第15話:目覚める炎と騎士の試練!
決戦の日まで後4日間!
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朝日が地平線をかすめる頃、俺は訓練場に到着した!
ここはもう見慣れた場所のはずなのに、今日の空気は違ってた。なんつーか、周りの騎士たちの視線がいつもより鋭くて、まるで俺の覚悟を試すみたいに感じた......
シルヴィアーヌとの決闘まで、あと四日。今日の訓練は、ただの剣の振り合いじゃねぇ。俺がどれだけ成長したかを示す、本物の試練だ。
ロザリー、イゾルデ、クラリス、アデル、そして他の女騎士たちが列を組んで立ってる。今日はこいつら全員と模擬戦だ。やってやる。俺の力、見せてやるんだ!
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模擬戦開始!
最初に立ちはだかったのはイゾルデ嬢!
「最初はワタシからお相手させて頂きます。では、参りますー!」
カチャ――――――――――!!
カー―――――――――ン!
「くっ!?」
あいつの剣は冷静でまったく隙がない!
こっちが動けば、それを計算したかのように斬り込んでくる。けど、俺は焦らなかった。こっちはこっちで何度もイソルデとの切り合いを経験して、訓練の素振りも技の練度を上げるコツもたくさん練習して積み重ねてきたからな。
隙を見て、思いっきり踏み込んだ。
タ――――――!
ガチャ――――――――ン!!
「―――!?」
イゾルデの剣を弾き飛ばし、勝負あり!
「や、やりましたね、オバシさん!...ついに、ついに『先手勝利』のルールが設定された試合で勝ってみせて見事でしたよー!ふふふ~!」
って、イゾルデはニヤッとまるで自分の事のように喜びながら笑った。
次に挑んで来たのはクラリス嬢!
「ふふふ、不束者ですが、よろしくお願いしますわ、お~ほ!」
こいつは正面突破が得意な猪突猛進タイプ。剣の振りも重いし速い。
なら、それを利用するまでのことー!
キ――――ン!コ――――――ン!カ―――――ン!
「どうしましたの~、どうしましたのー!そんな動きじゃわたくしを倒せませんわよー!」
「そうかな?」
だけど、俺は冷静に受け流して、タイミングを見計らって足を狙った突きを入れたー!
「それッ!」
カチャ―――――!
「きゃああー!?」
グラッとバランス崩した瞬間、俺は一気に剣を突き出した。
「ぐっ……こりゃ一本取られましたわ~~!」
って、クラリスが悔しそうに呻きながら言葉を漏らした。
次は、......アデル嬢だ!
「にしししィ~、あの時あたしに剣術の技ひとつも教えてくれなかったことを後悔させてやるぅ~!」
赤髪ポニテ―ルのウェブ髪してるアデルはその天真爛漫な性格とは裏腹に戦闘では静かで落ち着いた構え。
「やあー!」
カ――――ン!
「くッ!?」
だけど、動きは柔らかくて読みづらい!
「せいー!」
コ―――――ン!
「うぐッ!?」
剣を交えるたびに、まるで踊ってるみたいに動くんだ、アデルは!
でも俺も、ここまでくりゃ簡単には負けねぇぞー!集中して、呼吸を合わせて――、そして、決める!
「はあぁ――――!!」
が―――――――ン!
「ひゃぁ――ン!?」
ゴドゴド―――!
アデル嬢の剣、ついに突き飛ばされ床に転がり落ちたー!
俺の勝だ!
「……す、すごいィ~!本当に雷のような気転の速さで焦ってしまったあたしの弱点である【脇のガードが甘いこと】についてくるぅ~」
とアデルは俺の柔軟な戦い方に関心して自分がなんで負けたのか納得したように頷いた。
最後はロザリー嬢。こいつとの戦いは、言葉もいらない。ただ剣を交え、相手の心を読むだけ。
彼女は、そういう単純明快な女だ。
「...カッコいいコートとインナーで挑んできてキュンとしちゃうぞ、ボク!...まあ、買ってあげたのはボクの方だけどね、あ~はははは......」
「先日これを買ってくれて本当にありがとう、ロザリー嬢!お礼として、...最高の『ダンス(試合)』をあんたと踊らせてもらおうー!」
俺が本当に強くなったかどうか、あいつが一番わかってるからね!
キ―――――――――――――ン!!!
カ――――――――――――ン!!!
小――――――――――――ン!!!
激しくもパターンが通常化した冷静な戦いだ。
「ふー!」
ガタ――!
「きゃッ!?」
最後、俺の剣がロザリーの手元をかすめて、彼女の剣が地面に落ちた!
ガタガタ―――ン!
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「……信じられ...ないぞ、それッ!」
って、ロザリーが控えめにびっくりした声を上げる。抑えたつもりだけど、かなり驚愕した顔だ!
「...数日経ってきた程度で、ここまで動きが洗練するようになって、ボクの教科書通りの打ち方を凌駕できる『剣戟の重さ』を格段に上げられるなんて、やっぱり君って剣の才能ありすぎてボクらの予測を遥かに上回った上達の速さを見せてくれたね~!」
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そして、シルヴィアーヌ直属の女騎士4人すべてを試合で下した俺に、確かに今から感じる空気の変化を実感できた!
なんつーか、皆がいっそう俺のことを尊敬してくれるような、頼りになる男を慕うような目つきになってきた!
「「「「......」」」」
気づけば、全員が俺の周りに集まってきた!
視線は鋭くも、どこか誇らしげだった。最初の頃、異国から来たってだけで疑われてた俺が、今や仲間として見られてる。……本当に感動的で嬉しくなる大進歩!
バッパ―――ッ!
イゾルデが俺の肩を叩いた。
「立派でしたよ、オバシさん。貴方の努力、ちゃんと見させて頂きました!」
青髪のクラリスも笑ってた。
「おほほほ~、これでシルヴィアーヌ様に一泡吹かせられるかもしれませんわ、オバシ様~」
アデルに至っては鼻歌が混じった喜び顔で俺の目の前でウインクを送ってきながら友人同士が良くやるような指による突きで俺の腹を突き刺さってきたー!
「おいてめえー痛いぞ、さすがに!」
「にしし~、油断大敵、大敵~!気心が知れた仲と、緩んでる時にこそ最大の危機あり~!」
やっぱり小悪魔的な子だった、アデルはー!
「........」
ロザリーはしばらく何も言わずに見てたけど、やがて口を開いた。
「準備は、できてるよねー?自信持ってお嬢様を打ち負かしに行ってきていいぞ!」
ああ、わかってる。もうあの女の前でビビってるばかりの弱い俺じゃなくなったんだ......
(今の俺は、...確かに剣の腕も忍耐力も動きの洗練さも爆発的に上がった気がして、どう考えても依然より感覚でわかるぐらい強くなったんだ!)
なので、今からの俺は、ただあの女をぶちのめしに行って来たらいいだけの事だ!
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でも、心に残る疑問も確かにある...
訓練が終わった後、ずっと気になってたことをイゾルデに聞いてみた。
「なぁ、イゾルデ嬢さん……俺がアシェンダリ出身でも、なんであんた達は差別しなかったんだー?」
イゾルデはちょっと驚いた顔をしたけど、すぐに優しく微笑んだ。
「ワタシたち騎士は、功績で人を見てますから。肌の色や出身なんて関係ありません。貴方は訓練でそれを証明してみせましたから、それで十分ですね。...そして、ワタシたちは、ただの異国の男性じゃなくて、戦士としての貴方を見てるんですよー」
「~~!」
その言葉が、まるで重りを取っ払ってくれたように、胸に染みた。
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それから、大宮殿にある召使用の自分の部屋に戻った夜間になると:
夜、部屋で横になってたら、妙な夢を見た!
「目覚めよ……オバシ……お前の血に宿る炎を解き放て」
誰かの声が、心の奥に響いてきた。金属的な響きのある声だ!
「がああ―――――!!」
カ――――ン!
「逃げて、あなたー!」
気づいたら、暗い戦場に立ってた。
周りには炎が揺らめいてて、俺の手のひらには熱が灯ってた。
「お前はアシェンダリの古神の血を引く者……祖先の炎を受け継ぐ者だ」
胸の奥から、熱が湧き上がる感覚。手の中には確かに――炎の魔力が宿ってたー!
「この炎が、お前をどこまでも勝利へと導く。恐れるな。受け入れよ」
「はあぁ――!?」
そして目を覚ました!
新たな力が全身に注入された感じがした―――!
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ.....」
汗びっしょりで飛び起きた俺の手は、まだほんのり温かかった。指先には確かに魔力の残滓が感じられる。
……あの夢、ただの夢じゃねぇー!
アシェンダリの古神、『オロルン=イナ』の血が、俺の中で目を覚ましたんだ!
剣だけじゃねぇ。俺には、炎の魔法もある!
(やっぱ、いつも見てきた、あの少年時代らしき経験したあれもー!実際に昔の俺は、やっぱり焔術使いだったんだな!)
シルヴィアーヌとの決闘に向けて、これ以上ない武器を手に入れた―――――!!
あとは、やるだけだ――!
俺は、俺の力で、この国の騎士になってみせるー!
今度は、あの女の足元にひれ伏してるだけの犬じゃなくて、対等な、...一人の戦士として見てもらうんだー!