表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

邂逅


「なんでここにいるんだ」


それが最初の感情だった。


目の前で眠りについてる、もう二度とあえないと思っていた愛しい人を見て思う。


何度会いたいと願っても夢にすら出てきてくれなかった人。


私の前で眠るあなたを見て、疑問よりも恋しさが勝った。


結局ずっと愛おしいままなのだ。


今までの恋しさを埋めるように触ったら砂のように崩れるのだろうか、目の前の彼が妄想なのか夢なのか試したいと思った。


私は右手で寝てる彼の指先に触れる。


ゆっくりと、壊れないように次は間違えないように。

私だと気づかれませんようにと祈りながらそっと触れる。

私の指を握り返して、眠り続ける彼。

寝たままで私だと気づいてないから握り返してくれているのだろう。

彼は今夢の中で私じゃない他の誰かを思い浮かべてこの手を握っているのだろうか?

もしかしたらまだ私を覚えてくれていて懐かしい手だと感じてくれたのだろうか。

愛しい寝顔が思い浮かべる相手は誰なのか知りたいし知りたくないとも思う。

きっと今また新たに傷ついている私がいるのは無視して見つめる。




もっと触れていたいと思った。


この暖かい手も私に気づけばきっと冷たくなりそうなれば私はきっと寒くて凍えてしまうからふれていることはできないのだろう。


このままずっと目が合わなくてもいい。

気づかれなくていいからどうかそばで過ごしたい。

そばに居させて欲しいと厚かましくも願ってしまう。

苦しくて、忘れたいくらい焦がれていた人。

忘れてたかったけど覚えてたいとも思うそんな人。


頭で色々と考えているうちに、目を開けた彼を見てしまったと思った。

何を言われるんだろう。拒絶されるだろうか。

ひやりと指先が冷たくなる感じがした。


私の心情なんてお構いなしに彼は目を細め「久しぶり」と微笑む。


この笑顔がずっと嫌いで、大好きだった。 


私の目からこぼれ落ちるのは焦りと動揺と愛しさだからどうか一つだけでいいから拾い上げて微笑んで欲しい、少しでいいからあなたのものになりたいと思った。


左手で愛しい頬を撫でる。これがきっと最後だから忘れないようにゆっくりとこの柔らかさを、愛おしさをこの先ずっと覚えられるように願いながら触る。


この柔らかな景色を目に焼き付けたいし、ぐちゃぐちゃに引き裂いてもう見つからないように思い出すことなんてないように捨ててしまいたい。


私は何度もまばたきをする。

何枚も写真を撮るように何度も、何度も。

この先一生消えないで私の中にこの瞬間が残り続けますように。

ゆっくりと目を閉じて噛み締めるようにして目を開けた時、彼はまたいなくなった。


全部夢だったみたいだ、目が覚めて1日が始まる。

彼がいない1日がまた始まった。

続きます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ