12話 アイツとアイツが合体して・・・、 その1
なんだかんだで体験入部ではなく普通の入部となってしまって色々な不安がよぎる。
「改めて、私は屋良アキラ。よろしく」
「俺は渡部シュンです。よろしくお願いします」
というテンプレ的な感じで自己紹介を済ませ疑問に思っていたことを口にする。
「ていうか、この部って何するんですか?」
「文芸部だから本を読むのよ」
「え、本を読むだけですか?」
「そうよ」
アキラは澄ました表情をしながら「うん」と頷くため疑ってしまうが、自分が想像していたよりも楽そうだったので追求をやめることにした。
「あっ、でも、入部したんならもう話していいか」
「何です?他にもなんかあるんですか?」
「実はあるんだな」
本を読むこと以外だったら何かしらの物語を書いてコンクールに出すことしか思いつかないが。
「この文芸部には不思議なものがあるんだよ」
「七不思議とかなんかですか?」
声のトーンが怖い話でもするかのように真面目になり、アミとユリも話を聞く姿勢になる。
「いやね、七不思議って訳じゃないんだがな」
「じゃあ、何です?」
俺は食い気味に訊いてみると、
「この文芸部にはな、書いた物語の中に入れる不思議な原稿があるんだよ。・・・・・・なんだよその目は信じてねえだろ」
アミと俺は「絶対ウソだろ」という目線を向けるがユリだけは違った。
「そんなものがあるんですか?!」
ユリは好奇の眼差しをアキラに向け、前のめりになりながら訊く。
「まあまあ、見れば分かるさ」
アキラはそう言って本棚の中にあった本を取り出していくと、手持ち金庫が出てくる。
アキラは手慣れた手つきですぐにその金庫を解除する。
「それがこれだ」
「どれがそれですが」
中にあったのは無数の雑誌だった。
すると、アキラは金庫の中にあった雑誌を全て取り出すと。
「もしかして、これらですか?」
「なわけないだろ。金庫よく見てみろ」
よく見ると中は厚底で何かが入っているように見えた。
アキラはカバーを取り、中に入っていた原稿用紙を見せつけてくる。
「見た感じ普通ですね」
「いいか?これは部員以外に見せたことないんだよ。他の生徒にコレ知られちゃうと悪用する人がいるかもしれないから、絶対に部員以外の生徒に見せんなよ」
アキラは原稿用紙をヒラヒラ動かしているため本当に大切な物なのか疑ってしまう。
「てか、書いた物語の中に入れるってただの夢とかじゃないんですか?全然信じれないんですけど」
「言ったなお前。できたら明日の部活中はずっと女装な」
「すみません、俺が間違ってました」
「えっ、そこはもうちょっと貫いて欲しかったけど。まあ、部長権限で決まったことだから今更そんなことねぇ」
潔く謝ったってのに俺にジト目を向けてくる。
「今書くからちょっと待ってて」
アキラはそういって机に原稿用紙を置き、鉛筆で文章をスラスラと書き進める。
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