表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/117

俺が第1の成功者になってやらあ


 マッキーは若かった。若すぎた。故にその先に何が起きるかわかっていなかった。当時、『テイクプレジャー』を担当していた同じく若き駆け出しマネージャーであった飯倉は、マッキーの行きすぎた行動を諫めるのに必死だった。

 ある日のこと。マッキーはラバーズ事務所との契約更改の際、とんでもないことを言い出した。それは同席した飯倉もまったく聞いていない話だった。

 ラバーズ事務所を一代で築き上げてきた海堂丈太郎は、当時36歳。こちらも若き社長だった。妹のメイコは32歳。大手証券会社を辞めて移ってきたばかりの気鋭に満ちた同族幹部。マッキーは海堂丈太郎とメイコ相手に、いきなりこんなことをぶちまけた。

「俺、『テイクプレジャー』辞めます」

 横に控えていた飯倉、目ん玉をひん剥いた。マネージャーとして何か言わねばと思ったが、先に丈太郎の言葉が入る。

「辞める? それはラバーズ事務所を退所するということか?」

 マッキーは丈太郎とメイコ相手にも(へりくだ)った態度は見せなかった。

「そうっす」

 そう言った後、足を組んで踏ん反り返った。丈太郎の目が険しくなる。

「どういうつもりだ?」

 するとマッキーは言った。

「USAに行こうと思って」

 若造の気取った言い方に、丈太郎は同じ言葉を避けた。

「アメリカか?」

 飯倉もメイコもその国名を頭の中で探るように旋回させた。丈太郎は訊ねた。

「アメリカで何をする?」

「向こうのミュージシャンと一緒にやろうって」

「誘われたのか?」

「いいえ」

 飯倉が怒りを露わにした。

「バカいうんじゃない! 通用すると思ってるのか! アメリカで成功した日本人など誰もいないんだぞ」

「だったら、俺が第1の成功者になってやらあ」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ