第4話:苦き服従...
その真夜中の時:
冷たい夜明けの空気が中庭を切り裂くように吹き抜ける中、俺は体を起こした。
全身が痛み、昨日の屈辱的な訓練がまだ頭の中で渦巻いている。だが、立ち止まっている暇などなかった。シルヴィアーヌの冷酷さは容赦がなく、次に何が来ても耐えられるように準備が必要だ!
──だが、次に起きた時の、明日になった俺は思いもよらぬ光景を目にすることになるのを予想できなかtった!
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明日の明朝:
訓練場の角を曲がった先に、彼女がいた。
シルヴィアーヌ・フォン・ファルケンハイン。
冷厳な威厳そのもの──!
その彼女が、朝の静けさの中、一人でレイピアの型を練習していた!
「はー!せいー!やー!」
彼女の動きは滑らかで正確。
それはまるで剣が彼女自身の一部であるかのようだった。
朝の光が刃に反射し、長い影を地に落としながら、彼女は真剣そのものの表情で型を流れるようにこなしていた。
その瞬間、彼女はもはや「手の届かぬ高貴な姫」ではなく──!...何かと闘っている少女に見えた!
自分自身を律するために戦う、そんな必死さが滲んでいた......
「へいー!さあ――!!やあ―――!!
息は荒くなり、一撃ごとに力が削られていくのが分かる。
額に皺を寄せ、唇を固く閉ざすその姿に、完璧であろうとする者の重圧が見え隠れしていた。
......もしかして、これが彼女の本当の姿なのか?
そう思った矢先、彼女の視線がこちらに向けられた。
「何してるの、オバシ?」
その声が、俺の思考を打ち砕いた。
黙って見ていた時間が長すぎたようだ。もはや先ほどの剣士ではなくなったんだ。今目の前にいるのは、すべてを支配する『姫君』そのものだ!
その瞳は冷たく、突き放すような光を帯びていた。
「朝早くから感心ね~?」
と鼻で笑う。
「私の練習を見てれば強くなれるとでも思ったの? お前が私の相手になれるとでも?」
彼女の言葉は氷のように冷たく、芽生えかけた共感を一瞬で凍らせた。
「立ちなさい」
彼女は一歩近づき、高圧的な口調で命じた。
「私はお前の面倒を見る時間なんてないの。言うとおりにして、学びなさいー」
反射的にうなずいた俺の胃の奥は、冷たい鉛のように重く沈んだ......
彼女が背を向けかけた時、さらに冷たい声が背中から突き刺さる。
「──跪きなさい」
奥歯を噛みしめた。懇願など、したくなかった。
だが、彼女があの目で俺を見た時──、あらゆる抵抗を砕いた氷の眼差しで見下ろした時──、俺の中の何かが音を立てて崩れた。抗う力は、もう残っていなかった......
──彼女はまだ18歳だ。20歳の大人にはなり切れず、まだ若いままの女の子だ。
──そして!俺は34歳のおっさん年齢の男だ......
俺は自分に何度もそう言い聞かせてきた。
彼女は、まだ年若い少女だ。...だが、その彼女がこの世界のすべてを掌握し、30代の大人である俺を平伏させる力を持っていた。
──そして大人の俺は、跪いてしまったんだー!何度も何度もー!
地面は冷たく、容赦のない石の感触が膝を刺す。
吹きつける風の冷たさよりも、己の恥の痛みの方が遥かに深かった。
......俺は何をしているんだ?
数々の戦いをくぐり抜け、誇りを持って生きてきたはずの男が──!......今、こうして、少女の命令で跪き、まるで使い捨ての玩具かぼろ雑巾のように扱われている!
かつては誇り高き戦士だった。今はただの道具。彼女の気まぐれに弄ばれるだけの存在......
彼女は玉座のような椅子に腰を下ろし、脚を優雅に組む。その姿は、世界をその足元に置く者のようだった。
「ふふ...」
くすり、と小さな笑い声が耳に届いた。
侮蔑に満ちた笑い。俺はそれが大嫌いだった──!
...だが同時に、妙に心に残る音でもあった。支配の証、勝利の証......
「舐めなさい」
その言葉は、刃のように俺の心の中を切り裂いた―――!
「......くそッ~!」
俺は叫びたかった。
本当に、...悔しかったから!
大の大人である俺が!
18歳の少女のブーツを、......舐めさせられるだなんてー!
怒鳴りたかった。
彼女をその椅子から引きずり下ろして、本当の自分を見せつけたかった!
──だが、......できなかった...
彼女は、俺を完全に壊していたんだと思う。
朝の光に照らされたブーツ。その表面には道の土がうっすらと残り、そこに込められた力と傲慢さが見え隠れする気がした。
「......れろ~」
俺は頭を深く下げ、押し潰された誇りの下で唇を革靴に押し当てた。そして舌を出して舐めてしまった!
「れろ、れろろ~」
皮の味、泥と石の味、そして己の屈辱の味。
......耐え難いほど苦く、味覚にも尊厳にも痛かった感覚だ――!
「お前は私に仕えるのよ。逆らうなら、思い出させてあげるわ。......何かがあっても、お前の役目は──、ずっと服従なの」
その声は、容赦なく俺の心を突き刺した。
だが、唇をブーツに押し当てたその時、心の奥底で何かが蠢いた。
──このまま終わるわけにはいかない!絶対に!
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