解散するしかないです
「はじめから?」
飯倉は驚いてみせた。飯倉のわざとらしい反応を見て悠斗はさらに言った。
「登っている時はごまかせても、登り切ったらもう隠せない」
「なにが言いたい?」
そこを來嶋詩郎が付け足す。
「そもそもが自分たちで選んだ仲間じゃないんでね。作られた環境下で作られた友情ごっこ、どうしたってボロがでるに決まってる。売れて自分が一番偉いって勘違いしてるヤツだっているし」
「勘違い?」
飯倉の目が自然二人に注がれる。メンバーの座る位置は飯倉から見て、吉岡雅樹と笑原拓海を手前に、右に來嶋詩郎、福田剛士、門川慎之介の3人、そして日下部悠斗が左隅に座る。
詩郎は言う。
「慎之介がたまたま最初にキレただけで、あとのメンバーも互いのことが大嫌いだったはずだ。我慢してたのは、飯倉さん、あなたへの恩義があったからだ」
「私への?」
「そうです。アイドルとして売れたかった僕らをここまで連れてきてくれたのは飯倉さん、あなただ。それを僕らはぶち壊したくはなかった」
慎之介が恨みがましく呟く。
「俺だってぶち壊したくなんてなかった。でも、この二人はいつだって俺たちを下に見て蔑んでいる。それだけじゃない。社長と通じていて自分たちだけ優越的に仕事をもらってる。でしょ?」
「さっきから誰のことを言ってる?」
詩郎が呆れたように呟く。
「なにをいまさら」
その視線が笑原拓海と吉岡雅樹に注がれている。
「この二人がいる限り続けられない。今日の慎之介の行動はそれを赤裸裸にしたまでだ。僕も思いは慎之介と同じです」
詩郎の言葉に、慎之介、剛士、悠斗が同時に頷いた。
「ならば、どうしたらいいと思う?」
この後に及んで解決策を探る飯倉に、詩郎はきっぱりと言った。
「解散するしかないです」