グループ名決定!
一話をご覧でない方は一話から読むことをお勧め致します。今回は短めのお話となっております。
昨日どうやって家に帰ったのかを覚えていない。それに頭が痛い。初めての感覚だった。熱になった時とはまたちょっと違う感じ。
そうか昨日はみんなと飲み会に行って飲みすぎちゃったのか。いわゆる二日酔いというものになってしまったのか。父が二日酔いになった時の気持ちが痛いほどにわかった。思ってる何倍も辛いことだった。
時計を見ると午前の十時を指していた。幸いなことに今日はまだ授業が始まらないからよかったものの。それに今日はまたみんなで集まってYouTubeの作戦会議を開かなくてはいけない。行きたく無い気持ちが八割ほどを占めていたが約束を破ることは出来ない。
ベッドから起き上がるとスーツのままだった。本当にどうやって帰ってきたのかな?
疑問に思いながらも着替えて一階に行った。
「あら、おはよう。あんた昨日泥酔してたわよ。だから友達が送ってくれたのよ。」
「え?そうなの。誰が?」
「名前は分からないけど背が高い子だったわよ。」
慎平が送ってくれたのか。今日会ったらお礼しないとな。
「大学でもう友達できたのね。良かったわ。」
母は怒るかと思っていたが嬉しそうにしていた。高校時代友達と遊ぶ事も無かったからだろう。友達と遊んでいる姿を見るのは久しぶりのことであろう。
「そういえば出かけなきゃ行けないから行くね。」
「分かったわ。遅くなるならLINEしなさいね。」
慎吾は集合場所へと向かった。どうやら大学近くのサイゼリヤに集合らしい。慎吾は遅刻しそうだったので走って駅に向かった。
集合時間に到着したが誰も着いていなかった。これでは困る。慎吾は先に店に入って待ってることにした。
昨日、酔った勢いで交換したLINEにこう打ち込んだ。
「集合時間だけどまだですか?」
それから暫くすると
「ごめん!今から行く!」
慎平から来た。
「すみません。今向かいます。」
克樹からも来た。
問題は航だ。恐らく既読すらつけていないのだろう。奴は昨日バカみたいに飲んでから症状は一番酷いのだろう。まあ、予想通りだったから仕方がない。
陰キャすぎて四人分の席に一人で待っているのはかなりキツイ。待つことは全然出来るけど一人でレストランなんて初めて入ったからな。牛丼屋とかそば屋くらいなら一人でも入ったことがあるけど。周りは女子高生や主婦層が多かった。女子高生はキャピキャピしてて楽しそう。慎吾には無かった青春を謳歌してそうだな。
二十分もしないうちに慎平と克樹は来た。
「ごめん。遅れちゃって。」
入ってきて慎平は謝罪をした。克樹も声には出てないが頭を下げていた。
「しょうがないよ。昨日飲みすぎたしね。意外と早かったね。」
「ごめん。自分と克樹は大学の近くで一緒に暮らしてるんだよ。だから早く来れたの。」
「えらいね。二人で暮らしてるの。」
「一人だと心細いしお金もないからね。二人で暮らせば安く暮らしていけるんだよ。」
そう言った後に慎平はコップの水を一気に飲み干した。
「二日酔いでしょ?」
「もちろん。」
「そういえば昨日送ってくれてありがとね。」
「全然いいよ。結構ふらついてて心配だったからさ。」
「とりあえず航が来るまでちょっと決めておこうか。」
「そうだね。」
「グループ名は沢山考えてきたんだ。」
そう言って慎平は紙を差し出した。
・スノードーム
・team4
・渦巻きボーイズ
・天ぷらの集い
どれもネーミングセンスがないと感じた。
「やっぱりダサいよな?」
「まぁ、悪くないと思うけど。」
気を遣って言ったのが分かってしまったのか。
「グループ名は後でだな。次はアカウントを作るか。」
YouTubeのアカウントは誰でも簡単に作成する事が出来るのだ。それこそやり方を教えれば小学生でも出来てしまうレベルだ。
チャンネル名は慎平が作成したため有原慎平になっている。
「この名前でやるか。」
「本名はヤバいな。」
慎平は笑いながら言った。
「編集は克樹が詳しいから克樹にやってもらうことにしたよ。」
「それは助かるよ。ありがとう。」
克樹は照れ臭そうにしていた。ちなみに昨日の飲み会でも克樹の声はいまだに聞いていない。ほとんどどころか話さないキャラなのである。これはかなり重症だな。
「航君が来たらアイコンの撮影と動画の撮影も軽くしようかな。」
「どこで?」
「ここだとヤバいから自分たちの家でやろうか。」
「いいの?」
「もちろん!」
こうして慎吾は慎平と克樹の家へと向かった。歩いて本当に二十分も掛からない場所にあった。よくあるアパートといった感じだ。ボロくもなく新しくも無く普通の状態と言った感じだ。
部屋に入ると1LDKだった。大学生の住む部屋は大体ワンルームだと思っていたがそんなことは無かった。でも二人暮らしと考えれば妥当であるなとも感じた。部屋の中は格別綺麗では無かったが汚いと言うレベルには満たない。
「そんなに綺麗じゃないけど上がって。」
「いやいや、お邪魔します。」
慎吾たちはリビングテーブルに座りこんだ。テーブルの上は食べ終わったカップ麺が置いてあった。それに胃薬も置いてあった恐らく昨日のせいで服用したのだろう。
「作戦会議と行きたいところだけど航はどうしたのかな?」
慎平が疑問そうに言った。
「確かに。不謹慎な話になるかもしれないけどまさか事故にあったとか。」
「ありえなくないな。こんなことしてる暇は無いね。航のこと捜索しようか。」
気が付くと時計の時刻は15時前を指していた。流石に家に帰って寝ていると願いたい。
「でも、家がどこにあるか分からないんだよ。」
慎吾はそう言った。
「大丈夫。オープンマートの近くのアパートとは聞いてるから。」
「行ってみよう。」
こうして慎吾たちは捜索を開始した。
オープンマートはコンビエンストストアのことである。元々、駐車場だったところがコンビニになったらしい。慎吾は地元民ではないので勿論知らないが。
しかし、そんな呑気なことを言っているのも束の間だった。この後衝撃のシーンを我々は目撃する事となるのだ。
「わ、航?」
「え?嘘だ。」
慎平と慎吾は口々にそう言った。克樹も驚きの表情を隠せない。我々三人は動揺を隠せなかった。こんなことになるとは。
なぜなら航がゴミ捨て場で寝込んでいるのだ。そんなことあるのか!
「こ、こいつ。」
慎平は今にも吹き出しそうだ。
「一応撮影しておくか。」
慎吾も笑いを堪えながらスマホを取り出した。
航はここがベッドだと思い込んでいるのかグースカ寝ている。しかも昨日のスーツのままだ。家にすら帰っていなかったのか。
そう思っていると大爆笑が聞こえた。聞いた覚えのない声だった。それもそのはず克樹が大爆笑をしていたのだ。
「ワハハハハ。」
口を大きく開けて笑っている。こんな克樹の姿初めて見た。慎吾は驚いてしまった。
「そうなんだよ。克樹は火山が噴火したように感情が出る時があるんだな。」
慎平は野球の解説のように慣れた口調で話した。
「そ、そんな笑い方するのか。」
そう言った慎吾も大爆笑である。
慎平も腹を抱えて笑っていた。
「ん?なんか騒がしい。」
航が起きた。
「みんななんでここにいるの。てか俺なんでこんな所で寝てるんだよ!」
その瞬間三人はあり得ないほど笑った。記憶がぶっ飛ぶほど。
「おいおい。笑いすぎ。」
航は恥ずかしそうに顔を真っ赤にし出した。
「やめろやめろ!おい!てか携帯ねえし。」
どうやら航はどこかへ携帯を無くしてしまったらしいな。
「だからLINE見れなかったんだね。」
慎平は少し笑いが治った様子で言った。
克樹と慎吾は過呼吸レベルで笑っている。
「傑作が撮れたよありがとう!」
「もうやめろ!それより俺、携帯探してくる。」
そう言うと勢いよくゴミ捨て場から航は飛び出した。
寝起きなのにかなり早い足でどこかへ颯爽と走り去ってしまった。
「これ、一本目の動画にしよう。」
慎平はそう言った。
「それ、面白い。そうするか。」
「グループ名も今決めたよ。」
この瞬間、命でもあるグループ名が決まった。
泥酔サークル
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