ウェザー・リポート『ナイト・パッセージ』
ウェザー・リポートといえば『バードランド』の入った『ヘビー・ウェザー』か『ブラック・マーケット』がアルバムとして名高いと思いますが──
私の好きなアルバムはなんといっても『ナイト・パッセージ』、次いで『ドミノセオリー』です。
『ドミノセオリー』ではジャコ・パストリアスさんもピーター・アースキンさんももういらっしゃらなかったのですが、ドラムにオマー・ハキムさんが入り、ジョン・ボーナムばりのパワフルなドラムを聴かせてくれます。
『ナイト・パッセージ』はジャコさんとアースキンさんの揃った、いわば最強メンバーの頃のアルバム。
このバンドはインプロビゼーションや偶然の産物をよしとせず、とにかく計算の上での音楽を作ります。
ジョー・ザビヌルさんとウェイン・ショーターさんの織り成す異世界的メロディーにジャコさんのベースがヌルヌルと絡みつき、アースキンさんのドラムがセット全部を使って蜘蛛の糸のようにアンサンブルを支えるみたいな感じ。
アルバム全曲好きなんですが、何より1曲目に収録されたタイトル曲を聴いて『なんじゃ、こりゃ!』と衝撃を受けました。
ベースってこんな楽器だったんだ!? と、フレットレスベースを初めて聴いた私は新しい世界を知って憧れました。
フュージョンはそれまでにもリー・リトナーや日本のフュージョンバンドをよく聴いていたのですが、『フュージョン』の定義を破壊してくれるその『未知なるサウンドの追求』に、何かを悟りました。
型を破れ!
それも古いものを温めながら!
そして優しく、カッコよく!
んばば、んばば、んばば、んばば……と空へ上がっていくジャコパスさまのベースが耳を離れません。




