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プロローグ


 雅樹は言った。

「あの頃より良くなったと思わね、俺たち?」

「思う思う。絶対思う」

 慎之介が屈託のない笑顔で応ずる。

 拓海が頷きながら呟く。

「飯倉さんとマッキーさんのお陰だな」

「ずっと見られてる気するもん、特に飯倉さんには」

 慎之介は目線を上げた。

「今日のステージまで見て欲しかったけどな」

 残念そうに雅樹がそう呟くと、詩郎が首を振って言った。

「見ててくれてるよ、きっと」

「そうだな」

 そんなやりとりをしていると、紅白のスタッフが彼らの控え室にやって来る。

「それでは、スタンバイお願いします」

 メンバー5人を舞台下まで連れて行く。

「紅白で()りに乗るの、何年ぶりかな?」

 妙に慎之介が楽しげだ。雅樹も振り返り顔を輝かせる。

「あれじゃん、初めて出た時。飛び上がって脚上げた後、剛士の靴が飛んでってさ」

 剛士も懐かしそうに思い出す。

「そうそう。あの時は焦ったよ。靴が審査委員の横すり抜けていってさ。本番ずっと靴下で踊ったもん」

「いろいろあったな」

 雅樹が感慨深そうに呟く。

「いろいろあったよ」

 慎之介も微笑みながら呟く。

「では、立ち位置ここでお願いします」

 そういってスタッフが昇降装置のくり抜き床を5人それぞれに示した時、詩郎が気づいた。

「ここは?」

 詩郎の横にもう一つ昇降装置が備わってあった。スタッフがニヤリと笑う。

「あちらの方です」

 そう言ってスタッフが手を差し出した先に、詩郎たちと同じ衣装を纏った男性が近づいて来る。

 メンバー一同目を丸くした。

「悠斗!」

 日下部悠斗がそこにいた。

「どうして?」

 悠斗は詩郎の横に立って言った。

「立石さんと田能村さんからね、どうしても紅白には出てくれって」

「でも、悠斗おまえ・・・」

「航空会社、早期退職したよ」

「えっ! な、なんで? なんでアイドルにまた?」

「聞くか? その答えを一番知っているだろうに、おまえたちが」

 スタッフが大きな声で全員に声を掛ける。

「本番いきまーす」

 6人の床がせり上がり始めた。慎之介が緊張した面持ちで衣装を整え直す。拓海が興奮した顔で呟く。

「やっぱやめられねえな、この仕事」

「やめられねえ、やめられねえ」

 呼応するように雅樹が声を重ねた。

 白組司会者の興奮したマイク音声が頭上から聞こえて来る。

「第77回NHC紅白歌合戦のトリを締めくくるのはこの方々! 熱い国民の期待に応えての再結成! 伝説のスーパーアイドル『笑門来福⤴吉日』の皆さんです!」

 大きな歓声が沸き起こる。()り上った光のその先に、彼らを待っているのはたくさんの国民の視線と、花束を持つサプライズゲスト。

「さあいくか!」

 雅樹の掛け声と共に、究極のアイドルたちが舞台に飛び出していった。


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