第9話: 鎖が断たれる時!
翌日:
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訓練場として使われる中庭は、妙に静かだ。
まるで風すら息を潜めてるみたいに......
(...本物の訓練場が屋内のあそこの一棟にあるのに、どうしていつも外の空気が吸えるここの中庭で訓練をー、ん?)
...やっぱり、貴族の娘として感じた重圧と重責からほんの少しでも解放される気分を味わうがために、こんな解放感ある外での訓練がしたいだけなのかー?
(...まあ、今の俺にはあの狂女の内面なんてどうでもいいけどなぁ...)
...とりあえず、俺は腕を組んだまま、微動だにせず立っていた。
向かいでシルヴィアーヌが歩き回ってる。
まるで落ち着きのない獣だ。
彼女のレイピアが、鈍い朝の光を鋭く反射している!
「跪けって言ってるのよ」
「......」
俺は微動だにしなかった。
彼女の目がピクッと動いた。
「跪け、この下僕―!」
「......断る」
その言葉は刃みたいに重かった―――!!
「「「「~~!?...まぁ...」」」」
周りの侍女や従者たちが一斉に息を呑む音が、石の壁に反響してた。
「......」
いつも俺のことを嘲笑っていたエリスですら、柵のそばで呆然と立ち尽くしてたー!
「...もうあんたのその命令だけは聞かないつもり。......諦めろ...」
俺の声は静かだった。
でも、その中に渦巻く怒りは隠しきれなかった!
「あんたは俺から誇りを奪い、尊厳を踏みにじり、這いつくばらせてきた悪女だ...」
正確には、『悪役令嬢』と言った方がいいんだったっけー?
あまりそういう小説読まなかったから詳しくないけどぉ......
これから、俺の口から出てくる一言一言が挑発になる!
「犬が欲しいなら、他を当たれ。俺は生まれながらの誇り高き戦士の男だ。焔使いの魔術師だった。...死ぬ時も、そうだ!」
「~~!」
シルヴィアーヌの目が細くなる。
カー!
そのブーツが石を擦った。
ズシュー――――!
そして——最初の蹴りが来た――!
バキ―――!!
肋骨に命中。
「がーッ!」
痛みが一気に広がる。
だが、倒れなかった――!
次は太もも。よろけた。でも、立っていた――!
「なんで屈しないのよッー!?」
と彼女が叫ぶ!
バキ―――!!ボコ―――!!バキ―――!!
蹴りは止まらない。速く、強く、容赦なく!
「あがっ!がっ!えぐっ~!」
でも俺は叫ばない!跪かない!
(女!早く止めねえとー!流石に危なくなってるぞ――!...『今の俺相手に』!)
ただ、まっすぐ彼女を見ているだけの俺――!
バキ―――!!ボコ―――!!バキ―――!!
蹴られるたびに、彼女の苛立ちは増していった。ただの怒りじゃない。
そこには……迷い。恐れ。そして——、畏怖さえあったー!
「倒れなさいよッ――!!」
(...シネ)
その瞬間、何かが俺の中でブチッと切れた。
「うわあああああああああああ――――――――――――――――――!!!!」
オレは咆哮した―――!!
腹の底から絞り出す、獣のような叫びだった――――!!
この宮殿で誰も聞いたことのない音だったはずだ。
「くたばれー!クソ女があああああああ―――――!!!」
俺は一気に飛びかかる!
「~~~~~~!!??」
彼女が目を見開いた——、それも無垢な幼女みたいな、初めて見る幼女な目しやがってー!でも遅かった!
ガシ―――――!!
俺は彼女の両手首をがっちり掴んだ!
パチャ――ン!
レイピアがジャリッと音を立てて地面に落ちた。
ゴド―――――!!
身体をひねって、自分の重さを使って彼女を地面に叩きつける!
「ガーはっ~!?」
息に詰まって激痛に耐える彼女ー!
「~~!は..なし、...なさいッ!...こ、このッ!」
彼女は必死に暴れ、ブーツで蹴ってくるが、俺は脚をそいつのに絡めていて動きを封じた――!
両手を地面に押さえつけて、顔と顔が数センチの距離まで近づいた――!
「俺はもうお前の玩具じゃねえぞー!」
「~~、ひッ!?」
彼女の声は初めて震えていたような声色を帯びる!
でも、俺の声と言ったら、ただの怒りの震えだった!
「もう、二度となー!」
「はぁあ~、はぁあ~、はぁあ~、はぁあ~」
シルヴィアーヌは息を荒げていた!
初めて見る顔だった。冷たくも、傲慢でもない——!
ただの、怯えている少女の顔!
驚き、困惑、そして……頬が赤い。
「お嬢様から離れろ―――――!!」
その時、怒号が響いた。
ガチャガチャガチャガチャガチャガチャ―――――!!
鋼の音。兵士たちが一斉に駆け込んでくる。
鎧の音が地面に轟く!
「今すぐ離れろ――――!!」
「ぐッ!」
俺の体が後ろから引きはがされる!
槍が胸に突きつけられ、持っていた剣が抜かれた―――!
でも、......俺は抵抗しなかった。
「.....」
シルヴィアーヌはゆっくりと起き上がって、制服の埃を払う。
パターパター!
そして、何も言わずに俺を見つめてきた!
「.........」
周りは沈黙していた。
誰も、何も言わない......
ただ、彼女と俺だけが、見つめ合っていた!それも無言で!
その目には——憎しみじゃない何かが宿る!
そこにあったのは、
新しい何か...
危険な何か...
そして、......変わり始めた……何かだった!