表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/117

一からやり直してえよ、飯倉さん


「那覇か?」

「ああ」

 マッキーはラバーズ事務所に入所する前、沖縄県那覇市にあるアイドル養成学校に通っていた。そこでレッスンしていた彼をたまたま見つけたのが飯倉だった。当時大学生であった飯倉は訪れた旅先で、アイドル養成学校の前を通りかかり、興味本位で覗いていたら、特別なオーラを放っている少年がいる。

(すっげえ、誰だ、あいつ)

 それが13歳の近見真紀だった。この時すでに芸能プロダクションに就職すると決めていた飯倉は、この少年を育てて芸能界ナンバーワンにしてやりたいと思った。レッスンが終わるのを待って少年に声をかけた。

「アイドルになりたいんだろ、君?」

「誰、あんた?」

「俺、芸能事務所で働くことになったら必ず君を迎えに来るよ」

 近見少年は相手をしげしげと眺めた。目の前にいる男性はいまにも自分を東京に連れて帰り、デビューさせんばかりの勢いだった。これに近見少年も感化を受けた。

「だったら連絡ちょうだい。俺、お兄さんの事務所に行くわ」

「ほんとか!」

「ほんと」

「よし、約束だ」

「うん」

 そう言って二人は連絡先を交換した。その連絡先に8年ぶりに掛けてきたのが、アメリカから傷心帰国したマッキーだった。東京にではなく、故郷の沖縄へ逃げ帰えるように。

「一からやり直してえよ、飯倉さん」

「待ってろ、すぐそっち行く」

 すぐに行ける場所ではない。が、咄嗟に口にしていた。予定ではラバーズ事務所に辞表を持参するはずだったのであるが、行先を羽田に変えて、飯倉はその日最短で取れる那覇便のエコノミーシートを確保した。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ