5話 出会い その5
「で、何を話していたの?」
アミがジリジリとにじり寄ってきてポッケに忍ばせていたシャーペンを取り出して首元に突き立ててくる。
「う、んー、なんていうか、その」
「部活の話をしてたんだよ」
俺が話していいのか言い淀んでいると脇からアノが何のためらいもなく正直に話す。
「へ~、で?」
アミは何かにとりつかれたように追求をやめない。
「あ、あぁ、アノが文芸部に入るって」
「ふ~ん、そうなの。で?」
「え?」
「だからシュン君は入る部活もう決めたの?」
何かしらの疑いをかけられているのだろうかシャーペンが少し食い込む。
命の危険を感じてしまいシャーペンに手を伸ばし力ずくで引き離そうとするが
「ホントの事言わないとどうなるか分かるよねぇ?」
アミはにこやかな笑みでシャーペンを指すのをやめない。
小さい時からの幼馴染だから大体の考えていることは分かってしまうがこの時の考えだけは読み取ることができない。
こういう時は正直に言うことが正解なので恐る恐る告白する。
「文芸部に入ろうかなって」
「え!?私に相談せずに決めるって」
「まだ決まってないけどな」
「やっぱり私はいらない女だったんだね」
アミは訳の分からないことを口走ったまま脱力しながら背を向ける。
正解なのか不正解なのか分からない反応が来てしまい内心どうすればいいか焦ってしまうが隣にアノがいることを思い出し助けを求めようとするが、
(朝は私が頑張ったんだから次はシュンの番でしょ)
(アミの頭何考えてるか分からないから助けろよ)
(助けてやってもいいけど、その代わり私とベロキッスしてよ)
(なんでだよ!お前男にしか見えないから普通にやだよ!)
(じゃあこの話はナシかな?)
(ナシ)
小声でのやり取りを終え、アノが心なしか残念そうにしているがそれを無視して俺はアミの元へ駆け寄る。
「なあ、元気出せよ。お前がそんなにしょぼくれてちゃいつものかわいい顔が見れないだろ?」
少女漫画のヒーロー風にアミを慰めようとすると、
「じゃあ、私の事好きって言ってバックハグして。そしたら元気になる」
「バラエティ番組の一般人が俳優にお願いするやつみたいだな」
俺は仕方なくアミの背中に近づきバックハグをする。
「アミ……、」
「どうしたの?」
「かくれんぼで鬼が勝手に帰ると監禁罪になるんだって」
「えっ、そうなの!?あ、じゃなくて」
「ハグと食事はβエンドルフィンを分泌してリラックス効果とストレス軽減になるんだって。一緒に昼めし食うか?」
「あ、う、うん」
チョロいな。
「チキッたな」
アノが変なことを言うが気にせずに食堂に向かうことにする。
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