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能力アフター  作者: 佐藤同じ
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能力アフター05話014

投稿します。

嵐の中を、国産の黒いバンは、水飛沫を上げて無人の町を疾走する。


「わらわは月のイブの領域の並列意識じゃ!」

変なペンギンのホログラムは胸を張る。

白衣の少年が、スマホを取り出してみるとやはり、拡張スクリーンの電影システムがオンになって、変なペンギンを映している。

「どーでもいいけど、音声だけにしてくんないか?イブ。」

携帯の電池がみるみる減って行く。立体映像は、特に要らないだろう。

「細かい事を、気にするで無い!主どの!器がちっちゃいの〜!」

「お前な〜〜。」

何が面白くて、変なペンギンにデスられなきゃならんのか。


「月のって、、、、イブちゃんなの?違うの?」

後ろのしずくが、覗き込んでいる。隣の那智もなんだかわからない様だ。その隣のリンは相も変わらず無表情だが。

「妾は、イブじゃよ。しずくどの。全く、同一の存在じゃ。」

ペンギン、ガブくんは自信満々に告げる。

「核融合実験施設に囚われておる、イブ、今はアンバーTYPE01じゃな。それと一瞬、接続し、情報を共有したのじゃ。」

「お前、そこに、いんだな。やっぱり。」

憎々しげに呟く少年。

「詳細はわからぬが、あらたたちは炉を暴走させるつもりじゃ。今そのプログラムを組んで、準備をしておる。」

「原子炉じゃないんだから、、、、核融合炉って安全なはずでしょ。」

運転に集中しながら、智由が聞く。ペーパードライバーにしては中々のペースで運転している。

「あそこの炉は、Zピンチ核融合炉じゃ。熱核兵器と同等の極、高温、高圧を再現できる。関東に水素爆弾が落とされると同じじゃな。」

パタパタとガブくんが、事実を告げる。


「ったく、、、、なんでそんな物が、、、、」

うんざりするように前を見つめる智由。あたりは、工業区から、居住区、学園、研究地区に変わっている。

「単純に高出力の探求じゃろう。後先考えない迷惑な話じゃな。第一、あそこは論理実験、のみのはずじゃったはずじゃ。どういった経緯かは知らぬが、まともな話ではあるまい。」


「お前な!アンバーを押さえて、なんとかしろよ!」

さしものの少年も核爆発は、冗談にできないらしい。

「無理じゃ。主どの。アンバーは超能力を使っておる。そうでなければ、妾が遅れを取るわけがあるまい。」


「なに、、、、」

息を呑む少年。TYPE01にそんな機能は無いはずだ。

まあ、もう、そんな事を言っていても、どうにもなるまい。


「奴らを倒すしかねーって事かよ。」

低くうなる、しん。

「急げよ。主どの。時間がないぞ。」

パタパタとガブくんが宙を舞う。


学園研究区、国際核融合炉実験施設。

制御室のモニターに映るアンバーがあらたに告げる。

「ここに真っ直ぐに、向かってくる車があります。」

「、、、、、来たか。」

最前列のあらたが、無表情に答える。


「厄介な話だ。想定より大分早いじゃないか。」

うっすらと笑いながら、長身の黒い丸坊主、丸サングラスのジノ フィッシャーが、二列目のオペレーター席から立ち上がる。

「あの坊や。中々のもんだ。」

サングラスの下の目が、冷ややかに光る。


「炉のプラグラム変更と準備にもう少し時間がかかります。」

モニターに映る、アンバーが感情の喪失した声で告げる。


「じゃあ、あいさつに出ましょうか。私はしずくちゃんね。」

三列目、司令席のエイダ レスターが笑う。

「たっのしみ〜〜〜〜〜〜〜〜。」

こぼれる声に狂気が滲む。


部屋を出る彼らにアンバーが、声をかける。

「キャンセラーをオフにします。ご武運を。」

あらた達と、那智達、

どちらかが勝つにしろ、その間に準備は完了するだろう。計画に支障はない。それだけの事だった。

なんの感慨もなく、彼女は作業を進めていった。


核融合実験炉の施設は、学園研究区と第一工業区にまたがって、広がっていた。こうこうと輝く施設の向こう、川崎側の海が流れていく。建屋の向こう、西側が嵐の海に面していた。


グオアアアン、

那智が、眼前に迫る広い入り口の門を吹き飛ばす。

警備の人員は一人も見えない。

正規の研究所の職員たちは、ここも波力発電所とSCADAと同じ運命を辿ったのだろう。

タイヤを軋ませて、広い駐車場に車を止める、智由。


「出てくる、、、、人数は、三人だけ。」

リンがポツリとつぶやく。

「ああ。」

少年が答える。

彼にさえわかった。キャンセラーが切られている。

野郎ら、正面切って、戦うつもりらしい。


「ケリをつけるぞ。」

ドアを開ける少年。


風雨が体を打つ。

防波堤に叩きつける荒波の水飛沫が、ここまで潮の香りを運んでくる様だった。

駐車場の先、

研究練、計測建屋の向こうに、三名の人影が見える。

「会長さん、、、、」

那智がつぶやく。

あらた生徒会長。彼の姿を見たのが、随分、昔の様な気がする。

その右に黒いコートの黒人、左に黒髪のショートボブ、赤いジャケットの女性が見える。


「エイダ レスター、、、、、」

しずくがゴクリと息を呑む。

彼女が押さえなければならない相手だ。人工降雨の力を借りて、しずくに匹敵する力を行使する。

「でも、、、、、」

負けるわけにはいかない。リラ先輩も、し巻先輩も、身を賭して戦っている。タワーでも、そして、智由先生の知り合いの特殊四課の人たちも、夜を徹して、救助活動を続けている。このアルカで皆がこの街を、みんなを守るために戦っている。負けるわけにはいかないんだ。

彼女にもう迷いはなかった。

最後の戦闘が始まろうとしていた。


同時刻、

第一工場地区、SCADA施設、


ガシャ、

メキメキと骨が軋む音がした。

「ぐっぎぃいっっ!」

左腕と左肋骨、4、5、6番がへし折れた様だ。

集中力がだいぶ落ちてきている。運搬用のフォワーダーに死角から突っ込まれた。

し巻はそのまま地面を転がり、廃材の放置されるブロックへ追いやられる。


グワガッ、

風刃で迫るフォワーダーの群れを蹴散らす。

足首もおかしいらしい、血を吐きながら、風の力を借りてホバリングする。後ろから6本の腕を振り回して襲いかかるテンタクロスを、風刃で両断する。

水飛沫を上げてトラクターシャベルを振り上げて迫るホイールローダーたち。


リラと二人、800台くらいは潰しただろう。

ようやく残り千台は切ったはずだ。

まあ、よくやった方だ。

「ったくよ、、、」

目がチカチカする。キャパオーバーが近い。限界が迫っていた。

こんな時なのに、彼女は奇妙な思いに捉われていた。


しずくを連れて保健室に転がり込んできた、山下しん。

「まぁいいさ。その前に情報収集だ。いいとこに案内してやるよ。山下。」


なぜ、自分はあの変態を誘ったのだろう。ほっておけばいいものを。


ガギャア、

ホイールローダーの脚部を狙い、転倒させる。

もう動きを抑えるくらいしかできなくなっていた。


多分好きにさせたら、あのバカは勝手に動いて、勝手に殺されただろう。

では、それじゃあ、

自分は彼に死んでほしくなかったのか。

いろんな意味で悪寒がした。


気がつけば3台のパイルドライバーに囲まれている。高圧力で打ち込まれるアンカーは岩をも砕く。

「チッ、、、ほんと、くだらねぇ、、、、、」

最悪な気分だった。

バシュ、

3方から打ち込まれるアンカー


ドギャアアアアアッ、

「にゃおおおおおおおおおーーーーーーーーーーーーーーーーんっ!!」

吹き飛んでいくパイルドライバーたち。

白く輝く、リラ猫が蹴散らしていた。

「リ、リラ!」

そのまま瓦礫の山にダイブして行く。彼女。

慌てて、動く右腕で起こしてみると、気持ちよさそうに眠っていた。

彼女はキャパオーバーを起こすと寝てしまう習性がある。リラも全身ボロボロだ。さっきのは最後の力を振り絞ったものだろう。

「ったくよ、、、、、」

思わず苦笑する。

「悪いな、リラ、やっぱ、付き合ってもらうぞ。」


残念だが彼女を逃す力も残ってはいないようだ。

右腕で彼女の胴を抱き、風を巻いて飛翔する。


「オラオラーーーーー!付いてきやがれ!ポンコツども!」

眼下に波のようにうごめく土木建設用パワーローダーたち。磁石にまとわりつく砂鉄のように群がってくる。


目の前に大小様々な白いガスタンクが海原のように並ぶ、コンビナートが見えて来た。

ホバリングしながら、その一つのパイプに着地するし巻。

「よっこらせ。」

パイプに寄りかかり膝にリラの頭を乗せる。

できればもっと中央まで、引き込みたかったが、限界のようだ。

もう風の力はほとんど形成できなかった。

「ムニャムニャ。」

呑気に身じろぎする、親友。

その、リラのキレイな顔についた汚れを、ハンカチで拭いてやる。

「じゃあな。相棒。」

彼女にしてはひどくやさしい物言いだ。


地響きをたててパワーローダーの波が迫って来ている。

「来やがれ、、、、一台でも多く地獄の道連れにしてやんよ。」

楽しそうに笑う、し巻の手には途中で拾った、M61手榴弾が握られていた。テロリスト達のものだろう。

二つある安全装置の一つを動かない左手で固定して外す。レモンなどと言う可愛い愛称で呼ばれる手榴弾だが、ガスタンクを破壊するには十分だろう。

連鎖爆発を起こせばここら一帯火の海だ。大部分は巻き添えにできるかもしれない。


ゴオオオオ。

津波のように地響きが近ずいて来る。


ふと、思い出したように、そっと自分の黄色いツインテールに触れる。

「あばよ。しん。」

吐息のように言葉がこぼれた。


「よくできました。ムニャ。」

寝言だろうか。膝でリラが身じろぎする。

まったく、寝ててもうるさい奴だ。狸寝入りだったら、ぶっ殺して、、、、

「まぁ、、、、いいか。」

苦笑する。


キン、

安全ピンを引き抜いて、安全レバーを開放した。


グワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンン、

まばゆい閃光がが周囲を包む。


「ミョルニルーーーーーーーハンマーーーーーーーーーーーーーーーー!!」

長身の影が、15万メガジュールの雷鳴を振り下ろす。


グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオーーーーーーーーッ、

紅蓮の濁流が周囲を焼き払う。


「ハンドレットーーーフレイムーーーーウイップーーーーーーーー!!」

赤毛のカーリーウエーブヘアが、6500度の炎の火鞭の嵐を叩きつける。


凄まじい破壊のエネルギーが地をえぐり、周囲のパワーローダーたちを破壊しつくしていく。


嵐を吹き飛ばす、二人の少女が、SACDAに立っていた。

「いったい、、、、なんの騒ぎですの?これは??」

三高のエース、炎のAクラス王城たまきがうっとうしそうに周囲を見渡す。


「あ、、、し巻先輩!何やってるんですか?」

長身のポニーテール。二高のエース、電撃のAクラス、日向まこがめざとく二人を見つけて駆け寄ってくる。


「お前ら、、、、、、」

唖然とするしかない、し巻。


「先輩。危ないですよ。こんなオモチャ。」

気がつくと、小柄な美少女が、手榴弾の安全ピンを戻して持っていた。赤い二高の夏服。風紀の腕章、風紀の長瀬アミだ。高速機動だろう。

あきれた事に、安全レバーが解放される寸前に、手榴弾は彼女の手に奪われていたらしい。

無茶なことをするものだ。


ガチャガチャと車から、医療道具を出してかけて来る三高の緑の夏服、風紀委員、彼女は伊勢理しょう子だ。

「い、、、イタタ!」

悲鳴をあげるし巻。

「道に迷って、ぐーぜん出くわしたら、この騒ぎだったんですよ。もうビックリ。」

テキパキと消毒して、痛み止めを打ち、腕を固定している。

幸い、リラにケガはない。まだスヤスヤと寝っている。


「袖振りあうも何かの縁デーーーーース!向こう三軒両隣!人類みなきょーーだい!ここであったが、百年ぶりデーーーーース!」

変なホットパンツの外人がいる。あれは知らない。し巻。


言わずと知れた、制定部隊、ブラボー2こと、リサ ウエストコット、である。

散々、アルカを迷って、走り回った挙句、桂橋ジャンクションをすっ飛ばして、SCADAにたどり着いたらしい。ある意味、恐ろしいラッキーガールである。


「あいつら、暴走してる、、、つつ、、気をつけろ。」

痛みを堪えながらし巻。

「了解デーーーース!故障したオモチャは、全廃棄デーーース!みんな!気を抜いたらダメデーーースヨ!注意一秒、ケガ、1日でならずデーーーース!」

変な外人だが、判断は早い。


ドオオッ、

ひざ立ちで狙撃ライフルを構え、裸眼だが正確に接近するガラパゴスたちの脚部の関節を撃ち抜いていく。


「フフン!スコア勝負ですわよ!まこ!」

山のようなロボットたちを見ても一向に怯まない、たまき。

「いいね。負けた方はスイーツ奢りだ!」

珍しく、乗っかっていくまこ。こんな暴走マシンたちを野放しにはできない。

ここは、強気一辺倒のたまきが頼もしいと思う。


「おーーーーーーほっほっほっーーーーーーー!お人形遊びは間にあってましてよ!」

灼熱の炎鞭が宙を舞う。


超特大物量と超特大能力の激突が始まった。

また来週。

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