殴って解決する問題じゃねえ
慎之介もやられっぱなしではない。反撃に出る。拓海の顔面に拳を突き入れた。拳は拓海の額にドンと撃ちつけられた。拓海より体が大きい慎之介の一発は重みがあった。拓海は上体を反らして2歩ほど後退りした。体勢立て直して拓海が笑う。
「おもしれえ。こうなりゃとことんやろうぜ」
「望むところだ! ギッタギタにしてやるぜ」
二人が胸ぐらを掴み合い激しくもみ合う。
そこへ駆けつけてきたのは吉岡雅樹と來嶋詩郎だった。雅樹が叫ぶ。
「やめろ二人とも! なにしてんだ!」
慎之介が叫ぶ。
「とめんな! もう許せねえ、こいつ、ぶっ殺してやる!」
「ここどこだと思ってんだ!」
リーダーの雅樹は冷静だった。
「コンプライアンス違反だぞ」
事務所の社長、海堂丈太郎から厳に戒められている。仕事でのケンカは絶対許さない。すればラバーズ事務所を退所させられる。しかし、慎之介はそんなルールなどもうどうでもよくなっていた。
「かまうもんか!」
雅樹が制止する。
「やめろって!」
そして、雅樹が慎之介を、詩郎が拓海を制止し二人を引き離す。
「離せよ!」
慎之介は治りつかない。
「落ち着け、慎之介! 殴って解決する問題じゃねえ」
拓海が呟く。
「あと、5、6発も殴ってやっても、学芸会野郎は目覚めねえだろうがな・・・」