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能力アフター  作者: 佐藤同じ
45/55

能力アフター05話08

投稿します。

少し時間は戻る。


そこは、コンクリートの天井にパイプ、配線が走る、広い部屋いっぱいに変圧器が並ぶ、変電所のような、場所だった。

そこに、彼女、山下イブ、いや、現在はアンバーTYPE01、パーソナル立夏はいた。

彼女の座る椅子の周りには、円形に幾つものサーバーが並べられ暗闇に明滅をしている。後部、周辺から配線がいくつも伸び、数百のヘビがのたうつ様に、暗闇に消えている。

どうやら、移動可能な彼女の簡易電算システムのようだ。


その様子を、死んだような目の不知火あらたが見つめる。

正面、3×5面、計15面のモニターの内、4面がアンバーを写している。他はなにかのグラフ、オシロスコープの数値が動いていた。

モニターの前には、4人のオペレーターが作業のできる、コンソールが3列、

どこかのコントロールルームのようである。

現在は彼しかいない。


「試験稼働は順調だな。あらた。」

「あらた、あらかた、掃除は終わったよ。」

後方のドアから、ジノ フィッシャーとエイダ レスターが入って来る。

「試験機とはいえ、必要な電力は確保できた。」

薄く笑うあらた。


「立夏、セカンド フェーズ、開始だ。」

ポツリとつぶやく。


「了解。」

画面のアッシュブロンドの少女が、懐かしいが、感情のゴッソリかけた声で答える。

複雑に配線が繋がれる、大きなゴーグルをつける、アンバーTYPE01。


ブン、

電算システム中央が、輝き始め彼女を逆光で染める。

今、彼女の眼前には、広大なアルカ全域の通信、情報ネットワークが拡がる。

アダムと繋がった彼女には、その中を自由にアクセス可能だった。

ネットワークへの介入が始まる。


バン、

ターミナルタワーのメイン、重要シズテムを除くすべての電源が落ちる。

地下10階の地下情報センターも一時パニックになるが、すぐに非常電源に切り替わる。


「ネットワークへの介入か!アダム!」

コンソールのミケランジェロのアダム像のモニターに、叫ぶハドリア。

「正解です。ハドリア。」

平坦なアダムの声が答える。

「イブのコードです。東アルカのシステムの60パーセントが乗っ取られています。対処、レジストを続けてますが。かなり周到な準備をしていたらしく、対応が遅れています。」


「場所の特定はできないのか!このままでは後手に回るだけだぞ!」

イブが相手では、アダムでも分が悪すぎる。

「特定不可能。ハッキングの対処で手一杯です。」

「クソ、、、、ッ」

焦るハドリア。

「とにかく、ハッキングの防御だ!システムがダウンしたら、もうどうにもならんぞ!」

オペレーター達は対応に全力を上げている。

まだ、負けたわけでは無い。そう思いたいハドリアだった。


「イブのわけねーじゃん。」

非常電源に切り替わった、天宮第一学園、地下2階、地下会議室で白衣の少年は、あきれたように言う。

「おまえさーアダム。月の量子コンピュータの比率、わかってんの?」

モニターの銀のメカガイコツがガチガチと歯を鳴らす。

怒っているようだ。

「お前が1パーセント、イブが98パーセント、不明が1パーセント。」

意地悪く笑う少年。

「イブが本気になったら、一瞬で東アルカはおろか、世界中のアダムのシステムなんぞパーになるに決まってんじゃん。」

多分、正論だろう。反論できないアダム。悔しそうに歯をガチガチ鳴らす。


「どうゆう事だ。しん?」

アダムを言いまかして嬉しそうな、白衣の少年にあきれながら、し巻が聞く。

「イブの部分は切り離されてるか、閉じ込められてるかわからねーが、あらた達に利用されているワケじゃないってこった。」


「フーン、て事は、、、、」

「まだ、何とかなるってこった。」

なぜか悪そうに笑う二人。


「具体的にはどうするにゃー?相手の目的も居場所もわからないにゃー。」

意外とリアリストの和久井リラが口を挟む。


「大体見当はついてんだけどな、、、、アダム。」

偉そうに聞くしん。

「なんです。」

ふてくされながら、答えるアダム。


「お前にも、わからない地下ネットが、あんだろ。jシステムっての。」

「それは、、、、」

マン マシン インターフェイスが珍しく口ごもる。

「おい。それって、都市伝説だろ?」

し巻が呆れたように言う。


ちまたでウワサされる、犯罪ネットワークだ。

いわく、アダムにもアクセスできないネットワークがある。

いわく、それは、世界中に張り巡らされて、犯罪、マネーロンダリングの温床にになっている。

想定として、アダム以上のセキュリティーシステム、高レベルのシステムが存在しなければならない。

月のアダムにして、地球外のオーバーテクノロジーなのだ。そんなものがあるはずがない。

仮に存在するなら、アダムネットワークにもっと致命的なハッキングなりをするはずだが、そんな事件は一つもなかった。


「そんな、与太話、本気で信じてるのか。」

まったく、容赦ないもと、鬼風紀委員長。


「ま、まあ仮に存在するとしてだ!」

意外と動揺する白衣の少年。彼も半信半疑なのだろう。


「そうじゃなきゃ、今回のテロが成立しねーんだ。人員、物流の移動。アダムに感知せず行なえるわきゃねーだろ。」

「それはな、、、」

なんとか納得するし巻。


「で、こっからが本題だ。」

モニター全てを、那智達の画像から、東アルカ全体の情報網に切り替える、しん。


「アダム!最近の物、金、の移動。海運、陸運の動き。テロリストの動き、敵の妨害の多いエリア。情報の途切れた部分をピックアップしてくれ。」

一瞬の内に画面に、空白のエリアが示される。


「ターミナルタワーと、、、アルカの上の方に多いにゃ。」

「北の第一工業区か、、、、あそこには確か、、、」

リラの補足をするし巻。

「そう、SCADA、産業制御システムがある。やつらは、多分そこにいる。」

後を続けるしん。


「なんだよ?そのSCA、、、、何とかって?」

久しぶりに口を挟む茶髪メガネ。

「アルカの工業プロセスや水道、石油やガスのパイプライン、送電網、大規模通信システムなどのインフラの監視やプロセス制御を行うコンピュータシステムだ。」

面倒臭そうに説明する、しん。


「へーーー。って、、、そこにテロリストがいんの?」

やっと事の重大さに行き着く、友樹。

「やつらの目的は知らんが、アルカを支配したいならターミナルタワーとSCADAを取るのが最も効率がいい。」


「フン、お前にしちゃいい推理だ。多分、当たりだろ。なら殴り込みだな!」

とても血気盛んな、もと、鬼風紀委員長さまが後を続ける。

「待て、待て、待てってっ!」

慌てるしん。

「那智達を呼ぶから!チーセンセーには紫煙の治療を頼まにゃなんねーし!」

多分あらたの相手ができるのは、那智ぐらいだろう。

特殊な炎の能力者。想定されるのは、、、、、


「チッ。じゃあとっとと呼べ!チンタラしてたら先に行くぞ!」

恐ろしく殺気立っているし巻。

実は彼女も、中坊達を傷つけられて、はらわたが煮えたぎっていた。意外といい人かもしれない。


「八重〜〜〜お腹空いたにゃ〜〜〜学食行こ〜〜〜〜〜〜。」

ナイスタイミングで相方のリラが誘う。

強引に引っ張って行ってしまう。

「お、おい!リラ!」

ズルズル引きずられていくし巻。彼女も相方には弱いらしい。


そう言えば、昼時は大分過ぎていた。ここの学食ならどんな時でも対応してくれるだろう。

「腹が減っては何とやらだ。友樹、お前も食ってこい。」

手を振る白衣の少年。


「お前はどーすんの?」

問いかける彼にダンボール箱を見せる。

中にはペットボトルの水やら非常食が入っていた。

ここに来る途中、となりの倉庫からガメていたらしい。

「オレはここにこもる。なんかあったら連絡するよ〜〜。」

用意周到な話である。


「さて、アダム。」

ガリガリとカンパンをかじりながら、モニターに向かうしん。

「智由先生の携帯につなげてくれ。」

まずは戦力を整えなければならない。巻き込まれる彼女達には心苦しい話だが。


時間は少し戻る。


「な、、、、なんてかっこーーしてるの!那智!!」

ターミナルタワー、北口にて、

空から降りてくる、妹の格好に絶叫する智由。

伝統ある一高の女子、夏服が超ミニスカートのいかがわしい、エロコスプレもどきになっている。

「え〜〜〜ん!智由姉〜〜〜〜怪我した〜〜〜〜!治して〜〜〜〜!」

わざとらしく、泣きついてくる妹。

ケガはほんとらしい。

「まったく、、、、」

自分の白衣を那智にかぶせる智由。右腕のケガは瞬く間にキレイに完治する。


「ありがと!智由姉!」

アッケラカンとニコニコしている。ホントにこの妹は。

どうやら、あの不気味なニセ神父の撃退には成功したらしい。後半の戦闘は智由にすら追いきれなく、詳細はよくわからなかった。とにかく無事でよかったものだ。

ホットしたのもつかの間、

気がつくと那智は、向こうの方で三高の風紀の子に抱きついている。


「よかった〜〜〜!しょう子さん、大丈夫ね?痛いところ無い?」

「あ、ありがとう。那智さん。もう大丈夫です。ほんとに、、、」

やさしげな、黒髪セミロングのハーフアップの少女が言葉をつまらす。


「ありがとう!たまきや、、、みんなを助けてくれて!」

深く深く頭を下げる。

「ち、ちがうって。」

赤くなりながら答える那智。

「礼なら、智由姉に言って。私は変な神父を追い払っただけ。」

照れ隠しにしてもかなり無理がある事を言う那智。一面の事実にしろだ。

「ハイ、、、、」

微笑むしょう子。智由の方にペコリと頭を下げる。

笑顔で手を振る智由。


「な、、、、ち、、、、」

気がつくと近くにたまきも立っていた。

「あ、、、ありが、、、とう、、、ですわ!」

なんとか絞り出す、たまき。マトモに那智を見られなかった。

「うん。ホント。二人が無事でよかった。」

屈託なく笑う那智。


それでも、失った命は戻らない。しかし彼女は、真っ直ぐ未来に進んで行くだろう。

そんな強さがたまきには感じられた。


「かなわない、、、、かもしれない、、、」

笑顔で手を降り、去っていく少女を見ながら、思わずつぶやくたまき。


その彼女の手をそっと掴む手があった。

「強くなろう、、、、二人で。彼女に負けないように。」

隣にやさしく微笑むしょう子がいた。

「うん、、、、」

二人なら、きっと、

少し泣いてしまう、たまきだった。


「一高に来いって、、、あんた!」

那智が戻ると、智由姉が誰かと携帯で怒鳴り合っている。

「誰?」

隣のリンに聞いてみる。

「多分、、、、しん。」

「はあ?」

そう言えばあのブァカは、コッチの修羅場っぷりがわかってんのか。

ふざけた事、抜かしてるなら、かわりに怒鳴ってやると思う。


智由姉の顔色が変わる。

「紫煙、、、しずくちゃんがケガを、、、、、」

ゾッとする那智。

なんでしずくが、、、、学園で何かあったのか。

息が止まる。

「うん、、、、うん、、、、わかった。できる限り早く行くよ。待ってなさい。」

ため息しながら携帯を切る、智由。

「智由姉!」

切羽詰まった那智がせまる。

「イブちゃんがさらわれて、紫煙ちゃんが重症。今は医療カプセルで治療中。大丈夫だよ。」

「そ、、、そう、、、」

なんとか落ち着く那智

「でもイブちゃんまで、、、、、」

今度の相手はとことんまで、頭にくる連中だ。


「テロリストの場所もわかったって。で、私らにも手を貸せってさ。どうする那智?」

難しい事を聞いてくる姉。

まだ、北口の攻防は終わったわけではない。

「う、、、、」

うめく那智。

テロリストたちは、タワー大橋の方で残存勢力の集結を始めている。

制定部隊も迎撃の準備にかかっている。いつ戦火がともるかわからない事態なのだ。

彼女が、ほっぽいて行けるわけが無い。


ススス、

小太り、ちょび髭の黒衣の男が近づいてくる。

「行ってください。アダムの確定情報です。敵の本丸、頼みましたぞ。」

人の良さそうなオッサンが笑う。

「後は、残存兵の掃討。我々にお任せを。」

「で、でも、、、、」

万が一がないとは言えないのだ。


「オーーーーーホッホッ!お行きなさい!那智!」

高らかな笑い声と共に、復活した王城たまきだ。

「ここは私たちに任せて!今度はちゃんとやってみせますわ!」

その瞳に決意の色が見える。隣りでしょう子もうなずいている。


「うん、、、、わかった!」

これで迷うのは野暮だろう。

「あとは任せるわ!みんな!」

ビシ、と決める、炎姫さま。


「でも、、、電車もタクシーも無いしね。困ったね。」

「あう、、、、」

智由のあまりに地味なセリフにズッコケる那智。

「智由姉〜〜〜二人ともかついで、飛んでくわ!安心して!」

「安心できるか!」

中々カッコ良くはいかないものだ。揉めまくる野川姉妹。


「これを、、、お使いください。聖女さま。」

違う制定部隊の男が現れて、車のコントロールキーを渡す。

「はい?」

何よりも、かによりも、聞きなれない単語にギョッとする智由。

その男は吹き飛んだ、足を再生してもらった、アタッカーらしい。

「貴方こそは伝説の、白衣の聖女さまです!どうかご武運を!」

今、白衣を着てるのは那智の方だが、キラキラした瞳で笑う。


「せ、、、せい、、、、」

何とか噴き出すのをこらえる那智。

ゴン、

那智を小突く智由。

「あ、ありがとうございます。みなさんもご無事で!」

ソソクサとバリケードのバンの一つに逃げ込む智由

とはいえ、道は塞がれているのだ。はて、どうしたもんかと思う智由だが、那智が物騒な事を言い始める。

「智由姉!リン!シートベルト締めた?歯を食いしばって!」

まさか、、、とゾッとする智由。


ドオオオオン、

激しい発射Gに押しつけられながら、嵐の空に飛翔する、10人乗りの国産バン。

当然、那智の能力だ。

「な、、、何でも飛ばすなアアアアアアアアーーーーーーー!!」

智由の悲鳴が嵐に消えていく。


「おおおーーーー聖女様が行くぞーーー!」

「いけーーー!軍神マルスーーーーーー!!」

野川姉妹の人気は爆上がりのようだ。

拍手喝采の制定部隊。


「フフン、それでこそワタクシのライバルですわ。オーーーーーホッホッ!」

すっかり立ち直ったたまきの笑い声がひびく。

「、、、、、、、」

智由さんとリンさんは大丈夫だろうか。とても心配なしょう子であった。


ターミナルタワー、地下10階、地下情報センター


「そうか、、、しんが。」

現在、アダムから、テロリストの新情報を受け取ったハドリアだった。

その情報をもたらした者も。


予想外の話だった。当たり前のように、アダムにアクセスし、誰も疑いもしないシステムの限界を洗い出し、敵の動きを把握する。

友人として、彼の異常な特性は、理解していたつもりだが、その認識は、あらためる必要があるかもしれない。


「いかがなさいます?彼を止めますか?」

慇懃にアダムが聞く。

「やつらは、虎の尾を踏んだのさ。彼がイブをさらわれて、黙ってると思うかい?」

ハドリアは忙しく考える。


「せいぜい、後悔してもらおうではないか。」

そして楽しそうに笑った。


「では、好きにさせるので?危険な相手ですよ。」

「バックアップは、万全にしたまえ。アダム。彼の動きのトレースを怠るなよ。」


現状、最短でテロリストたちに迫れる可能性が高いのは、彼かもしれない。

捨て石にしても構わない。

それでアルカが救われるなら、致し方あるまい。

ハドリアは、アルカ統括理事として、そうも考えられる人間であった。


とは言え、自身も気づいてはいないが、持ち前の、鬱陶しほどのバイタリティが戻ってきていた。

「南口で、アルファチームの他、被害が少ないチームをピックアップしてくれ。」

「イオタチームです。」

まるで待っていたように答える、小柄な美人秘書。


「よし、、、、」

あまりのレスポンスの良さに、多少ビビるハドリア。

「アルファとイオタを第一工業地区、SCADAに向かわせろ!」


「無理です!」

「ダメです!」

前の方、オペレーター席、2列目の、郁恵とヒロミが、揃って合唱する。


「南口の守りが保ちません!」

いっぱい、いっぱいの郁恵。

「まだM10が1、M9多数!アルファが抜けたら、総崩れです!」

ヒロミが補足する。


「心配ない。一般人の避難誘導は、終わった。彼女に南口に向かってもらったよ。」

笑うハドリア。

ついに反転攻勢が始まるのだ。


ターミナルタワー、南口

「こんどは、タワーを離れろってか!」

敵の物量にウンザリしている朧。

「私、そろそろランチにしたいのだけど。」

詩吟も大分、消耗している。

眼前に、M9と連携したエイブラハムが迫る。


「マズイな。二人の動きが、落ちてる。」

アルファ1と2の動きがあからさまに悪い。イオタチームの大男、松田は、さすがに何とかしないと思う。

ろくに活躍していない後方の彼ら3人は、かなり元気だ。


「大丈夫です。みなさんは、移動の準備を始めてください。」

見なれない、栗毛のショートヘアの小柄な女の子が、3人に話しかける。


「き、、、君は?」

あぜんとする松田。オペレーターのヒロミと同年代くらいだろう。とても落ち着いた、利発そうな女子学生だ。

赤い二高の夏服。腕には、風紀の腕章が見える。


「すぐにアルファチームも、SCADAに行けますよ。」

確信を持って言いきる。

この現状を把握できないのだろうか。しかし、松田は、子供のたわごとと言いきれない何かを感じていた。


「今、彼女が向かいましたから。」

楽しそうに笑う少女。

名前は長瀬アミ。二高の風紀委員だ。


「まったく、、、、、」

苛立つ詩吟。

前衛のM9をいくら潰しても、ラチがあかない。後衛のM10エイブラハムが逃げ回り、攻撃を繰り返す。


「後ろのデカブツだって!」

言わずもがなな事をわめく朧。知能指数が低下してるのか、コイツは。


グワッッガアアア、

至近をえぐるレールガン。

ふらつく詩吟は、自分も疲弊しているのを痛感する。

その彼女に、よく通る声がかけられる。


「詩吟さん!制定部隊の人!離れてください!」

「ああ?なんだテメェ!」

朧の目にやたらでかい、女子学生のシルエットが見えた。


「あんた、、、朧!」

身を翻す詩吟。

「チッ、、、、、、!」

同じく飛び退く朧。


周囲に凄まじいオゾン臭が立ち込める。

高身長の彼女が、空に届くように、嵐の天空に右手を伸ばす。


「フォーーーリング ストライクッ!」


グワラッガラララッグワゴッッガアアア、


暗転する黒雲から、幾重にもまばゆい雷光が、大蛇がのたうつように、激しく枝分かれしながら大地に叩きつけられる。


タガを外した、彼女のその能力は、総エネルギー400億キロワットを軽く超え、M9達を焼き尽くし、重装甲M10エイブラハムすら、粉々に粉砕する。


吹き荒れる風雨が栗毛のゆるやかなハイポニーのセミロングを揺らす。


精悍な面持ち、黒く涼しい眼差しの瞳。真紅の天宮二高の夏服。右に緑の風紀腕章。180を越える抜群のスタイルを誇る長身。嵐に立つ、雷神。

電撃能力A +天宮二高風紀委員、日向まこ、である。


「ゲェ、、、、なんて、ガキだ、、、、」

眼前に広がる、ハイウェイの敵、残骸の群れを前に、さすがの朧も舌を巻く。

「アルカ中央警察庁の捜査一課、日向警視正の御息女よ。」

詩吟は、知り合いらしい。

「はー、あの鬼瓦の?」

さもありなん、だ。あの堅物のむすめなら、並の女では無いだろう。納得する朧。


ブロロオオーーーーーーーー、

突然、黒い影が、迫る。

「朧さん!詩吟さん!乗ってください!」

恐ろしい事に、オレンジお団子頭の設楽郁恵が、メルセデスV 220dのハンドルをにぎり、フラフラと戦場に現れる。

完全な無免許運転だ。


「やめろ!ボケーーーーーーー!」


ガチャン、

朧の悲鳴と共に、バリケードの車に突っ込んで、止まる。


「ナイス!郁恵ちゃん。よく来てくれたわ!」

するりとナビシートに滑り込む詩吟。


「ああ、、、オレのV 220dが〜〜」

朧が、凹んだダンパーを前に、ほざいている。


別にお前のじゃない。隊の好みは、反映されるものの、完全な支給品だ。

男と言うのは、どうしてこう、車などのモノに執着するだろう、と思う詩吟。


「理世!早く乗りなさい!」

コイツに任せていたら、このバンはチューンや改造やらで、酷く扱いにくい代物になってしまった。

彼女の後悔するところである。


「郁恵ーーーー!後で殺す!」

カンカンの朧がドライブシートでベルトを締める。

「ヒエーーーー!」

郁恵は、とうの昔に後部オペレーター席に、退避している。

ロータリーを回って、イオタチームの車も、後方に続く。


『どうする!アルファチーム!敵はまだ、かなり残ってるぞ!』

松田が聞いてくる。

ハイウェイの先は敵陣地になってしまっている。


「多分、、、、いけます。松田さん。」

ヒロミが割って入る。彼女も上がって来ているらしい。

「多分、、、って、、、」

ハンドルを握る松田が怪訝な顔を、後部席に向ける。


「まこさん!」

自身、半信半疑なのだが、彼女を呼ぶヒロミ。


「了解。」

レシーバーに答えるまこ。

バリケードに並ぶアルファとイオタの2チーム。その少し前にひとり立つ彼女の周辺に、ふたたび細かな放電が始まる。


その彼女を包む、水流の万華鏡。

それがシャボン玉が弾けるように、消えていく。

「アミ、、、」

かすかに笑うまこ。その姿が消えていく。


彼女の相棒、Bクラス水流能力者。長瀬アミのウォーターミラージュだ。

それでなくても視界の悪い嵐の中、光の屈折を駆使したその能力は、まこの姿を敵から完全にロストさせる。

これの利点は、こちらの視界は、正常のままな事。


「いけ、、、、まこ!」

バリケードの後ろでアミがつぶやく。


グアアララッ、

長身の彼女の周りに、幾重にも高圧力、高出力の雷光が収斂する。


「道を開きます。」

全てのカセを、解放していく日向まこ。


彼女は見てきた、何もできず、見続けてきた。


瓦礫に埋もれる、子供を泣き叫び、呼ぶ母を、

銃弾の雨から子供を庇い、血みどろで倒れ伏す父を、呼び続ける男の子を、


彼女の心には、静かに、静かに、劫火のごとき激憤が蓄積されていた。


「命をないがしろにする者たち!一切の躊躇、容赦があると思うな!」

嵐に叫ぶ、美しい影。


「ヤーールングレーーブル!」


グワラッ、

伸ばした両手の先、

天と地からの砲雷が雷光の渦を集め、捕まえ、圧縮、加速して行く。


「メギンギュルズ!」

まばゆい雷光が10キロ四方から激突し、帯をなし回転しエネルギーのさらなる加速を即す。

渦巻く雷光は、さらに凝縮し、力を溜めていく。街路樹が吹き飛び、暴風が吹き荒れる。


「な、、なんだあれは、、、」

「ウソだろ、、、」

周辺の制定部隊は、我が目を疑い、遮蔽物に、バリケードに、身を伏せ、飛ばされないようしがみつく。


ハイウェイの先に、黒い暗雲まで届く、巨大な光の帯びが膨張し続ける、凄まじい光景が広がる。


そのエネルギーの総量は、平均的雷の120倍、30万メガジュールを超え、一瞬のうちに摂氏3万度に熱せられた大気は、爆発のような衝撃波を放ち続ける。

これが日向まこの、本当の能力だった。


その光の中、彼女の親友であり、相棒の長瀬アミは、思う。


哀しく、みにくい、血みどろの殺し合いの中、怒りと共に死を運ぶ豪雷。


やはり、それでも、、、彼女の輝きは、美しいと思う。


「そは、すべてを打ち砕くもの。全てのアースガルドの神々を束なてをなお、その威を阻む事叶わず、、、、、、」


最大を迎える暴風雨、


「戦神の柱、、、、今、大地の創成を。」

つぶやきは、風に消えていく。


ガラララ、グァバガアアアアアアンン、


「ミョルニル ハンマーーーーーーーーーーーーー!」

大地裂く、彼女、日向まこの戦斧が大気を破壊しながら振り下ろされる。


衝撃が周囲を光で包む。

直撃を受けた、大型トラック、テロリスト達が次々と消えていく。ほぼ全滅と言っていいだろう。

5車線幅が数キロに渡って、消え去り、ヤシの木は薙ぎ倒され、避難の終わった隣接施設にも大ダメージが広がっていく。

層積雲が、嵐が蒸発し、いっ時の日の光が、辺りを照らす。


その中をガタガタとハイウェイの端を縫って、抜けて行くアルファとイオタの黒いバン。

「ヒュ〜、すげ〜な、こりゃ」

朧が口笛を吹く。


「急げよ!理世!」

機嫌の悪い詩吟。

学生にさせていい所業じゃないと、思う。

自分らの不甲斐なさのせいだ。


「ん、だよ!ヒステリー女!」

ブツクサと朧。


「協力、感謝します!まこさん!」

ヒロミが何とか、連絡する。他に何も言えなかった。


『ヒロミさん達も、、、気をつけて、、、』

レシーバーに入る彼女の声は、とても小さかった。


「続けーーーーーー!」

「オオーーーーーーー!」

一気呵成に残敵、掃討にかかる、南口、制定部隊。


ハイウェイに立ち尽くすまこ。

その隣りには、いつのまにかアミがいた。


「たくさん、、、私は、、、、、」

まこがつぶやく。

傍若なテロリスト達とは言え、命を奪ったのには、かわりは無い。


「うん。」

「たくさん、、、、」

再び戻ってくる嵐が、涙を消していく。


「大丈夫、、、」

アミがささやく。

「私は隣にいるよ。ずっと、、、」


「うん、、、、」

二つの影は、いつまでも動かなかった。


嵐は、未だはれない。

また、来週。

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