8話 出会い その8
「じゃあ、今日の放課後一緒にいきませんか?」
「喜んで」
「私もぜひ」
ユリはニコッと笑いその場を立ち去るところを見届ける。
「そういえばお前」
「お前じゃなくってアミって呼んで」
「おめえ俺が他の女子と話すときめっちゃ噛みついてくるって思ってたんだけど」
「呼び方!別に私だってTPOはわきまえてるんだからっ!」
フンスっと自慢げな表情をするが別に自慢できるほどのものじゃないだろ。
「内心は?」
「殺したい」
ニコッと本音をぶちかましてきやがった。
表情と言っていることの差がありすぎて上を見て深呼吸をする。
「まぁ別にそこまでの気持ちはないけど」
「無いのかよっ」
「だってあの子かわいいから」
「へぇ~、お前がそんなこと言うなんて」
「めちゃめちゃに壊したいよね」
やっぱりアミは苦手だ。
「そういえば」
「何?」
アミは首をかしげて訊いてくる。
「名前言ってなかったわ」
「あぁー」
放課後、文芸部に行くために準備していると、
「じゃあ行こうか、シュン君」
アミがなんかいい事でもあったかのように満面の笑みで話しかけてきた。
「そういえばアノは?」
「バカだから女子といちゃつきに行ったよ」
「お前アノに当たり強くなってね?」
「んなこたないよ。ただ好感度下がっただけだよ~」
「まあ、いっか」
アミと一緒に文芸部の活動場所へ行こうとすると教室の入り口でユリが立っていた。
「あ、柏原さん」
アミはユリに気づきすぐさま駆け寄る。
「あ、その、えっと……」
「そういえば名前まだでしたね、私は望月アミです」
「望月さん」
「アミでいいって」
アミはユリの前に手を差し出して握手をしようとする。
「じゃあアミさん、よろしくお願いします」
ユリはそれに応えるかのように握手をするが、
「ちょ、あ、アミさん?!」
アミはユリの手をぎゅっと強く握りしめる。
「柏原さんってかわいいですよね」
アミはユリに体を近づけ息を荒くしていく。
「おい、何してんだよ」
俺が止めようと声をかけるが、
「え、そんないきなり。……私、初めてなので優しくしてください」
「お前もまんざらでもなさそうだな!」
朝のアミとアノのやり取りが脳裏によみがえり、それと同時にいやな悪寒がしてしまう。
「あ、でも、シュン君と遊ぶときは私を通してね?そうしなかったとき、あなたに何するか分からないから」
「お前TPOはどこ行った!」
どうやらアミのTPOは不完全だったらしい。
「あ、あの、行きましょうか」
ユリが話を切るように訊いてくる。
「ちょっと待って、もうちょっとこのまま」
「俺お前の事嫌いになりそう」
「よし、いこー!」
アミはユリを離し文芸部へ向かう。
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