3話 出会い その3
俺は教室に入り、1時間目の授業の準備をするが、どうやら教科書を家に忘れてしまっていたらし
い。
「やっば、どうすっかな」
「シュン、また忘れたのかい?」
俺がどうしようか悩んでいると隣の席からイケメンオーラを出しまくっている鳳上院アノが体を近づけて迫ってくる。
アノは高身長で髪型はショートであるため見た目は美少年にしか見えない。
そのため、外見の影響からか周りの女子からは「アノ君」と呼ばれてちやほやされているが中身はちっともまともではない。
アノとは中学時代からの友達でまあまあ仲が良かったとはいえ急接近されると色々きつくなる。
「そんなに体近づけんな]
「おいおい、そんなに嫌な顔をするなよ。まぁ、君の嫌がる顔もかわいいよ。僕のロミオ」
周りにいろいろな花が舞い散る幻想が目に飛び込む。
アノは俺のあごをクイッと引いた後に体を壁の方に押し付けてくる。
一部の層には需要があるかもしれない画になっているが正直「なにこれ」という考えしか思い浮かばない。
アノの手を払い壁から体を離すように力を入れるがアノはすかさず体を俺の方に近づけまたもあごクイッ状態になり体を壁に押し付けられる。
壁から離すように押し返そうとするが思った以上に強い力で押さえつけられていて体がビクともしなかった。
「どう、体の重心を捉えているから動かないでしょ」
「なにこれ」
アノはスススっと俺の股の下に膝を上げながら歪んだ笑みを口元に浮かべ、
「君の股間の運命は私が握った!」
「ねぇ、なにこれ」
「ふふふ、ゾクゾクするでしょ」
「なんなの」
すると、終始横目で見ていたアミがいきなり割って入ってくる。
「ちょっと!なにしてんのよ!私興奮しちゃう…、いえ、シュンくんの貞操は私のもの…、いえ、シュンくんは私のものよ!!」
「ごまかすと思ったら本音しか言ってねえな」
アミはアノを敵視しながらズカズカと近づき俺とアノを引き離すが、やがてその目は俺の方へ向けてきて、
「いい?あなたは私のものなの」
「全然違う」
「私だけを頼ればいいの」
「何言ってるの?」
「私の言うことを聞いていればいいの」
「お前の言うこと聞くまで動けないとかいやだよ」
「そ、そんなこと言わないでよ。グスッ」
反論し続けると、アミは目に涙を浮かべ顔に手を当てながら膝から崩れ落ちる。
「あれま、どうすんのこれ」
アノはジト目でこちらを見ながら訊いてきた。
「おめえが変なことしてくるからこんなことになったんだろうが」
「いやいや、ホントは君もその気だったはずだよ」
「どこをどう感じたらそう受け取れんの?」
「仕方ないなぁ」
するとアノは優しくアミの首後ろに左手をまわし右手で涙をぬぐい話しかける。
「大丈夫、大丈夫だよ。安心して。シュンは一生私が養うから」
「あんた、ちょっと何言ってるのよ!!!」
アミの怒号が教室全体に響き渡りクラスメイト全員がこちらに注目する。
「ほら、元気になった」
「違うベクトルで元気にさせんな」
アミはアノの胸ぐらをつかみグラグラと揺らす。
「ちょっ、やめ、苦し」
「もっとやってほしいとこだけど、やめたれ」
「しょうがないわねぇぇぇ」
俺が仲裁の言葉を投げかけると、アミはゆっくりとアノ胸ぐらから手を離し、空手の構えをとりつつアノからジリジリと身を離す。
ちょうどいい距離になったところで上段蹴りをアノの顔近くにお見舞いする。
アノは何事もなかったようにアミの足を下ろし素早く身を寄せ、
「君のようなお姫様がそんなことしちゃダメだよ。でも、怒っている君の顔もかわいいよ」
アノはアミの口元にそっと人差し指をおき口説こうとする。
またもや周りに花が舞う幻想が目に飛び込む。
こいつ男女見境なくこんなこと言うのか。
「え、で、でも私にはシュン君が」
アミは照れて伏目になり顔をうつむかせてしまう。
「お前もなんで照れんのさ」
こんな感じでやり取りをしてる間に始業の鐘がなってしまったので、おとなしくアノに教科書を見せてもらうことにする。
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