スライム狩り
前回に数行ほど書き足していますが、話の本筋は変わりません。
「……罠で即死って、そんなによくあることなんですか?」
茲富さんの説明では、危険だという話しか聞いていないんだけど……。
●:ダンジョンの浅いところじゃ、凶悪な罠は殆ど無いよ
●:そして深い所に行ける探索者なら、大抵「罠感知」は身に着けている
●:だから引っかかることが少ないだけで、凶悪さ自体は増している
●:で、ひとたび引っかかると、パーティーごと全滅してしまい、そんな危険な罠があったという報告をできる者がいなくなってしまうので、世間にはあまり知られていないという寸法さ
ああ、パーティーの全滅は魔物の仕業や、遭難・事故だと誤認されている感じか……。
「なるほど……。
それなら深いところへ行くまでに、自力で身に着けるという手もありですね」
だって、「罠感知」のスキルって、獲得ポイントが結構高いんだもの……。
節約できるものなら、節約したい。
●:ま、周囲の壁や床に違和感が無いか、警戒を常に心がけていれば、いずれ獲得できると思うよ
「じゃあ、そうします」
それよりもまずは、魔物との戦闘に慣れることの方を優先すべきだろう。
結局、ダンジョンで1番の死亡理由は、魔物に襲われたことによるものだろうし、戦いの中で強くならなければ、死亡リスクが今後も付きまとう。
借金ポイントを増やす訳にはいかない俺としては、戦闘能力を伸ばすことは急務だった。
ただ、このダンジョンの入り口付近だと、そんなに強敵は出現しないらしいので、実戦訓練になるのかどうかは分からないが……。
なにせこの辺に出現するのは、精々半透明で楕円形の物体──いわゆるスライム程度だからだ。
ゲームなどでは最弱の場合もあれば、強敵の場合もあるらしいが、実際のスライムはお菓子のグミみたいな弾力のある質感を持った物体に過ぎず、木の棒で殴っただけでも倒せる存在らしい。
不定形であるが故に物理攻撃が無効とか、表面から毒や強酸を分泌するとか、人の顔面に張り付いて窒息死させるとか、そんな厄介な要素は一切無い、最弱の存在だという。
それでも魔物を倒せば、アイテムなどのドロップ品が期待できるので、それを探索者協会に売れば収入にはなる。
収入が増えれば、それだけ金銭面の問題で、ポイントの消費をしなくてもよくなるはずだからな。
むしろ現金をポイントに変換することもできるので、借金ポイント返済の為にも稼がなければ……!!
「お、いました!
たぶんあれがスライムです!!」
「ちょっと可愛い」
と、妹の水杜が言う通り、バスケットボールくらいで半透明の物体が、ポヨポヨと跳ねている。
その丸くて弾力がありそうな姿は、なんだか触って撫でまわしてみたくなるなぁ。
ただ、そこそこ重量があるのか、そんなに大きく弾んでいないし、スピードも遅い。
体当たりを受けたらボール程度には痛そうだが、避けるのは簡単だと思う。
●ナウーリャ:ほほぅ、スライムについて私は、専門家ですよ
トイレや生ごみ処理目的で飼育していましたし、娘が──
……って、私が知っているのとは、違うタイプですね……
●アイ:某異世界のとは違うっぽい?
あっちだとアメーバみたいだから、魔法無しで倒すのはかなり厳しいけど
「そうなんですか?
どのみちボクは魔法で攻撃するので、問題無いと思いますけど……。
ほら、この通り!」
魔法で火の球を生み出し、スライム目掛けて発射する。
その火の球は──、
●:外しているやんけw
●:草
「うぐぅ!」
まったく命中しなかった。
意外と難しい。
よく狙って、再度攻撃を試みる。
しかし、今度はかすっただけだ。
「お兄ちゃん、もうちょっと近づいた方が良くない?」
「そうだな……。
反撃を受ける可能性は増えるけど……」
スライム程度の攻撃なら、大したことはないだろう。
「うりゃ!
よし、今度は命中した」
そして火球の直撃を受けたスライムは、一瞬で燃え尽きた。
おお、確かに弱い。
●レナ:初撃破おめでとうございます 5000P
●:おめでとうー! 3000P
「ありがとうございます。
それでは、ドロップ品があるか確認しますね」
燃え尽きたスライムがいた場所を確認すると、そこには1cmくらいの、トゲトゲした石のような物が落ちていた。
こいつは化石燃料に代わる次世代の燃料として、様々な方面から注目されている資源だ。
だから探索者協会で、買い取ってもらえる。
まあ、このサイズなら、精々数百円だろうけれど……。
それでも、チリも積もれば……だ。
「おお、魔石ですね。
何故か魔物の体内で、作られるという石」
●ナウーリャ:魔力が結晶化したものですよ
尿路結石みたいなものです
人間も魔力が濃い場所に長期間いたり、魔法を繰り返し使っていると、体内に生じますよ
「尿路結石……」
知ってるそれ。
めっちゃ痛いやつやん……。
●アイ:でも、尿路結石みたいに、悪さはしないよ
むしろ体内で大きくなると、魔力を増幅させるとかの扱いがやりやすくなる
「へ~。
じゃあ、むしろ魔石ができた方が有利なんですね」
●:まあ、姿が多少魔物化するかもしれないが
駄目じゃねーか!
「幻術とかでいくらでも隠せるから、問題ないんじゃない?」
「ん……確かにそうか」
妖精の姿を隠している水杜が言うと、説得力が違う。
でも、大なり小なり、不便が伴うことは間違いないだろう。
俺にはまだ「幻術」は使えないから、これ以上人間離れした姿になるのは困るな……。
それはさておき、スライム1匹を倒す為に、3回も魔法を使ってしまった。
俺の最大MPが15で、最下級の攻撃魔法を使うと1減る。
つまり、本来ならあと12回しか魔法を使えないのだが、俺には「HP・MP超回復」がある。
既に少し回復して13になっているから、ちょっと休みながらならば、無限に魔法が使える感じだな。
この調子でスライムを狩りまくるぞ!!
……って、あまり魔法を使ったら、体内に魔石ができちゃうんだっけ……。
稼ぐ為にも、リスクはつきものなんだなぁ……。
光視症と飛蚊症が同時に発生したので、網膜剥離の兆候かと思って眼科に行ったけど、現時点では加齢によるもの……だそうで。当面は様子見でいいようだけど、視界に映りこむ光と影が鬱陶しいです……。




