炎を警戒してなのか、なかなか動いてくれない。
「来いよ、怖いのか?」
だから挑発を試みる。
●ナウーリャ:来いよベ○ット!!
●アイ:コ○ンドー始まったw
ん~~~っ、そんなつもりはなかったんだけど、セリフが被ったか。
というか、映画のネタまで把握している神々って、本当になんなの?
それはさておき、俺が大声を出した所為か、小猪は興奮した様子で、こちらへと突っ込んできた。
よし、誘い込むのは成功だ。
だが、壁の硬度が足りないのか、小猪は壁を突き抜けようとしている。
まあ、空気抵抗で速度は落ちているので、そこを狙って火球を放った。
●:あっ!
●:遅い!
防御魔法から攻撃魔法への切り替えが上手くいかず、発射のタイミングが遅れた。
火球は小猪には命中せず、小猪はそのまま突進してくる。
回避が間に合わない──っ!?
「っっ!?」
●:うわっ!?
しかし小猪は炎に包まれる。
俺の背後から撃ち出された火球によって──。
●:画面のすぐ近くから炎がでたから驚いたわ
「今の、水杜か!?」
振り向くとそこには、どや顔の水杜がいた。
今年もあと一週間程度ですが、もう1回更新できるかどうか……。年末年始は4日連続で夜勤だし……。




