みんなとの出会い
今回の作品からは連載という形にしました。みんな大好きYouTuberを題材としました。友達とグループYouTuberを結成する姿をご覧下さい!
慎吾は非常に困っていることがあるのだ。それは大学での課題が終わらないことである。課題と言っても入学前に行う課題である。大学の課題は高校の頃と違い、難易度も高い。慎吾は指定校推薦で入学したので基礎学力は勿論無いのである。慎吾が入る大学は少しレベルの高い大学だ。みんなが名前を聞けば分かるであろう。
来月には入学式があり、そこで課題は出さなければ行けないのだ。
しかし、慎吾は手元にある携帯をいじり出した。慎吾はとあるYouTuberにハマっているのだった。
YouTuberとは勿論ご存知であると思うがYouTubeという動画投稿サイトに動画を投稿し、そこで得た収益で暮らしている職業である。少し前まで世間には認めて貰えなかったが芸能人のYouTubeデビューやニュースによって地位が上がったのだ。
慎吾はそんなYouTuberに憧れを抱いていた。初めて見たかったが勇気が出なかった。グループでやるにしてもそんな仲間などいないのだ。
そして入学式前日になってしまったが慎吾は課題を終えることは無かったのだった。
しかし、慎吾は課題なんかよりもさらに心配していることがあるのだ。それは、友達を作ることができるかだ。学業なんかよりも心配なことである。
慎吾は高校時代、俗に言う陰キャのポジションであった。陽キャは部活や勉強、青春を謳歌している。学校帰りはみんなでマックに寄ったり、休日はディズニーか何かに行っている。文化祭や体育祭では一番張り切っている人種だ。
しかし、ご存知の通り陰キャは全く異なる生活を送っている。
部活などは入っていないし、入っていても卓球とかよく分からない文化部に入っている。慎吾は部活には一応入っていた。しかも天下のサッカー部だ。サッカー部に入っていたのに陰キャと言うのは中々珍しい分類だろう。他の部員は彼女もいるし陽キャであった。陰キャは勉強が出来ると勘違いされがちだが意外と出来ないのだ。陽キャの方がいつも好成績を取っていた。学校が終わると部活が無ければ秒で帰宅する。休日はアニメやYouTubeをずっと見ている。そして夜更けまでオンラインのゲームをする。ここでのフレンドが唯一の友達だ。文化祭と体育祭はもちろん地獄のイベントだ。慎吾は毎年都合をつけて休んでいた。そのせいで親族は何人死んでしまったのだろうか。
だからこそ、大学に入ったら大学デビューを果たしたい。陽キャのサークルに入って男女仲良くして飲み会に行ったりしてみたい。講義が終わればスタバに行って、服屋を巡り休日は下北沢に行ったりディズニーに行くのが夢だ。バーやクラブで飲むのも楽しそうだ。
慎吾は不安や期待を抱いていたのだ。
とりあえず課題は終わらせることができた。正しいかは分からないがとりあえず出す事が大事だ。出さないのはフィールドにも立っていない事になる。
とうとう、入学式当日になった。今日は珍しく早起きしてしまった。不安すぎてほとんど眠れていなかったが。
「あんた、まだ行かなくていいの?」
慎吾の母は階段の下から叫んだ。
「もう直ぐ出るよ。」
そう言いながらネクタイを結ぶのに苦戦していた。高校は学ランだったからネクタイなんて結ぶ機会も無かったから。スーツなんて初めて着た。
慎吾はネクタイを結び終え、ジャケットを羽織ると急いで家を出た。
大学は電車で三十分の所にあるので実家暮らしだ。一人暮らしがしたいとも言ったが両親から反対された。まぁ、このだらしない性格だからしょうがないのかもしれない。
しかし、どうにも満員電車は好きに慣れない。近くの加齢臭を放つおじさんがキツすぎる。しかし悪いことばかりでは無い。可愛い女性も少なからずはいるのだ。大学に入ったらこういう子と遊びたい。高校では女子とは話せなかったが大学では絶対に話せるようになりたい。彼女を作るところまでいかなくてもいいから。
気がつくと大学の最寄り駅まで着いた。都心にあるので乗り降りする人は多い。ビルが多く立ち並ぶ場所に大学は存在する。こんなところでキャンパスライフを送るのが夢だったのだ。そのためにこの大学を選んだのである。
駅からは歩いて五分もしない。大学近くに着くと初々しいスーツ姿の大学生が多く集まっていた。まだ、グループも出来ていないので個人でいる奴が多い。同じ高校なのか少しグループはいるがあまり多くはない。今はみんなが仲間でいるような気がしていた。
女子のスーツ姿も悪く無いものだ。制服とは違った良さがある。スーツ補正もあるかもしれないが可愛い女の子が多いと感じた。
慎吾は看板の案内に沿って入学式の会場へ向かった。席は自由だった。
慎吾は陽キャが多そうな席を選んだ。もしかしたら話しかけてくれるかもしれない。右隣は金髪メッシュ、左隣は黒髪センターだった。周りが静かだったので話しかけたり話しかけられることはないであろう。本番は入学式が終わった後だ。そこでサークルの勧誘や友達作りが行われる。それまでは適当に式に臨むだけだ。
長い長い式が終わり会場を出るとサークルの勧誘が早速行われていた。テニス、サッカー、バスケなど色々あったがどれも名ばかりで飲みサーであるに違いない。とりあえずサークルよりも友達を作ることに専念しよう。サークルは後ででも良いだろう。
先ほどの金髪とセンターを探してみることにした。恐らく、あの二人がすぐに家に帰るわけがないだろう。二人を探してみたが、この人の多さでは見つけるのは難しいかもしれない。
しょうがないから違う人を探すことにしようか。近くに陽キャであろう軍団が集まっていた。慎吾はその軍団に近寄ろうとした。しかし、なぜか足が竦んでしまった。なぜだ、行こうとしているのに足が棒のようになってしまった。
恐らく陰キャの恐ろしい習性が残ってしまったのであろう。どうしても前に進めない。やっぱり慎吾に大学デビューは困難であったのであろうか。慎吾はそのグループは諦めることにした。他の子にしようと思いUターンをしようとすると
「おう!元気か?一年生だよな?よろしくな!」
オレンジに近い金色に染め上げた少し短髪の男が話しかけてきた。
「ああ、よろしく。」
他にも何か言おうと思っていたが言葉が出てこなかった。これも陰キャの悲しい習性だ。この人は恐らく陽キャであろうと慎吾は思っていた。
「てかさ、サークルとか決めた?俺、女子の多いところにするわ。てか酒飲みてえ!タバコも吸いてえな!」
この瞬間、慎吾はすべてを察した。こいつ、明らかに陰キャだ。なぜなら長いこと陰キャをやっていると分かるのだ。こいつも大学デビュー狙いだ。きっと酒・タバコがかっこいいと思っているのだろう。気持ちは分からんでもないが。
「特に決めてないよ。そういえば名前聞いてなかったよ。僕の名前は菅原慎吾。呼び方はなんでもいいよ。」
勇気を振り絞ってここまでいう事ができた。それにこいつも恐らく陰キャという事が分かり話しやすくなったのであろう。
「おう、俺の名前は宮下航。俺の名前はわたるって呼んでくれ。慎吾は慎吾でいいよな?」
「もちろん。サークルでも探しにいく?」
「そうだな。いくか。」
わたるは早速、サークルを探し出した。さっきの陽キャグループに話しかけるかと思ったがしなかった。航はそのグループを大きくよけるようにサークル勧誘に向かった。やっぱり周波数の合いそうな慎吾に話しかけたのであろう。嬉しかったが複雑な気持ちもある。
「こことか良さげじゃね?」
航の行ったところはダーツサークルだった。
「君たち入りたいの?」
そこにはがちがちの陽キャの先輩が立っていた。髪型はマンバンだった。
「ま、まあそんな感じっす。」
わたるはさっきと違いどもりながら言った。やっぱりこいつは陰キャ確定だ。
「そうか。興味があったら是非入ってよ。人数多いからさ。」
「あ、ありがとございます。他も見てみます。」
わたるはそう言って違うところに行こうとした。慎吾は軽く会釈してわたるについていった。この先輩は良い陽キャであるように見えた。こういう陽キャは好きだ。
「ほかに行きたいとこある?」
まだ一個しか行ってないのに航はベンチに腰を下ろして言った。
「特にはないかな。サッカーちょっと興味あるけど。」
「サ、サッカー?もしかして慎吾ってサッカー部だったのか?」
「まあ、一応。」
「なんだか負けた気分だよ。」
「なんでよ。」
「とりあえず今日じゃなくてもいいな。今日は仲間になった記念に飲みに行こうぜ!俺、酒強ええからさ。」
なんだか憎めない子だ。見た目だけなら結構陽キャなのに。
「あれ?君たちもサークル探してたの?」
ベンチに二人組の男子が来た。話しかけてきた方は黒髪でパーマをかけている。背がけっこう高かった。一方、パーマの後ろにいる子は茶髪のマッシュだった。背は慎吾と同じくらい。
「おう、そうだよ。でも今日はいいかなと。また明日探そうかなと思ってて。」
航はそう答えた。
「そうなんだね。自分たちもそうしようかと思ってた。」
「よろしくね。よかったら明日一緒に回ろうよ。」
慎吾はその二人組にそう言った。この二人組もぱっと見陽キャだったが中身は100%陰キャだろう。自分たちに話しかけるときに分かってしまった。
「いいね!ちなみに自分の名前は有原慎平だよ。呼び方はしんぺいでいいよ。」
「よろしくな。おれは宮下航。」
「僕は菅原慎吾。」
「この子は高校からの友達なんだけど全然話さないんだよね。自分が代わりに紹介するね。谷本克樹。」
慎平がそう言うと克樹は軽く会釈をした。陰キャの中でも重度の陰キャなんだろう。見た目ではそう見えないのに面白い。
「せっかくだから親睦を深める為に飲みに行こうぜ!」
「いいね!自分も行ってみたかった。」
「じゃ行こうか。」
そして慎吾、航、慎平、克樹の四人は近くの飲み屋に行くことにした。大学の最寄り駅近くには多くの飲み屋が存在する。慎吾もみんなも初めて飲みに行くに違いないそもそも入れるのだろうか。少しドキドキした。
「山九って店なら年確されないし安いよ。」
「いいね!」
航がそう言うと慎平は賛成した。慎吾と克樹はうなずくだけだった。
店に入ると店内はざわついていた。仕事帰りのサラリーマンから自分たちと同じような大学生までいる。よくドラマとかでみる感じと同じだった。お酒と料理とタバコのにおいの混じったなんとも言えない香りが漂っている。初めて味わう雰囲気だった。慎吾は少し勘当を覚えた。
四人は席に着くとそれぞれ生ビールを注文した。初めて飲むのに雰囲気的に生ビールを飲みたくなった。みんなもそうであろう。
乾杯の音頭を航がとるとジョッキの音が響いた。初めて飲んだビールの味はとても苦かった。お父さんはこんなものを美味しそうに飲んでいたのか。ちょっと良くわからないな。
「自分にはまだ早かったな。」
慎平は正直にそう言った。
「そうかな?俺はなれたもんだぜ。みんなまだまだ子供だな。」
航も苦そうな顔をしていたのに強がっている。相変わらず克樹は静かだった。
「自分と克樹はさあ、高校の時陰キャだったんだよ。だから、大学になったらデビューしようと思ってたけど難しいね。でも航君と慎吾君がいてよかったよ。」
「そうか?俺に感謝だな。」
「僕も良かったよ。友達出来るか不安だったし。僕も高校の頃、陰キャだったから大学では挽回したいよね。」
「どうしたら大学デビューできるかな?」
慎平がそうつぶやくと航は答えた。
「いっそのこと軽音サークルに入ってバンドでも組んでみるか?」
「僕、音楽全般苦手だな。」
「自分も。苦手だ。」
慎吾と慎平はそう答えた。
「まあ、俺も楽器はできないんだけどな。」
「なんだそりゃ。」
慎平は笑いながら言った。
「グループYouTuberでもやる?」
慎吾は冗談のつもりで言った。みんなの動きが固まった。やっぱりまずいことを言ったのか。
「おい!それいいな!」
意外な返答が航から帰ってきた。
「確かに悪くないかもね。YouTubeで稼ぐの憧れてたんだよね。」
慎平も賛成であった。克樹も賛成するように頷いた。
「なんだ。みんな賛成なんだね。そうと決まればやってみるか。」
「そうだな。」
「明日、また集まって決めようか」
航と慎平はそう言った。
「そうと決まれば今夜は飲み明かすぞ!」
こうして我々四人のグループYouTuberは結成された。
拝読いただき誠にありがとうございました。これからも続きますのでお楽しみにしてて下さい!