表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
能力アフター  作者: 佐藤同じ
46/55

能力アフター05話09

投稿します。

天宮第一学園、地下2階、地下会議室、


「なんだ、こりゃ。」

前方6面の大型モニターのひとつを見つめ、ひとりつぶやく、白衣の少年。


アダムに、位置情報を送ってもらっている、那智達のポイントが道路マップを無視して移動している。確か車のはずなのだが。


「野川那智が、バンを飛行させています。」

アダムが答える。

「そ、そうか、、、、、」

航空力学もクソも無い。何でも飛ばすな、あの女。

二の句がつげない少年。


南口から出る、二つのポイントは、普通に移動を開始している。

少し考える。


「確か制定部隊のチームは、アルファとイオタ、だったな?」

「そうです。」

変な間があり、


「まあ、、、、いいか。」

何がいいのかわからないが、先を続ける少年。

「アダム。タワーから、SCADAまでの最短ルートの交通規制は、可能か?」

「可能です。関係省庁、警察に、協力を得られれば。」


アルカの交通システムは、現在大半がマヒしている。人手に頼るしかない現状だ。

「なら、頼む。大至急な。」

「まあ、、、、いいでしょう。」


これは、SCADAに向かう制定部隊にとって必要な、対策でもある。

しかし、天宮第一学園に向かう那智達にとってはあまり、意味のない事だった。

ルートが若干違う。

彼が頼むのは、実は奇妙な、話だった。

アダムは、気が付かない。


少し目が泳いでいる少年。

ごまかすように続ける。

「あと、智由センセーに繋いでくれ。アダム。」

口笛を吹きながら、

非常食の缶詰を開け出す、しん。


「あら、うまい。」

意外と味がよく、他に加熱剤入りのカレーライスもあったりする。後でカップヌードルも食べてみようと思った。


ゴオオオオ、

アルカ上空を滑空する、トOタ、グランOース。

加重のかからない4つの車輪が、若干垂れ下がり気味だ。


10人乗りに改良された車体、そのエンジンは、FRレイアウトを採用。1GD 2.8Lクリーンディーゼルエンジンと6速オートマチックトランスミッションを搭載し、滑らかさに加え低回転からトルクフルな走行を実現、高級感溢れる走行を可能としている。


現在は、まったく関係ないが。


「うひゃああああああああ〜〜〜〜〜〜!」

操作をしても、意味は無いのだが、必死にハンドルにしがみつく智由。聖女さまにあるまじき悲鳴を上げている。


下降を始めた車は、ヘリポートの見える巨大ビルをかすめ、右へ左へ、嵐のビル街を抜けて行く。

車体のあらゆる所から、那智の炎が噴き上がり、空力は、考慮してあっても、空を飛ぶ事を前提としていないであろう物体を、巧みに飛行させて行く。

本人は、特に意識してはいないが、恐ろしい物理演算能力の賜物だ。


「あの辺でいーか。」

ひどく適当に、着地点を決めて突っ込んでいく那智。


「ちょっと待てぇぇえーーーーーーー!」

絶叫する姉。

前方は、タワーから避難する車で、ごった返ししている。

「ジョーダンだって。」

ニコニコ笑う妹。


大きくターンして、タワーへ向かう車線にアプローチする。

こちらは、ガラガラだ。


広い中央分離帯のある3車線道路がみるみる近づいて来る。


「にゃははアアアアアアアア!」

変な声を上げる保険医。


ギャン、キュキュキュ、

小さくバウンドし、ランディングを始める車。


「待て!待て!待て!こら!おいーーー!」

泣きそうな、智由。車体速度と走行速度を合わせるという、よくわからない事をやる羽目になる。

水しぶきを上げるグランOース。徐々にスピードを落とし、数百メートルかかって、横にスライドしながら、やっと停止する。


彼女は、ほとんどペーパードライバーだ。車の電子制動力配分制御機能やアンチロックブレーキシステムのおかげもあるが、これは、今日一番の運命の幸運と言っていいかも知れない。


「ナイス!智由姉!」

ナビシートで、カラカラ笑う那智。

「あんた、、、、ねぇ、、、、」

ハンドルに突っ伏してしまう姉。


後ろの席で、まんじりと身動きひとつしないリン。

さすがの彼女も、車での飛行は、怖かったらしい。

怯えて硬直した、子猫みたいになっている。


もちろん安全な、垂直上昇、垂直下降も可能だったろう。

ランディングは、車を飛ばしてみたかった、那智のちゃめっ気だ。

リンも怒っていいだろう。


「はあ〜。」

ため息しながら、ナビを操作する智由。

「さて、、、、どうしたもんかね。」

案の定、ナビが機能していない。画面は、ローディングのまま止まっている。


「何とかなるっしょ。適当に行けば。」

那智が隣で、お気楽に言う。

「あんたね〜」

再び繰り返す智由。

方向音痴には、自信のある彼女だ。学園までどれだけかかるか、わかったものではない。

繰り返すが、ろくに運転などしないし、アルカの道路などよく知らない智由だ。


『ウハハハハハーーーー!』

突然、智由のポケットから、聞き覚えがある、変な笑い声がする。


那智が口をへの字にして、顔をしかめる。

「、、、、、」

イヤそうに、携帯を引っ張り出す、智由。


『お困りですか?お嬢さま方!学園までの道案内、引き受けますよー!』

多分、山下しんだろう。

特に操作したわけでも無く、携帯がオンになり、スピーカー機能が作動している。


巷に聞く、携帯の遠隔操作だろうか。

ドン引きしている、智由と那智。


『ご安心を。智由教諭。アダムシステムによる、接続です。』

聞き覚えのない、男性の声が割り込む。


「アダムって、、、、」

「あの?」

顔を向き合わす姉妹。

何をやってるのやら。あの男は。


『ウハハハハハ!"ナビ下道心”と呼ばれたオレの、ラリーゲームで鍛えたスーパーナビを見せてやろーー!』

大笑いしている、しん。うろんな、二つ名まで自称している。


うさんくさいナビゲーションにより、ソロリソロリと走り出す、グランエーO。


一方こちらは、順調に、ターミナルタワーから、新都心環状線に向かう、アルファチームとイオタチーム。

郁恵とヒロミの、アナログによる、ナビゲーションは、正確で、彼らは、最短ルートを最速で第一工業地区に向かう。


「もごもも、もごごーもごもご。」

朧が、郁恵がタワーのテナントで用意され、持ってきたハンバーガーを食べながら、何か言っている。


「食べながら、しゃべるな。バカ。」

詩吟は、栄養ドリンクを飲みながら、隣で回復に専念している。

基本、彼女の能力は、低燃費なのだが、回復力にかけては、隣りのバカには、勝てない。

あれだけ、暴れ回って、もうピンピンしている。


「中々順調じゃねーか。もっと混んでると思ってたぜ。」

コーラでバーガーを流し込み、上機嫌でハンドルを握る朧。


幸運な話だ。渋滞に巻き込まれた、コイツのカンシャクに付き合わなくてすむ。

どうか、大人しく、していてほしい詩吟。


『次、300メートル先、交差点、左です!』

ヒロミのナビゲーションが入ってくる。

「なんでも、アルカの方で規制をかけて、ルートの交通量を減らしてくれているらしいですよ。」

郁恵がマップを見ながら、報告する。

アダムのおかげで、なんとか位置情報は、分かるがシステムナビゲーションまでは、無理そうだ。


『あと100メートル。』

また、イオタから連絡が来る。


「そりゃーいい。オレのドラテクの見せ場だな!」

「やかましい!安全第一な!理世!」

それでなくても、路面状況が悪い嵐の中だ。何処かに突っ込まれたらたまらない。

不可視の糸を、バカの首にひと巻きする詩吟。


「ああ?おもしれー。やってみろや。」

低く威嚇する朧。恐るべき殺気だ。


『50メートル。』

また、連絡が入る。


「あ、」

スルスルとスピードが、落ちてくるのを気付く郁恵。

態度の割に、言う事聞くんだ、と思う。

不可視の糸は、彼女には見えない。


『20メートル。』


詩吟さんは、凄い。と思うが、郁恵は、彼女の本当の恐ろしさを理解してはいない。


『10メートル、5メートル、、、』


「いちいちコマけーぞ!メガネ!」

『ふえぇぇ〜〜〜!』

これは、朧の八つ当たりだ。

悲鳴を上げる、ヒロミ。


「理世〜〜!ヒロミちゃんが怯えるでしょう?」

「じょ、ジョーダンだろ!なあ、ヒロミちゃん〜〜」

声が裏返っている朧。

首の輪が、数ミリ縮まっている。


意外に、尻にひかれるタイプなのかな。と、のんきな事を考えている郁恵。


確かに、ナビが細かすぎるのも事実だが、そんな事で文句を言ってはいけない。


天宮第一学園に向かう一行は、実に大変な事になっていた。


嵐の街を走るグランエース。


『20オーバーブリッジ。5ライトタイト4。』

サイドボードに置いてある携帯から、しんのナビが聞こえる。

「だから!私はラリードライバーじゃないっての!」

『だから、橋を越えて右にハンドル5度だって!』

もめる二人。

「あ、、、通り過ぎた、、、、」

交差点を見送る那智。これで何度目だろう。この車は一体どこへ向かっているのか。


ザザザー、キキ、

路肩に止まる車。

「私は、ペーパードライバーだっての!」

「智由姉。キレ方、変。」

姉に反比例して、冷静になってる那智。

『ほむ〜〜〜〜〜。じゃあ普通のナビでいくか〜〜〜。つまらん。』


「最初から、そーーしなさいよ!」

だいぶルートから外れているだろう。あせる智由。

『じゃあ、どのタイプのナビでいく?』

また意味不明の事を言い出す、白衣の少年。


「タイプって?」

みけんにタテジワがよる智由。

『魅惑の女教師タイプと、お姉ちゃん(または、お兄ちゃん)大好き妹タイプと、無口っ子タイプのみっつがあるよ。』

何となく悪意の感じられるラインナップである。


「現役、教師を前にして、じょーとーじゃない!女教師で行こうか!」

よせば良いものの、彼のオチョクリにのっかっていく智由。


嵐の街を迷走するグランOース。


『そこの交差点を左って言ってるじゃない。おバカさん。ウフン♡』

「ウフンじゃねーーーーーーー!」

変な、しなをつくった女教師ナビは、タイミングがズレ気味でまったく機能しない。

『バカな子ほど、可愛いって言うものね。だ、い、す、き、だ、ぞ。ち、ゆ。ウフン。』

「そんな女教師がいるかあああああーーーーーーーーー!!」

絶叫する保険教師。


ちなみに妹ナビは、あまあま甘えっ子で、ドジっ子らしく、ナビ自体間違えてあさっての方に車は進む。

そういう仕様らしい。


無口っ子ナビは、案の定、

『、、、、、、、そこ、、、、右、、、、、』

情報量が足りなく、使い物にならず、一行の行程は、万策尽きて、行き詰まった。


ザザザー、ザップーーーン、

ハンドルにつっぷす智由の前に、横浜に面した、嵐のアルカの海が開けている。

最西端に辿り着いたらしい。

天宮第一学園とは、見当違いの地点であり、ターミナルタワーより、離れてしまったと、いっていい。


「おい。ナビ下道心。これはどうゆう事だ。」

目がすわっている那智。とても怖い。


『さて、、、そろそろいーかな。真面目にやるか〜〜。』

とくに、悪びれるでもなく、言い放つ白衣の少年。

「そろそろってなんだ!何考えてんだ!バカしん!」

『いーから、いーから。チーセンセー起きて、起きて。今度はちゃんとナビするからさー。』

「あんた、、、、覚悟してなさい、、、そっちに着いたらどうなるか、、、、」

姉妹そろって、目が怖い智由である。

天宮第一学園行き、一行は大きく迂回するルートを行く事になる。


一方、こちらは、順調にSCADAに、向かっていたかに見えた制定部隊の2チーム。


「M9グレイハウンド、30以上!敵、総数不明!待ち伏せです!」

悲鳴を上げるヒロミ。

メガネの外部モニターに、おびただしいエネミー表示が増えていく。


眼前の新都心外環状線の複雑な合流ポイントに、敵、大型トラック、機動兵器、歩兵隊が続々と集結して来ている。


「当たりだな。野郎ら、どうしてもSCADAに、行かせたくないらしい。」

楽しそうに、車を止める朧。

「予想はしてたけど、、、裏目にでたか。」

つぶやく詩吟。

彼女が言うのは、交通規制の事だ。

テロリスト達に、こちらのルートを教える様なものだ。結果、敵を集める事になる。

「面倒な話ね。」

しかし、少し楽しそうな詩吟。雑魚狩りは面倒だが、害虫は、減らせる時に減らした方がいいだろう。

「昼メシの腹ごなしにゃちょーどいいぜ。」

もう、一般的には夕食の支度の時間だが、詩吟の首輪をはずしてもらった朧が、凶悪に笑う。

この二人、絶好調時の朧が、まともにやり合ったら彼が勝つかもしれないが、からめ手を駆使する詩吟が負ける事も、そうないだろう。いいコンビと言えなくもない。


イオタチームの鈴森は、豊洲と同様に、長距離ライフルを持ち出す。アルファチーム二人のバックアップだ。

「狙い撃つぜえ。」

鈴森が細い目をさらに細めて笑う。


このチームは遠近両距離戦にある程度対応可能だ。

大男の松田は、4連装のM202ロケットランチャーをかつぎだす。彼は場合により、盾役もこなす。


「みなさん、気をつけて!射撃データ、送ります!」

ヒロミの能力、電子眼は、射撃補佐も可能だ。

よく言えばオールラウンダー。悪く言うと、器用貧乏なチームと言える。


ターミナルタワー、地下10階、地下情報センター、


「待ちたまえ!アルファ1。すぐに、南口から回した援軍が着く!」

ほぼ制圧が完了した南口から、随時、先行した2チームに援護の部隊を、動かしていたハドリアだったが、事態は彼の思う以上に速く展開していく。

『先手必勝ですよ。理事長。行きます!』

詩吟からの短い通信が切れる。


「まったく、、、、」

指令台のイスに座り込むハドリア

「アルファチームなら、問題ないのでは?」

彼の小柄な美人秘書が、聞いてくる。

「そうではないよ。まんまと引っかかったって話さ。」

楽しそうに笑う碧眼。

「?」

彼女には分からない。


ハドリアの言っているのは、交通規制の事だ。

なぜ彼が、制定部隊のルートに気を回すのか奇妙に思っていたら、この始末だ。

こちらを囮にして、敵を誘導したかったのだろう。

那智達が戦闘に巻き込まれるのを嫌った、彼は極端な迂回ルートを取っている。


「してやられたな。だがそうでなければな、しん。」

実に楽しそうなハドリア。捨て石にするどころではない。油断したらこちらが利用されてしまう。


「北口の様子はどうか?」

指揮に戻るハドリア。

「南口から回った援軍も合流しています。じきに制圧可能かと。」

情報をまとめる、美人秘書。

「よし。制圧次第、最低限の防衛部隊を残して、各隊にアルファチームとの合流急がせろ。」

「わかりました。」

戦場はターミナルタワーから、徐々に動き出そうとしていた。


同時刻、

新都心外環状線、桂橋ジャンクション、


「松田さん!」

叫ぶ詩吟。

「おーーさ!」

応える松田。


ズドオオオオ、

くぐもった、発射音を残し電子誘導ロケットを放つ、四連装ロケットランチャー。


「3、2、1、、、、着弾します!」

モニターする郁恵。


グワガアアア、ドオオオオン、

テロリストもろとも、新都心外環状線、三車線、新都心内環状線から合流する三車線、下道から合流する登りと下り六車線、計12車線が粉々に吹き飛んでくずれ、瓦解していく。

先に進むには一旦下道に降りて、迂回しなければならないだろうが、まあ、仕方ないだろう。

松田も、長距離ライフルに持ち替える。


「いっくぜええええええーーーーーーーーーー!!」

へし折れた道路標識を飛び越えて、嵐の空に弾道ミサイルのごとく、すっ飛んでいく朧。

「こら待て!理世ーーーーーー!」

長い黒髪をひるがえし、高速機動に移る詩吟。


桂橋ジャンクション攻防戦が始まる。


一方、こちらは、学園に向かう那智たち。

最初のグダグダがウソのように順調に進んでいた。


滑るように雨の中を進むグラOエース。

オフィス区間を抜けて住宅区に入っている。学園はもうすぐだ。


タワー周辺と違い、非常事態宣言の後、暴風雨の中というのもあるのだろうが、住人たちは広域避難所への移動が終了し、街はとても静かだ。

「人がいないね、、、」

つぶやく那智。

たまにコンビニの光は見えるが、人影は見えない。

こんなに静かな街を見るのは、彼女もはじめてかも知れない。


「家に篭るか、シェルターか避難所でしょう。みんな。」

ハンドルを握る智由が答える。

「アルカから出る方法も無いしね。」

いつまで、こんな状況が続くのか、陰惨な気持ちになってしまう。


「大丈夫、、、、?リン。」

那智が気がつくと、後ろの席の相棒の顔色が悪い。

「みんな、、、、怯えている、、、、、」

かすかにつぶやくリン。


高位の受信タイプテレパスである彼女は、人の意思の総和が多いと、何もしなくても影響を受けてしまう。

タワーからこっち、大分無理をしていたのかも知れない。


「学園で一息つけるといいわね。」

つとめて、明るく言う智由。

ここまで来ると、さすがに、土地勘がある。白衣の少年のナビも必要はない。


「しん、もうすぐ着くよ。」

携帯に話しかける。

『直接、東昇降口に回ってくれ。こっちも保健室に移動する。』


保健室に向かうなら、校舎前を通って東口につけた方が早い。

容態は安定しているとはいえ、彼女、みず希しずくが心配なのだろうか。

彼の声に、今までのおちゃらけ感が全くない。


「那智、、、あんた、頑張りなさいよ。」

こんな時に不謹慎のような気がするが、つい余計な事を言ってしまう智由。

「ん?なにが?」

キョトンとしている妹。

「ん〜〜。何でもない。」

首を振る智由。

これはダメかもしれないと思う姉。


天宮第一学園、保健室、


「し巻先輩!リラ先輩!」

那智が保健室に入ると、予想外の二人が居た。

「おう、那智。」

なぜか不機嫌そうなし巻先輩。

「にゃはは〜〜〜」

リラ先輩はニコニコと手をヒラヒラさせている。


あとは、白衣の山下しんと、いつもつるんでいる只野友樹もいる。

しんは、ジトとこっちを見たきり、そそくさと智由姉と一緒に隣室に入ってしまう。

姉の白衣を着てるのを聞かれると思ったが、特にそんなことも無かった。

まあ。いいか。と思う。

「先輩たちは、なんで、ここに?」

とりあえず聞いてみる。


「サボってたら、しずくが担ぎ込まれて来たんだよ。」

「補習で学校、来てたんにゃ。」


大まかに話は聞いていたが、詳しく双方の情報すり合わせる。


隣室の智由の、研究ラボに入ると医療カプセルは寝かされ、細胞活性剤液も抜かれている。

紫煙、または、しずくは包帯を巻かれた上にダッポリとした患者着を着けただけで眠っている。カプセルは開いていた。


「うん、、、大丈夫だね。」

智由の目が緑光を放っている。

どうやら、患者の容態がわかるらしい。

緑光が全身に移る。伸ばした両手から、光が流れ、眠る少女も緑の粒子に包まれていく。

「エナジーグラント、、、、」

保険医が小さくつぶやく。


覚醒が始まった。小指が小さく動き、瞳がゆっくり開いていく。


「し、、、、ん?」

その少女が、上半身を起こす。

懐かしい声が彼を呼んだ。


「しずく、、、、」

力が抜けていく少年。

単純な自然治癒力のブーストではないだろう。野川智由の能力には、それ以上の何かがある。それでなければ、こんな劇的な変化はないだろう。

しずくは顔色も良く、普段とまったく変わらない様子だ。

「ありがとう、、、、、、、チーセンセー。」

ソッポを向いてしまう白衣の少年。


「あいよ。」

優しく笑う智由。こいつが素直に礼を言うのは、珍しいことだろう。

「智由先生?私、、、一体、、、、」

混乱しているしずく。紫煙は何をやっているのか。

「落ち着いて。説明するから。」

智由が、今までの経緯を話しだす。


一方、隣り、保健室、

「え、、、、?」

硬直する那智。

「みてたんすか、、、、あれ。」

「ああ、セクシーミニスカ大バトルな。大画面、高画質で。」

意地悪く笑う、し巻。


「あれ、、、も?」

なんか、カクカクしてる那智。

「あの変態な。当然、穴の開くほど。かぶりつきだ。」

イントネーションのみで、誰の事か、言い当てるし巻。

「ああああああ〜〜〜〜!」

真っ青になり、ジタバタしている那智。


何の事はない。さっきの少年の態度は、超ミニスカを期待していた那智が、白衣でガードしていたので、ガッカリしていたに過ぎない。


「まあ、なんだ、、、、」

さすがに、かわいそうになってきた、し巻。

「アダムの映像だったから、ギリギリセーフだ。」

なにがセーフか、よく、わからないが。


「お前らは、いったんリンの学生寮で着替えてこい。その恰好じゃ、変態が落ち着かないからな。いいな。リン。」

コクリと頷くリン。夏服のかえは3つくらいはある。

「那智、、、、行こう。」

「ふぁ〜〜〜い。」

泣きそうな那智。恥ずかしいらしい。


ガチャ、

隣室のドアが開く。

「それなら、この子の着替えも頼む。」

智由が白衣の少女を連れている。

「しずく!大丈夫なの?」

那智が立ち直り、聞いてくる。


その少女はポニーテールではないが、黒いロングヘアの前髪で表情が見えにくい、いつもの彼女だった。

途中で気づいた、しずくが慌てて、紫煙のツインテールから戻したらしい。

多分、変なオプションで、クソ重いだろう、しんの白衣を、なんでか、嬉しそうに掛けてもらっている。

「だ、大丈夫だよ。全然平気。」

パタパタと両手を振る。いつもしずくだ。


「ふーん。ほんじゃ、行こー。とっとと着替えたほーがいいでしょ。」

クルリと向きを変える那智。

「わ、私は、、、別に、、、」

モジモジしてるしずく。

なんで、うれしそーなんだ、お前は。

不機嫌な那智。


「お前らー、終わったら、地下会議室に来てくれ。情報を整理する。」

白衣ではない少年が、えらそーに言う。

「わーーったわよ!」

振り向きもせず那智。

二人の白衣の少女とリンが、保健室を出ていく。


「あれ、紫煙じゃないのか?」

話しには聞いていたが、ややこしくて、よく理解できていない、し巻。

「ああ、紫煙は、イブもみんなも守れなかったって、ふてくされて、引っ込んでるってさ。」

白衣でないしんが答える。

「紫煙ちゃんのせいじゃないにゃ。けっこういい子にゃにゃ。」

リラが優しく言う。

「野郎ら、、、、」

元凶はテロリストたちだ。わかりきっている。

「キッチリ落とし前は着けてやるさ。」

鬼のもと風紀委員長の目つきが変わっていく。


「とーぜんだ。地下に移ろう。」

準備は整いつつある。あらたが好きにできるのは、ここまでだ。報復の愉悦に楽しそうな少年。

「う〜〜ん。」

少し心配な智由。小さくため息をつく。


あらたにとって、イレギュラーたちが、動き出そうとしていた。


嵐が、窓を打つ、生徒の誰もいない、学校の廊下をカレッジハウスに向かう、那智とリンとしずくの三人。


変な沈黙が続く。

それぞれに、最上位の能力を有する、彼女たちだがメンタルは、普通の人とそれほど変わらない。

彼女達がいるのは、学園のありふれた日常の光景の中だが、事態は、決して、そうではない。部室で、デザートを食べた、昨日の事がひどく、遠くに感じられた。


「また、、、クッキーを焼いたり、普段通りの日が、」

ポツリとしずくが言う。

「来るよね。」

消えそうな、小声だ。


「当たり前じゃん!」

振り向きもせず、断言する、先を行く那智。

「約束だかんね!」

うつむくしずくが顔を上げる。


「クッキー!」

憮然と那智が言う。

クッキーを焼く約束。彼女もおぼえていたようだ。

ぶっきらぼうな、那智の言葉が、嬉しかった。


「うん。」

微笑むしずく。


すると、唐突に立ち止まり、振り向く那智。


「あ、そーだ。少し寄り道していい?」

なにか思いついたらしい。

「どうしたの?」

怪訝な顔をするしずく。


「風紀委員室!ちょっといい事、思いついちゃった!」

いたずらっ子のような笑みを浮かべる那智。

三人は階段を上がって、風紀委員室に向かう。


同時刻、


川崎側、アクアライン、東京モノレール路線、


「ダメです!引き返してくだせい!牧の姐さん!」

屈強な四課の男たちが必死に彼女を止める。

「ぐぅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」

声にならない唸りをあげて、ズルズル、大の男たちを引きずっていく、牧。

眼前の川崎側、アクアラインの入り口が嵐の海に、崩れ落ちていく。


「どうして、、、、どうして〜〜〜〜〜〜〜〜!」

彼女の絶叫が嵐の海に千切れ、消えていく。


川崎側は、海底トンネルだ。中腹で破壊された道路は海水の侵入を許し、水没してしまっている。中を走っていた車、人々は絶望的だろう。

誰一人、助けられなかった。


異常な事態が起こっていた。

浸水が起きている。

牧たちがいる、高台の駐車場も海側が地滑りを起こし、波に沈んで押し流されていく。

土壌自体がおかしくなっていると考えなければ、説明がつかない事態だ。

「ここを離れましょう!姐さん!オレらも飲み込まれちまう!」

ヒゲの筋肉ダルマが必死に説得する。


「〜〜〜〜〜〜うぅ、、、、、全員退避!」

苦渋の決断をする牧。

目の前に濁流が迫っている。ここだけではない。あちこちで、地滑りが起き始めていた。

いずれ、防波堤の決壊もあり得るだろう。


「科学検査官を呼んで〜〜〜!周辺の土壌を調べさせるよ〜〜〜。周辺、全署に連絡〜〜〜川崎側の円周を全部、警戒させるわよ〜〜〜〜〜!」


イヤな予感がしていた。

彼女の予想通りなら、取り返しがつかない事になる。

異変が静かに始まっていた。

また、来週。、

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ