能力アフター05話016
投稿します。
「しん!」
上空から聴き慣れた少女の声が聞こえる。
リボンの無い、簡易版のポニーテールの地味子さんだ。
「大丈夫?ケガしてない?」
風を巻いて降りて来るしずく。
荒れ果てた駐車場に立つ、白衣の少年が顔を上げる。
「たりめーだ!らくしょーーーだって!」
太々しく笑うしん。
「そっちも、やったみてーだな!」
片手をひょいと上げる。
『しず姉!』
躊躇する彼女を紫煙が即す。ニヤニヤ笑いが見えるようだ。
パアン、
ハイタッチして着地するしずく。
どうにも照れくさい。こういった体育会系のノリは、イマイチ気恥ずかしい彼女だった。
「そ、それで、那智は?」
照れ隠し気味に聞いてみる。
「う〜〜〜〜ん。」
困ったように上空を指さす少年。
雨粒の舞う暗雲に赤とオレンジの光球が輝き、遅れて落雷のような轟音が響いてくる。
「那智とあらた会長、、、、なの?」
AAの彼女すら追い切れない速度で展開する爆裂。
「まだ、、、、戦ってる、、、」
ゴクリと息を呑むしずく。恐るべきスタミナ、持久力だ。二人の能力キャパシティは底無しなのだろうか。
余人の介入など不可能のように、高速で絡みつく赤とオレンジの爆発。
と言って見ているだけでは済まない。
彼女達の少し前には、ギュッと口を閉じ、虚空を見上げる、智由先生がいる。
実の妹が戦っているのだ。気が気では無いだろう。
「私も、、、」
意を決して口を開こうとするしずく。
「やめとけ。ほぼ力を使い果たしたお前が行っても、何にもなんねー。」
にべもなく止める少年。
「で、でも、、、」
「紫煙に代わって待機だ。最悪に備える。」
「さ、最悪って、、、、」
青ざめるしずく。
「チーセンセー。あっちの建物で、雨宿りしよーぜ。」
気にした風でもなく、フラッと炉心建屋の隣の研究楝に向かう白衣の少年。
「先生、、、」
隣のリンが智由を促す。
「う、、、うん。」
なんとか移動を開始する智由。
「だ、大丈夫だよね、、、、ねえ、しん!」
彼の隣に近づき小声で聞く、しずく。
「今回は、残念だが理屈だと那智は勝てない。」
面白くなさそうにつぶやく少年。
「な、、、、、」
絶句するしずく。
「でも、負けはしねーよ。そーでなきゃ、オレがタイマンさせるわけねーだろ。」
なぜか、偉そうに、訳の分からないことを言う。
「、、、、、、」
押し黙るしずく。
本来の彼なら、イブちゃんを探しに、この場を去るだろう。そうしないのは、那智が勝てなければ、そこで全てが終わるからだ。正真正銘、これが最後の戦いだった。
「わかった、、、紫煙ちゃん。代わって。」
意を決し、告げるしずく。
まとう雰囲気が変わるポニーテールの少女。
「いーけどさ。言っとくけど、しず姉がすっからかんって事は私もそーだかんな。しん。」
手を頭の後ろで組んで、紫煙。
「え、、、、、そーなの?」
取り乱す、少年。何か都合のいい事を考えてたらしい。
人格が違えど、二人分の能力キャパがあるわけではない。
「ガ、、、、ガ、ガ、、、ガッツだ!ガッツがあれば、なんとかなる!」
ここでいきなり、根性論に走る。
(大丈夫か?この男。)
白い目を向ける紫煙。
モソモソとポニーテールを解き、絶縁のリングで、ツインテールに直す。
上空では、二人の衝突の爆発がさらに連鎖し、加速していく。
ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ、
怪物のような形の、層積雲が内部から、千切れるように、光が放たれる。豪雷が響く。絡み付く赤とオレンジの爆発。
「チッ、、、」
少女が雲を飛び出ると、アルカの夜景と荒れ狂う暗雲が、逆さまに回っていく。
「よくやる、、、、」
後に続く男が、独り言を呟く。
狙い撃つ炎弾。防御に撃つ物。追撃するホーミング。罠のための設置タイプ。牽制のその他。入り乱れる、彼、あらたの、不知火が、ことごとく阻止されている。
限界を超えて加速した知覚が、攻撃しているのか、されているのか混乱するほどの乱戦だ。
恐ろしいのは、彼女、野川那智。
最初は防戦一方だったが、凄まじいスピードで彼の戦い方を学習し、対応、応戦までしてくるレベルになっていた。
不知火は、防御しにくい炎だ。最低2発、それ以上の迎撃を必要とする。単純に考えると彼女は、彼以上のスピードとエネルギーで戦っているわけだ。
予想を超えた存在ではあった。
グワラガガバアアアアアアアアアアアアン、
落雷が、空の二人の間を切り裂くように輝き落ちていく。
「大したものだよ。那智。」
ウソ偽りなく、告げる、あらた。
「それは、、、、どーーも。」
雨を拭う那智。さすがの彼女も息が上がっている。
ほぼ、無意識だが、身体のあちこちから噴き出る炎が、暴風雨に流されないよう、姿勢制御をしている。
対して、あらたは、足の下に赤い炎のゆらめきが見えるだけだ。どういう理屈で、バランスを保っているのか、彼女には理解できなかった。
「必死だな。どうしてだ。何故こんな、くだらない街のために戦う。」
本当に、不思議そうに尋ねる、あらた。
「、、、、、、、、、、、、」
無言のままの少女。
「見たまえ。強欲と虚栄。打算と怠惰。差別と傲慢。ありとあらゆる悪徳を、あきる事なくむさぼり続ける、この醜い人工のハリボテの街を。」
二人の足元には、広大な国際核融合実験施設の向こう、嵐に煙るミニチュアのような深夜のアルカの街が広がる。
「君たちは知るよしも無いが、アルカは能力者のためのものでは無い。」
轟々と鳴る風が、言葉を引きちぎって行く
「それ以外の人間が、能力者を利用するためのシステムだ。」
そんな言葉も意味がない、と思うあらた。
もとより、殺し合いをしている人間同士の意思疎通などなんの意味もあるまい。
ボウ、
少女の後方、至近に見えない、さらにステルスに特化した、透明な炎弾の生成を始める。
完成には時間がかかるが、確実に隙をつけるだろう。
「いずれにしろ、風紀のし巻八重、涌井リラ、君たちが命を賭けて守る意味も、価値もありはしない。いつか真実を知れば君たちは、絶望するだけだ。」
淡々と話を続ける、あらた。
「会長さん、、、、、」
うつむいた少女が、言葉を発する。
「僕はもう生徒会長ではないよ。」
自分がイラついているのに気がつく。どうでもいいことのはずだ。
「会長さんは、会長さんだよ。」
どこまでも、真っ直ぐな瞳が向けられていた。
「私が生徒会に来た時も、その前からも、生徒会長だったんだよ。会長さんは。し巻先輩も瀬里奈副会長だって、認めてた、、、、」
何が言いたいんだ。この少女は。不快感がさらに募っていく。
「きっと、そんな、生き方もできた人です。
あきらめてしまったんですか、、、、、、立夏ちゃんを亡くしたから。」
グワアアアアアアアアンン、
少女の後方に激しい爆発が起こる。
意味もなく男、自らが、罠を放棄したものだった。
彼女の髪が千々に乱れる。しかしその視線はあらたを捉え続けていた。
「野川、、、、、那智、、、、」
にごった、虚無をうつす、あらたの瞳に初めて殺意が生まれていた。
少し前、
那智達は国際核融合実験施設に向かう車の中、月のイブと名乗る存在に、不知火あらたという人間の過去を知らされる。
「彼は、アルカの地下、スプロールスラムで生まれ育ったのじゃ。」
奇妙なホログラムのペンギンが続ける。
「いわゆる、IDの無いストリートチルドレンじゃな。彼には不知火 立夏という妹がおった。二人とも能力者の素質があり、なんやかんやで、地下の犯罪シンジケートに拾われたのじゃ。」
「おい、なんか、テキトーだな。」
白衣の少年が口を挟む。
「地下のバーの女主人に最初拾われたのじゃが、あまり話に関係ないからの。省略じゃ。」
イブは、アンバーTYPE01の記憶から、得た情報を話しているらしい。特に、あのヒョロ長のっぽに興味は無いが、敵の情報は貴重だ。聞いておくべきだろう。
「その犯罪組織の研究所で、妹の立夏が、アンバーTYPE01、つまり今の妾に会ったのじゃ。」
「その時点じゃお前じゃねーだろ。」
ちょいちょい口を挟む少年。
「いや、待てよ。お前、アンバーの意思領域が、自分の中にあったの気づかなかったのか?」
アンバーとあの日繋がって、イブが今の今まで、それに気が付かないと言うのもおかしな話だ。
「それは、、、、、秘密じゃ。」
プイ、とそっぽを向く魔法少女アニメのマスコット、ガブくん。
「放置してたのか!それで、体、乗っ取られてりゃ世話ねーーーーだろ!」
とてもうるさい、白衣の少年。
「いいから、少し黙ってなさい。しん。」
こちらを見向きもしないで、智由。
「話が進まないったら。ったく。」
仏頂顔の後ろの、那智。
「そんな事はどうでもいいのよ。しん。」
真後ろのしずくまで。
何故か女性陣は、イブの擁護に回る。
「どーーーーでもよくないだろ!」
わめくしんだが、
「今は、、、、、イブの話を聞くべき、、、、」
トドメにリンにまで言われて、あえなく沈黙する少年。
イブの話を要約すると、
唯一、眠るアンバーと意思疎通が可能な、立夏はすぐに彼女と仲良くなったらしい。
しかし、劣悪なスプロールスラムの環境のせいで、病に冒されていた立夏は、その数年後、治療の甲斐なく、あらたが、遠隔の地に組織の仕事で出ていた間に、死亡したらしい。
問題なのは、違法クローンである、欧米で開発されたバイオ脳の素体、アンバーシリーズだ。
そのクローンの肉体は不完全で、臓器の不全、筋組織の発達不全、神経伝達に問題があったり、と、とても完成度が高いとは言えず、アンバーTYPE01は、自ら、動くことも、話す事もできなかった。
生前、立夏は、アンバーに自分の死後、臓器移植を約束していた。
まるであつらえた様に彼女とアンバーの生体移植の適合率は高かった。
「アンバーが自由に、元気に、生きられたら、きっと私は嬉しいよ。」
あらたは、笑う妹の笑顔が忘れられなかった。
そして彼が、この街に戻って来た時、全ては終わっていた。
妹はいなくなり、その体のあちこちを移植された、アッシュブロンドの少女が、彼を待っていた。
その少女は、外見は違うのだが、彼には妹の面影がダブって見えてしまう。
そして、
感情の欠けた、妹の声で話す。
「初めまして。私は、アンバーTYPE01。」
それは悪夢のように美しい、妖精のような少女だった。
「どーーにも、胡散くせーー話だな。」
女性陣が黙ってしまったので、一人文句を言う少年。
最初から、その組織ってのが、不知火 立夏をアンバーのパーツとして考えていた可能性がある。
その部分はあらたも疑っていたそうだが、真相は藪の中。ついぞ明らかにならなかったらしい。
その後、妹を救えなかった自責、後悔が、アンバーを見るたびに、あらたの心身を蝕み、さらには犯罪組織の過酷な能力強化処置、残忍な任務などが、彼をイカれたサイコパスに完成させていったらしい。
まあ、よくある話だ。
「同情の余地はあるかもしんねーけどな。」
しかし、そんな事は、関係ない。
「ふん、、、、あいつ強化人間か。よかったな、那智。お前、勝てるかもしんねーぞ。」
投げやりにうそぶくしん。
「あんたは、、、、、、、、!」
食ってかかる那智。
「敵に感情移入しても、何にも何ねーぞ。自分が、くたばるだけだ。」
少年の瞳は、底冷えがするように、冷たかった。
「うるさい!」
ドカッ、
激しく前の彼のシートのヘッドレストを殴りつける那智。
そのまま黙ってしまう。
「って〜〜〜〜〜な!」
むち打ちになりそうなしん。
彼女には、こんな話を聞かせるべきでは、なかったかも知れない。もう後の祭りだが。
目の前に不夜城の如く輝く、国際核融合実験施設が見えて来る。
そして、現在、
ビョウビョウと吹き荒れる、風雨が、那智とあらたを叩いて行く。
遠く遠雷が、霞むアルカの街並みに落ちていく。遅れて、耳弄す炸裂音が鳴り響く。
「最初から、オレたちには何も無かった。」
至近の落雷が、亡霊のような男を照らす。
「生きる庇護も、権利も、人権も、明日の為の一欠片のパンも何一つ。」
男の増悪が、具現化したような、暴風が吹き荒れて行く。
「アルカに放置された、地下のスラム。そのワケがわかるか。那智。」
悪霊の様な瞳が、彼女を見ていた。
「人間の社会の矛盾の受け皿だ。」
幾つにも分離して伸びる落雷がアルカを照らす。
「落伍者。犯罪者。違法移民。マトモな生活からはみ出たゴミをまとめて、隔離させておくために、アダムによって、意図的に残された、ゴミ溜めだ。」
明滅する街の明かりが遠くかすれていく。
「さすが、天空の叡智さまだ。一定数の社会不適合者の存在を想定していたんだ。最初から切り捨てていたんだよ。」
男の両手に落ちる雨粒が、風に消えていく。
「では、人間とカウントされ無かった者たちはどうなる。骨と皮だけになり、止まない毒の雨に打たれて死んでいくだけか。」
守れなかったものを掴むよう、握られるこぶし。
白い病室で妹は、笑っていた。
「私は、きっと、アンバーと一緒にずっと、お兄ちゃんのそばにいるよ。」
その心臓が止まる時に、呼吸が止まる時に、自分はそばにいてやる事すらできなかった。
苦しかったのだろうか。悲しかったのだろうか、寂しかったのだろうか。
自分に冷たいオレを呪ったかもしれない。
おかしな話だ。オレは彼女を愛していなっかったかも知れない。わずらわしく思っていた事もある。彼女を亡くし、後悔する権利もありはすまい。
それでも、復讐はできる。
アダムに。
この街に。
この世界に。
「オレは誓った。妹の心臓に、臓器に、体組織に、血の一滴だろうと。」
グワラガガガガガガアアアア、
落雷が、狂気に染まる、不知火あらたを染める。
「この街を破壊すると。アダムを消滅させると。地上の人間を一人残らず根絶やしにすると。」
グオワワワオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ、
それは、不知火では無かった。単純な炎弾。
単純ゆえの、狂気の高出力。
嵐のアルカ上空が紅蓮に染まって行く。凄まじい小型の太陽が、幾つも、それこそ、夜空の星の如く、限りなく実験建屋上空を覆って行く。
「な、、、、、なに、、、、、あれ、、、、、!」
悲鳴を上げる智由。
振動が、研究棟を揺さぶる。
「イ、、、、イブ!」
マズイと思うしん。
「あらたの広域爆裂じゃ、、、、、出力は那智殿を越えておる、、、、」
電子のガブくんがパタパタとのたうつ。
「気でも狂ったか!あいつ、、、なんもかんも、吹っ飛ぶぞ!」
息を呑む少年。正気の沙汰じゃない。
グオゴオオオオオオオオオオオオオオオ、
炎の咆哮が雄叫びを上げる。
「死ね。」
何千回でも。
「死ね!」
何万回でも。
「死ね!!」
何億回でも。
「死ね!!!いくらでも、喜んで、一つ残らず、」
死ね。
「殺してやる。全て滅びろ。死に絶えろ。何もかも、灰塵に、消え失せろ!」
灼熱の暴風が吹き荒れる。
「死ね。死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!!死ねえええーーーーーーーーーーーー!!!」
灼熱の炎弾が二人を囲み広がっていく。
少女が、顔を上げる。
「それでも、、、、」
小さな炎が、手に灯る。
「それでも、、、、、みんなを、、、先輩たちや副会長さん、イブちゃんや、郁恵ちゃん。牧さんやおーじょーさん、学園のみんなを、街のみんなを巻き込むなら、、、、、」
彼女の灯火が、波のように広がっていく。
「私は、会長を許さない!」
アジア最強を冠する野川那智の力が、解放されていく。
「エクスプローーーーーーーーーーーーーーーーージョン!」
二人が同時に叫んでいた。
グワガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンンンン、
轟音が、激震が、衝撃が、嵐のように絡みつき、弾け、連鎖し、轟き世界を震わせる。
彼女が可能にしたのは、9×10の13乘ジュールのエネルギーを弾き飛ばし、相殺し、ほぼ無害に消し去った奇跡。
嵐が消し飛び、雨粒が砕け飛び、世界にきらめく光の粒が万華鏡のように、輝いていた。
ギシギシと軋む実験炉建屋が、衝撃のな残りを残すのみ。
「シャレになんねーな、、、、」
腰を抜かした白衣の少年が、うめく。
「那智殿、、、、じゃ、、、しかし、、、、そんな事が、、、、、」
ガブくんが、フリーズしている。
全能を誇る、究極の叡智が彼女のポテンシャルを測り損ねていた。
その上空、
ゴウゴウと吹く暴風雨の戻る中、二人の能力者が向かい合う。
アルカの街に千切れ飛んでいく雨粒を暗い目で、見つめるあらた。
「やはり、、、、想定以上の存在だよ。君は。」
息を切らし、それでも闘志を失わない少女を、奇妙な目で見つめる。
「決着をつけよう。」
静かに、右手を少女に向ける。
ゴオオオ、
虚ろな黒い瞳に赤い光点がともり、後ろで無造作に留めた癖毛の長髪が、紫色に輝き出す。
「会長さん、、、、、」
バシィン、
那智の周囲を旋回していた、二つの炎のリングが消える。
次に、
意を決した、少女の瞳に、サンライトイエローの光点がともる。ライトブラウンのセミロングヘアが、オレンジ色に輝き出す。
二人に、壊滅的なエネルギーが収束を開始する。
同時に、高速爆轟解放状態に突入していく。
暴風雨がそこから弾かれ、周囲にちぎれ飛んでいく。遠目にも上空の二人の輝きが見て取れた。
「決着、、、、か。」
息を呑む、しん。
「那智、、、、」
智由には祈るしかない。
「、、、、、、、、、」
あくまで、自分を会長と呼ぶ少女に、奇妙な感慨を持つ、あらた。
かりそめの学園生活が、ふとよみがえる。愚にもつかない感傷だろうか。
「言っておく。君では僕に勝てない。」
なぜ、こんな事を話すのだろう。
多分、あの日、生徒会室にやって来た、元気な後輩の少女に向ける、別れの言葉。
「君たちに投入されている、ナノマシーンによる、体調管理、生体パターン登録、ID管理に必修のそれは、AAAにとっては、特別な意味を持つ。」
いやむしろ、世界に20人前後確認されているAAAには、特別なナノマシーンが用意されている。と言っていい。
「それは、君たちの能力を封じ、最後の力を封印する為のものだ。考えてみたまえ、国家がそんな、核兵器にすら匹敵する力を、野放しにして置く訳があるまい。」
つまり、国家的許諾がなければ、AAAの本来の力は発揮されない。
「対して、僕にはその枷は無い。」
単純な話だ。
だが、面白くもなさそうに、仏頂顔の少女が答える。
「知ってる。こっちにも、変な事情通がいるからね。」
那智に、コチラに向かう車の中で、山下しんがヘラヘラと笑いながら言ったものだ。
「つーこって、お前は、なんちゃってAAAだったわけだ。」
なぜか楽しそうに笑っていた。非常にムカつく。
「最終的には、そのナノマシーンの除去を考えなきゃなんないだろーが、今は無理だ。だが、ガッツがあれば何とかなる!安心しろ。正義は必ず勝つのだ!」
と、心にも無いセリフを吐いていた。胡散臭いったらありゃしない。
「なるほど、、、、彼か、、、、」
どうにも、そんな国家的秘密情報が、安易に漏洩していいものだろうか。
まあ、あらたにはどうでもいい事だが。
「では、、、、本物のAAAの力を教えてやる。」
ゴオ、
渦巻くエネルギーが臨界を越えていく。
「はあああアアアア!!」
少女の集中が事象にさえ異変をもたらしていく。次元を越えてアクセスされた奔流が、超スピードで構築、形成され膨張を開始する。爆轟がアルカに響き渡って行った。
那智が両手を突き出す。
「デトネーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーション!!」
グワゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ、
サンライトイエローの輝きが唸りを上げる。
あらたがポツリとつぶやく。
「FAEデトネーション、、、、、」
轟音を上げ、青白い炎の輝きがそれを迎え撃つ。
二つの巨大なオレンジと青の炎がぶつかろうとしていた。それは今までのものとは、意味も質も違っている。
その光の中の刹那、那智は見ていた。
あらたの前に、アッシュブロンドのキレイな髪の少女の影が、
彼を守るように両手を広げるのを。
(イ、、、、、イブちゃん、、、、、?違う、、、、、立夏ちゃん?)
衝撃が来た。
グワガアアアアアアアアアアアアアンン、
全身が弾け飛ぶ。
それとともに、真っ逆さまに実験エリアの変電施設の鉄塔の中に墜落する那智。
その生涯で、単純に力負けしたのは、初めての経験だ。
目の前が真っ黒にブラックアウトし、一瞬で意識を失う少女。
完全な敗北だった。
また来週。




