訓練場へ
俺は探索者協会に併設されている訓練場へ、向かおうとしたのだが……。
「こちらです」
何故か面接官のお姉さんが案内してくれた。
「え……と、他のお仕事はいいのですか?」
「ええ、休憩時間なので」
今、午後2時で中途半端な時間だけど、そうなん?
「神無月さん、連絡先を交換しませんか?
探索者のことについて分からないことがあれば、相談に乗りますよ」
「……そんなことまで、業務にあるんですか」
「ええ、探索者協会は、探索者の活動を支援するものですから」
●:絶対違うぞ
●:これ、逆ナンしているやろw
……だよなぁ。
でもこのお姉さん、美人だし、おっぱいも大きいので、このまま縁が無くなってしまうのはちょっと惜しいなぁ……と、正直思うのは男の性だ。
ただ、今の俺の状態で、人間関係を増やすと厄介なことになるのでは……?
そんな危惧もある。
「……まあ、いいですよ」
でも、探索者協会の中に味方を作っておけば、何かトラブルがあった時の助けになるのでは……という打算もあった。
●:こいつ、乗りやがったwww
●:可愛い姿でも、中身は男か
いや、彼女とかほしいという理由じゃないから、誤解しないように──って!?
……今、後頭部を軽く殴られたような……?
姿を消して、撮影しているはずの水杜……?
兄が女にだらしないように見えたのが、妹として嫌だったか?
ブラコンなところがあるからなぁ……。
後でご機嫌を取っておくかな……。
●レナ:とにかく、密室で2人きりにはならないようにした方がいいと思います
●:合法ショタだから、襲ってもセーフ判定されやすいだろうしな
●エルシー:でも、おねショタもいいものですよ 2000P
●ナウーリャ:百合……百合はどこ?
●エルシー:そこに無いのなら無いですね
●:見た目だけならおねロリなのになw
●:脱線させるなよ マジで気をつけろ
はは、そんな馬鹿な。
今はこんな見た目だけど、俺は成人男性ぞ?
そんなことがある訳……ないよね?
このお姉さんが、そんな無茶するとか無いはず……。
そんな不安を感じながら、連絡先を交換する。
うん、名字が読めない。
「え~と、なんて読むんですか、これ?」
「茲富ですね。茲富香菜花です」
おう……。
最近、難読の名前が増えてきたけど、名字の方が難読のパターンか。
●:略して「ここかな」か
●:「ここたん」の方がよくね?
勝手に愛称つけてる……。
「さて、そろそろ訓練場です」
茲富さんに案内されて通路を進むと、なにやら大きくて鋼鉄製の扉が見えてきた。
「実はこの先って、ダンジョンなんですよ。
勿論、魔物が出現するフロアまでの道は封鎖されているので、危険はありませんが」
「え、そうなんですか?」
こんなところにダンジョンの入り口があるというのは、知らなかった。
●:なんらかの理由で、探索が断念されたんじゃないかな?
●:入り口によっては、高レベルの魔物が出現するらしいし
●:中で全部繋がっているのに、変なの
●:作った奴が馬鹿なんでしょ
ん……?
作った?
ダンジョンを作った何者かがいるのか?
「まあ、あまり公にはしていない情報なので、他ではなるべく喋らないでくださいね。
で、スキルというのは、何故かダンジョンの中でないと発現しにくいので、ダンジョンの一部を利用して訓練場にしている訳です」
なるほどなぁ。
俺はポイントを支払えば、スキルは取り放題だけど、実際に取得するのには手間がかかるんだな。
そして扉の前には、背広姿の男が立っていた。
ヒョロっとした体形で背が高く、ちょっと鋭い顔つきをした40代くらいの男だ。
「魔法講師の田中です」
「よろしくお願いします」
「私も見学させてください」
え、訓練にまでついてくるつもりか、茲富さん?
「自由気ままも、ほどほどにしてくださいよ、副支部長」
「ええ、そうですね」
田中さんの言葉を、あまり真剣に聞いていないような調子で返す茲富さん。
え、あんた副支部長だったの!?
●:若いのに結構大物だな
●:「鑑定」を使えるのが大きいんじゃない?
●:でも、面接官なら必須のスキルでしょ?
●:熟練度が違うとか
と、神様達が推測しているけど、実際の所はよく分からない。
もしかしたら親が偉くて、コネで……ということもあり得るな……。
ともかく、田中さんの案内で、訓練所の中へ入る。
そこは洞窟のような……それでいて、広い空洞だった。
ちょっとした体育館くらいの、広さがあるだろうか。
そして、なんだか空気が違う。
ひんやりしているというのもあるけど、それだけでは片づけられない何かがあるにように感じた。
俺の様子をを見て、田中さんは──、
「感じますか?
ダンジョン内には、魔力が流れているのですよ。
それが分かるのなら、魔法を使う才能はあると思いますよ」
と、俺の魔法の才能について語った。
そうか、才能はあるんだ。
実際に魔法を使うのが、今から楽しみだ。
なにやら『[日間]ローファンタジー〔ファンタジー〕 - 連載中』で本作が71 位にランクインしました。ありがとうございます。




