自殺総合対策の推進に関する有識者会議
だが、残念ながら『笑門来福⤴吉日』の解散後、自殺したファンの数はそれで留まらなかった。5月、厚生労働省が主催する自殺総合対策の推進に関する有識者会議がオンラインで開催されていた。座長を務めるのは、大学共同利用機関法人理事、花澤弘成。花澤は会の冒頭の議題「自殺の動向」のくだりでこう述べた。
「誠に悲しいことですが、今月だけで8人となってしまいました」
有識者会議の構成員で一般社団法人日本いのちの電話連盟常務理事の白鳥香澄がすぐさま手を上げるボタンを押した。花澤が白鳥香澄を指名する。
「白鳥委員どうぞ」
白鳥は訊ねた。
「それは『笑門来福⤴吉日』だけでですか?」
花澤は言った。
「『笑門来福⤴吉日』だけです」
画面に小さく映る白鳥は俯いて声を漏らした。マイクは彼女の嘆き声を拾い会の参加者に届ける。
「どうしてこうも・・・夢を売るアイドルが・・・」
NPO法人自殺対策支援センター代表の瀧屋史彦が手を上げる。座長の花澤は瀧屋を指名する。
「瀧屋委員どうぞ」
「ありがとうございます。そうすると、『笑門来福⤴吉日』関連死だけで先々月12人、先月6人でしたから合わせて26人ということですね?」
花澤は言った。
「そのとおりです」