能力アフター05話06
投稿します。
同時刻、
ターミナルタワー、北口攻防戦、
「あた、、、あたたた、、、、!」
気がつくと、早川サキは、ターミナルタワー34階の廊下に寝かされ、医療班に治療されていた。
ガラス戸越しに見える下層展望台は、3分の1が無くなり、鉄柵も、展望エリアもメチャクチャになっている。よく生きていたものだ。
「気がつきましたか?ブラボー1。」
モヒカンの大男が、声をかけて来る。
コイツは自分達を庇ったはずなのに、ピンピンしている。
「う〜〜頭痛い〜〜。」
隣りでリサ ウエストコットが目をさます。
彼女はオデコに絆創膏を貼っただけの軽傷のようだ。
「私のへカトーⅡは?」
首を振るモヒカンの嵐山。
吹き飛んでしまったのだろう。ホント、やってくれる。
「医療班は退避!嵐山!M2010を頂戴。移動射撃戦に移る。」
戦いは終わっていない。眼下100メートルで、エコーチームの安西と赤毛のよく知らない女子学生が戦っている。
へカトーより威力は劣るがブースト機構を備えた、このライフルは、十分援護射撃が可能だ。
「サキ〜〜ダブルヘッダーはシンドイよ〜〜!」
隣りでリサが、サブウエポンのM24を抱えてブツクサ言っている。
「文句いいなさんな!プレイ オフだろうと勝つまでやるまでよ!終わったら、ビールで乾杯だ!、、、、嵐山のおごりで!」
「はい、、、、?」
後ろで予備弾倉を準備していた、大男が、とばっちりに振り向く。
ガン、ガン、ガン、
展望台から充分に距離をとり、眼前の傾斜する強化ガラスをハンドガンでぶち抜き、ニーリング(膝立ち)でサイトする。
ゴオ、
風雨が再び吹き込んで来る。
「わ〜〜い♡おやっさん!ごちそうさま〜〜!」
機嫌を直したリサが、同様に射撃態勢に移る。
グオン、
M2010が、7、62NATO弾を吐き出す。
せわしい移動射撃戦が、始まる。
「オーーーーホッホッホ!」
嵐を舞う。赤毛のカーリーウエーブヘアー
「ハンドレッド フレイム ウェップ!!」
グオアアアアアッ、
百は無いにしろ、数十の炎のムチが、濁流のように2体のパワードタンクローダーに殺到する。
ズガアアアアン、
爆発反応盾が、かろうじて被害を防ぐが、その破壊力は2体の巨人を地に薙ぎ倒す。
「なんて威力だ、、、、」
ポヨン、ポヨンと弾むように高速移動しながら、カニ軽戦車を牽制している安西だが、飛び入りの風紀の少女の強力極まりない能力に舌を巻いていた。
言うだけはあるだろう。これほどの戦闘力を持つ者は、制定部隊にも数人もいないはずだ。
「あらあら。随分、丈夫なオモチャです事。」
王城たまきにしてみれば、未だモゾモゾと動いているエイブラハムが、不愉快極まりない。
「大人しく潰れなさい!」
再び炎の濁流を呼ぶ。
「たまき!!」
突然、横から突っ込んできた、少女が彼女と共に倒れ伏す。かなりの距離を飛ぶ。
グワオアアッ、
その今いた空間をえぐり取る爆発。
「な、何?しょう子?」
たまきをすんでの所で助けた、少女が笑う。
「油断しないで!」
そこへ敵兵の射撃が集中する。
ガドドドドド、
プラズマ フィールドが彼女達を守る。
「止まらないで!常に移動するんだよ!」
援護する太ったチョビ髭の黒服の男が叫ぶ。
よく倒れたロボットを見ると、背面から多関節の砲台が伸びている。
さっきの奇襲はそれの仕業らしい。
「やってくださったわね!」
跳ね起きるたまき。思ったより面倒なオモチャらしい。
敵の包囲網が少しづつ迫って来ている。
同時刻、
ターミナルタワー、南口攻防戦、
制定部隊、イオタ チームは、質実剛健だが、オッさんばかりの今ひとつ華の無いチームである。
「北西、植林地帯にグレイハウンド!回り込まれました!」
その中で、紅一点のオペレーター、高坂ヒロミちゃんは頑張っている。
シューターの豊洲が牽制し
壁役の松田が攻撃をはばみ、
アタッカーの鈴森が、高機動で接近、両手のデザートイーグルで、ブーストされた50AE弾を敵にぶち込む。
バランスは、いいチームのはずなのだ。
グワゴッッ、
フィールド展開前のグレイハウンドM9が吹き飛ぶ。
「どうだい?ヒロミちゃん!」
男性陣、唯一の独身の鈴森が細い目を輝かせて、ニヤリと笑う。
「黙れ。二股男!」
松田が口をはさむ。
「お前は身辺整理しろ。」
最近太り気味の豊洲も牽制する。
ヒロミの聞いた話しだと、彼は最近二人の恋人と三角関係で刃傷沙汰を起こしたらしい。
中々にモテるようだ。
「やった!鈴森さん!」
とりあえず喜ぶ彼女を尻目に、オレンジ団子頭の、設楽 郁恵の通信が、南口に流れる。
『イオタから、ラムダチームに警告!アルファ2が、戦線に突入します!各班、巻き込まれないよう注意を!退避行動、優先でお願いします!』
「だから遅いって!オレンジ頭!」
「うわあああ!」
南口のアタッカー達が右往左往する。
ドン、
バリケードのバンをへこませて、嵐の中を舞い上がる、黒い影。
「ギャーーーーーーッハハハハハハーーーーーーッ!死ねえええええーーーーーーーーーーーー!!」
落下速度プラス、凄まじいスピードで、振り下ろされる右ストレート。
青白い閃光を放っている。
一種のメテオ ストライクだろう。
ズッッドオオオオン、
一撃の元に6台のグレイハウンドが吹き飛んでいく。プラズマフィールドを展開中にも関わらずだ。ついでに、何名かの味方も巻き込んで。
「おら!おら!おらああああーーーーーーー!!」
縦横無尽に暴れ回る、アルファチームの朧 理世だ。
彼の戦闘スタイルは、その爆発的な肉体の身体能力まかせの暴力である。
その発現はムラがあるらしく、今日は中々調子がいいタイミングのようだ。
発光する青白い光が手足を包んでいる。
物理的な、破壊エネルギーを宿すそれは、彼の攻撃に伴い、地をえぐり、天を突く。
つりあがった三白眼がさらに鋭く上がり、口が耳まで裂け、まるで悪鬼、魔人のようだ。
瞬く間に、10台を越すグレイハウンドが一層され、南口ハイウェイが開ける。
「いや〜〜助かった。」
たまたま道の脇にいた、鈴森は、巻き込まれずに難を逃れる。
細い目が、さらに細くなる。
「ヒロミちゃ〜〜ん。危ないから、避難していい?」
アタッカーにあるまじき事を言い出す鈴森。
「ダメです!みなさんは、アルファ2のフォローに回ってください!」
今日も頑張るヒロミちゃんであった。
「だああぁっらっしゃああああああーーーーーーーーーーーーっっ!!!」
絶好調の朧 理世はそのままハイウェイを突き進み、遥か彼方、下方、敵陣のトラックの列に突っ込んでいく。
いくら何でも先行し過ぎだ。青くなる各隊の隊員達。援護が追いつく訳もない。
数台の大型トラックが横転し、敵、武装兵士たちが、こっぱの如く宙に舞っている。
「お〜〜!」
士気上がる味方だが、簡単にはいかない。
グオアアアアアッ、ガアアア、
敵兵もろとも、朧を襲う衝撃。
巨大な人形兵器、M10エイブラハム、二台による、55口径戦車砲の集中攻撃だ。
上陸し、生き残った4台の内、2台が南口に回って来たらしい。
ボロ雑巾のように、吹き飛ばされる朧。
敵味方、中間地点に落下する。
重症のようだが、よく見ると、凄まじい速度で、傷が回復していく。不死身に近い回復能力も彼の特性だ。
しかし、パワーローダー、背面の自立稼働砲が、ロックオンを完了する。
恐るべきエネルギー効率を誇るレールガンの直撃を受ければ、彼も無事では済まない。
「だ、ダメだ!」
松田が叫ぶ。
距離があり過ぎる。彼のサイコシールドも届かない。第一強度も足りないだろう。
凄まじい閃光が、嵐の闇を焼いていく。
ズドオオオオ、グワゴッッ、
エイブラハムの爆発反応盾が、粉微塵に分断され、大爆発を起こす。
「おお、、、、おおお!」
なぜか、喜ぶ細目の鈴森。
嵐を裂いて、長い黒髪がなびく。
玲瓏たる美貌、抜群のスタイル。不可視の切断糸を操る、全制定部隊の中、随一の麗人。アルファ1こと、千里詩吟がまぼろしの様に現れる。
「先行し過ぎよ。このバカ!」
そう言う彼女が、何かを空中で、キャッチする。
「ギャアアアア!」
叫ぶ朧。
「イッテェな!このアマ!」
ほぼ回復した、ボロボロの服装の朧だが、よく見ると、右腕が無くなっている。
「あ、ゴメ〜ン。間違えちゃった♡」
さっきキャッチした、右腕をコロコロ笑いながら、投げてよこす詩吟
「なんか、文句ある?」
冷ややかに告げる。
どうやら、ビンタの事を郁恵に、聞いたらしい。エイブラハムを寸断するついでに、オレの腕を斬り飛ばしやがった。
恐ろしい女だ。シャレにならない。
「い、いや。別に、、、、、」
さすがの朧も目をそらす。
自ら合わせた右腕、断面は、たちまち細胞の癒着が始まり、筋肉、骨、神経組織などたちまち元通りになる。
それでも、嫌がらせで腕を切り落とすのは、やめてもらいたい。
ほっといても生えてくるだろうが、首を切断されたらどうなるだろう。
もうひとりの朧理世ができるのか?
プラナリアじゃあるまいしそれは無いか。
多分死ぬだろうな。
などと、ガラにもなく、くだらない事を考える朧の眼前で動きがある。
ガガ、ガガガガ、
崩れる、雨の路面の奥、
半壊したエイブラハムが、動き出す。
驚くべき、タフネスさだ。
武装も大半が無事のようだ。
「それじゃ、理世。オモチャの後片付けをしちゃいましょう。」
楽しそうに、雨に濡れる麗人が悪鬼の如く笑う。
たおやかな指から伸びる、不可視、無数の切断糸が、雨にかすかに光る。
「やれやれ、、、、」
恐ろしい相棒の攻撃には、充分気を付けなければならない。
ため息する朧。
制定部隊、トップチームのアルファ1とアルファ2が、嵐のハイウェイを疾走する。
同時刻、
ターミナルタワー、北口攻防戦、
グワアアアアッ、
凄まじい銃撃が、空から降り注ぐ。
四つ足、グレイハウンドM9を転倒させ、電磁シールドの無い部分を正確に撃ち抜いていく。
「ブラボー1か!」
地獄に仏とはこの事だろう。大喜びする太っちょ安西。
次々と数を減らしていく、M9。
タワー、遥か上からの早川サキ達の援護射撃だ。
「ブラボーですよ!」
太っちょ安西、渾身のオヤジギャグが炸裂する。
『ブラボーですよ!』
わざわざ通信してくる。
「ど、、、どうも、、、、」
忙しく移動のタイミングを測りながら、射撃を続けるサキにとっては、鬱陶しい事この上ない。
ドタマ、ぶち抜いてやろうか、とついつい考えてしまう。
「安西ちゃん、寒いよね〜〜!」
横でリサが、ケラケラ笑う。
「あ〜〜!怖いよ!戸畑ちゃん!」
バリケードの脇から、援護射撃を続けるチャラ男、竹本の後ろで、戸畑が不気味にクスクス笑っている。
彼女は安西のオヤジギャグが、大好物だ。何が面白いのか、地縛霊がうめいているような笑い声が、しばらく止まない。
とても怖い。
「よぉし!いけるぞ!」
「おおおーーーーーーーーーー!」
北口、エコーからイータチーム、全員の士気が上がる。
盾役が、前線を押し上げ。敵兵を排除していく。
一概には言えないが、テロの部隊など、部隊統制を前提としない非正規戦闘部隊には、戦闘損耗率などの概念はあまり当てはまらない。
しかし50パーセントも損耗率が越えれば、戦闘維持に支障が出てくるはずである。
勢いに乗る各隊は、重心を二つに分け、大型人型兵器、M10エイブラハムの包囲殲滅を図る。
細かく移動するブラボーチームの援護射撃も、効果的に機動兵器の攻撃を阻む。
ある種の、楽観が生まれても仕方がない事だった。
「一つずつ、行きますわよ!しょう子!合わせて!」
ゴオアアア、
王城たまきの無数の炎鞭が、嵐に舞う。
「了解!」
なんとか、たまきに追いつく、相棒が能力を放つ。
「ファイアーーーーーーメイルシュトローーーーーーム!」
グオアアアアアッ、
伊勢理しょう子の紅蓮の火炎旋風が、巻き起こる。
百の炎鞭が渦を巻く。たまきが必勝の攻撃を放つ。
「ハンドレット フレイム トルネーーーーーーード!」
炎のムチが、渦を巻き、その威力を収斂させる。
しょう子の火炎の竜巻との合算の破壊力は、2キロトンを超え、バンカーバスター並みの貫通爆発力を生む。
グワアアアアッ、
まばゆい閃光と激しい振動、爆風が、嵐を吹き飛ばす。
「す、すげーーーな!JK!」
茶髪のチャラ男、竹本が大喜びする。
誰もがエイブラハムの撃破を確信する。
が、しかし、
ドガガガアアアアアアアア、
激しい銃撃が、一円の爆炎を切り裂いて、辺りをなめ尽くす
「ギャアアアア!」
「うわあああああ!!」
悲鳴と怒号が嵐の中を飛び交う。
「なん、、、、ですの?」
呆然と立ち尽くす、王城たまき。
爆炎が薄れる中、現れる影。
高機動パワードタンクローダー、エイブラハムは、まったくの無傷。
胸の二門の20m mバルカンが辺りを蹂躙していた。
そのやや、上空を舞う、高速で回転する二つの円盤。
それが、どうやら、たまき達の攻撃をはばんだらしい。
ズドオオオオン、
その二つの円盤が地面に突き刺さる。
それは、白い2メートルを越す十字架であった。
その真ん中に立つ、ビヤ樽のような、太った大きな影。それも、巨大な十字架をかつぐ。
「オーーーーーホッホッホッ!」
キンキンの高音の笑い声。丸坊主の白いヒゲの神父。戦場に死を運ぶ死神の使い。黒い喪服の悪魔。
「アアーーーーーゥメェエエエーーーーンン!!」
天使の声が祈りをあげる。
「ブ、、、、ブラッディ、、、、ブラッド、、、、、、」
メタボ安西が硬直する。足が震えて腰が抜けそうだった。
「ヤバイ!!なんてもんが、、、、!!」
悪寒がはしる、サキ。震える指がトリガーをにぎる。
あれを何とかしないと全滅する。
確信が自動的に、ビア樽のようなエセ神父にサイトを合わせる。
遅かった。
ズガアアアアン、
30階まで降りて来ていたブラボーチームを薙ぎ払う、白い円盤。
巨大十字架は、攻防一体。攻撃も可能らしい。
嵐山がとっさにサキとリサを庇うが、一緒に吹き飛ばされる。
視界が血で染まっていく。
その中で早川サキは見る。タワー大橋に集まって来る、無数のM9グレイハウンド。
そして、3体の新しいM10エイブラハムたちを。
別口で上陸した敵の援軍のようだった。
ターミナルタワー、地下10階、地下情報センター、
「ブ、、、ブラッド アズベイルです!」
悲鳴を上げるオペレーター達。
彼ら彼女らは、巨大モニターに映る嵐にかすむ、その神父、その能力者のあまりある脅威をよく知る。
中東、南アフリカ、あまたの戦場を駆け巡り、神の慈悲の元、繰り広げられる大虐殺。
一個師団さえ全滅させる狂気は、能力以前のものがあった。
戦場の絶滅異端審問官。惨劇の砂漠の人喰い虎。二つ名に事欠く事はない。
息を呑むハドリア。
「アルファチーム!北口援護に回れないか、、、、!」
あの二人でやっと互角、、、、あるいは、、、、
悲鳴のような郁恵の声が応える。
「だ、ダメです!南口にも敵の増援!M9多数!M103体!!」
状況は悪化はする一方だった。
ターミナルタワー、南口、
グワアオオオオッ、
半壊していた、最後のエイブラハムが爆散する。
「マズイわね。人喰い神父が出たってさ。理世。」
不可視の切断糸が宙を舞う。
「極東くんだり、ご苦労なこった。」
さすがに息のあがる、朧。
彼らの眼前には、ハイウェイを埋め尽くすほどのカニのようなM9グレイハウンドと新手のM10エイブラハム、3体が立ち塞がる。
「後から後から!キリがねえ!」
集中砲火が地面を抉る。
「手早く片付けないと、、、、北口がもたないよ。」
あせる詩吟だが、状況は一朝一夕にはいかない。彼女は手詰まりに追い込まれているのを感じていた。
ターミナルタワー、北口、
20 m mバルカン砲の斉射は、味方に想像以上の被害をもたらしていた。
各班、防御シールドは展開していたが、虚を突かれたのが響いた。
四肢を飛ばされる者。直撃で、四散する者。死傷者はアタッカーの半数を越える。
「あ、、、、ああ、、、、」
その中で硬直する、たまき。目の当たりにする惨状は、彼女の理解をこえる。
涙が滲む。
「ま、、、、まずい、、、、」
あせる、太っちょ安西。
そのあまりに高い戦闘力。
そのあまりに卓抜した戦闘センスに、彼は忘れていた。
彼女が普通の女子学生である事を。
戦場では、それのもたらす一瞬の隙が命取りになる。
ガコン、
「迷えるううぅ〜〜〜〜仔羊よおおぅ〜〜〜〜」
ブラッドの持つ十字架の先端が開き、マシンガンが現れる。
最大火力を持つ彼女は真っ先に狙われる。
「う、うごけ!動くんだ!!火使いの子!!」
サブマシンガンを乱射する安西。
ドカア、
しかし、オプションの十字架の円盤が、彼を吹き飛ばす。斉藤のプラズマフィールドが、かろうじて、彼を守るが、地面にめり込んでしまう。凄まじい打撃力だ。
「うぅテェンに〜〜召されなさああ〜〜〜〜いい!」
ボーイソプラノの歌うような声。
それと同時に斉射される、マシンガン。
無防備のたまきに集中する。
グッワオオオッガアアアッ、
炎の壁が彼女を守る。
「あ、、、、」
気がつくと伊勢理しょう子が、たまきを抱いている。
「た、、、たまき、、、、逃げて、、、、」
「しょう子、、、、?」
力が抜けていく相棒の、親友のその身体は背中がボロボロだった。
フルメタルジャケット弾、貫通性の高いそれは、しょう子の炎を抜けて彼女の肉体を破壊しつくしていた。
たまきが無事なのは、奇跡と言っていい。
「しょう、、、子、、、、しょう子、、、、いやああああああーーーー!!」
彼女を抱いて座り込むたまき。
頭上から滝のような雨が降り注いでいた。
5台の巨大兵器が彼女達、そして各、制定部隊、アタッカー達をターゲットする。
思いのほか歯ごたえが無くて、あきたらしい、ブラッドエセ神父。
「みんな、やっちゃって。上の連中も、とどめね。」
オモチャたちに後始末を任せる。
二門の戦車砲、肩のミサイルランチャー、背面のレールガン、胸のバルカン砲が一斉に
放火を上げる。
「い、、、いや、、、、!あ、安西!!」
銃を捨てて飛び出そうとする黒髪ロングの戸畑。
「ダメだ!戸畑ちゃん!」
必死に抱き止める、チャラ男、竹本。もう間に合わない。行っても犬死にだろう。
斉藤のフィールドも焼石に水だ。
凄まじい轟音が北口、タワーを赤く染める。
「エクスプローージョン、、、、、」
少女がつぶやく。
グオオオワアアアァ、ゴオオオオオオアアアアアアアア、
天雷が空を裂き、鳴動する大地が地獄の釜を開けた様な連鎖爆発を集中させる。
轟音が轟音を呼び、堅牢無比のターミナルタワーが軋む。タワーを中心にアルカ全土を揺さぶるマグネチュード6以上の激震が天地を駆けめぐる。
そのエネルギーは6、31×10の13乗、ジュール。単純なエネルギーの総和は、原爆、リトルボーイのそれを超えていた。
ターミナルタワー、南口、
「何だ!何だ!何だー!!どーなってるの?ヒロミちゃんーーー!!」
激しい振動の中、道の脇の立ち木に必死に捕まっている鈴森。細い目が消えいりそうだ。
『わ、わかりません!!モニター、計器類がダウンしました!』
ヒロミの悲鳴がレシーバーに入る。地下10階のシェルターが影響を受けているらしい。尋常な事態ではない。
「ギャハハハハハハハハ!コイツあいい!!」
嵐の海のように跳ね回る路面。カニ型M9、ついでに重量級M10までひっくり返る。
朧 理世はカワセミが水面の魚を狩るように、跳ねる回るM9たちを次々と破壊していく。
ズシャアアア、
倒れたM10エイブラハムを八つ切りにする詩吟。
「あと二つ、、、、」
好機を最大限に活かそうとする彼女。
北口で何かが起こっている。それはわかるが、その原因は想像できない。ありえない話しだが、能力者がそれならば、、、、
わずかな悪寒が胸をよぎっていく。
ターミナルタワー、北口、
その少女は、天空にあった。
分厚い層積雲が千切れ飛び、空に巨大な穴が開く。雨粒が乱舞する中、蒼穹から光のハシゴが幾重にも差し込み輝く。この世の物とは思えない光景が広がっていく。
「大丈夫、、、まだ生きてるよぉ、、、」
瓦解したタワー30階で、二人を庇ったモヒカン嵐山を介抱するリサ。
「なんだ、、、、あれは、、、、」
M2010ライフルの残骸を杖にして、何とか立ち上がる傷だらけの早川サキ
彼女は上空の、その少女を見ていた。
ハイウェイを埋めるほどのM9グレイハウンド、および、凶悪な超耐久、重殺戮兵器、M10エイブラハム5台すべてが、完膚なきまでにバラバラに破壊され、残骸となって転がっている。
とても信じられる事ではない。
身体のあちこちから、炎を上げ宙に滞空する少女。
彼女がやったのか?
自分の正気を疑った方がマシだった。
だが、しかし、知識としては知っていた。
フワリとしたブラウンのセミロング。深い、深いトビ色のひとみ。少しキツめだが整った目鼻立ち。白い一高の夏服。緑色の風紀の腕章。スラリとした抜群のスタイル。文句なしの16歳の美少女。
そして日本、いやアジアにおいて比べるものの無い、最強無比を謳われる炎の炎姫。
野川那智。
比喩や誇張では、断じて無い。むしろ控えめで卑下した評価だとさえ言い切れる。それ程の奇跡を彼女は体現せしめたのだ。
「おお、、、、おおおおおお!」
下降して来る少女を見て、歓喜する、ブラッドエセ神父。
三枚の高速回転する十字架が、彼女の爆炎から神父を守ったらしい。
「その姿、、、、その力、、、、アジア最強を冠する悪魔よ!その討伐の栄誉をわれに与えるのですね!オウ マイ ゴオオオットォォ!神に感謝しま〜〜〜す!」
ひざまずき、天に祈る狂気の魔人。彼が祈る神は、果たしてどんなものか、誰にも理解はできないだろう。
「な、、、、、ち、、、、、」
しょう子を抱くたまき。
放心するようにつぶやく。
上空から、雨粒が戻り、
再び、嵐が地を覆う。
血だらけの伊勢理しょう子が見えた。
那智がビヤ樽のような、白ヒゲの異様な黒い神父姿の男をにらむ。
「オマエ、、、、、、、お前かああああああああ!」
あま色のセミロングの髪が明るいオレンジ色に輝き出す。サンライトイエローの光点がひとみに宿る。
ハーフアップの黒髪の女の子。
「や、、、、、、」
中坊の頃の大会、傍若無人のたまきに付いていた、やさしそうな、その少女をよく覚えていた。
「やったなああああーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
激情がデトネーション開放状態を呼び覚ます。
グワアアアアッ、ガアオオオオオゴアアアアアッ、
さっきとは、質の違う振動が、根底からタワーを揺らす。
「ち、、、智由姉、、、、、お願い、、、、、!」
何とか自制する那智。このまま怒りに任せては、自分はターミナルタワーをへし折って破壊してしまうだろう。冗談でもなんでもなく。
上空の妹を見ながら走る智由。
「はいよ!任せな!」
智由の全身から放たれる緑の光が、嵐のハイウェイを包んで行く。
個々の治療では間に合わないのを感じた彼女は、エリアヒールを試みる。
「エナジーーーグラントーーーーーー!」
ブワアアアアアアアアアア、
雨のように降り注ぐ緑色の粒子が、しょう子、地面にめり込んだ安西、重症を負った制定部隊、アタッカー達を包んでいく。
細胞が、破壊された臓器が、修復、再生していく。猛スピードで塞がる傷が、肉体が、体内の銃弾をバラバラと吐き出していく。
砕けた骨が、集まり固り、筋繊維が、神経繊維が複雑な、ネットワークを回復していく。
「お、、、おお、、、う、、、動ける、、、、?」
全身複雑骨折状態だった、太っちょ安西がゾンビのように、むっくり起き上がる。
全制定部隊の回復班、治癒能力者をいくら探しても、これほどの能力の保持者は、いないだろう。
いや、自然治癒力の増進などといった、生やさしいものでは無かった。別次元の能力と言っていい。
「手が、、、お、俺の腕が、、、、」
「あ、、、ああ、、、あ、足が、、、、」
中には欠損部位、無くなった腕や、足が再生する隊員達もいる。
これも奇跡の技と言って差し支えがなかった。こんなデタラメ、アルカのデータバンクには存在しないだろう。
とはいえ、それでも、失った命は二度と戻らなかった。
「た、、、ま、、、、き、、、、」
息を吹き返す少女。
彼女の腕の中で、黒髪セミロングのハーフアップの伊勢理しょう子が、目を覚ます。
傷は綺麗に消え、出血も止まり、血色もいい。
「しょう子、、、、!しょう子おおおおーーーーー!」
その優しい笑顔を抱きしめて、泣きじゃくる、たまき。
太っちょ安西が気がつくと、そばに、プラチナショートボブの小柄な少女が立っていた。
「バリケードまで下がって、、、、、那智の戦いに巻き込まれる、、、、」
そして幻のように消えさる。
アタッカーにあるまじき行動だが、彼女達にしたがうのは、理性より本能が最善と全身に命ずる。
「全アタッカーに通達ですよ!バリケードまで退避!急いで下さーい!」
奇妙な事に、みんな、大人しく従ってくれる。凄まじい奇跡が立て続けに起これば、みな、正常な判断力を失うのかもしれない。
エコーチームの仲間達の所に戻ると、茶髪、竹本くんと黒髪ロングの戸畑さんが、抱き合って倒れていた。
「あ〜〜ゴホン、君たち、、、そういうのは仕事が終わってからにしてくれないかな〜〜〜アハハ。」
「バ、、、ッ!何言ってやがる!オッサン!!」
カンカンになって、跳ね起きる竹本。
「あ、、、、あうう、、、、」
ひきつってアワアワする戸畑。
「いやー、若いって大変ですな〜〜。」
メガネの斉藤くんに同意を求めると、彼が妙に嬉しそうに笑う。
「いや、ホントですね。まったく。」
エコーチームの懸案事項はさらに、こじれていった。
「う、動かないでください!」
瓦解した30階のターミナルタワーで、サキ達は救護班に治療を受けていた。
重傷のモヒカン嵐山も意識を取り戻す。相変わらずのタフネスだ。
リサは比較的軽症だ。さすがブラボーチームで1番の幸運持ち。
「わーってるよ!」
大人しく治療を受けるサキ。右腕、左足骨折。全身打撲、擦過傷多数。
サブウエポンも使い果たした。長距攻撃に特化した自分達には、もうあまり出来ることもないだろう。
運命を決める戦い。それを指をくわえて、見ているだけというのも気には食わないが。
眼下に対峙する、あの少女、野川那智とエセ神父、ブラッド アズベイルが見える。
高速回転する三つの巨大十字架が、二人の間を舞う。
暴風雨が、広いハイウェイを叩き、戦いの残滓たるM9の残骸たちが雨に煙る。
「はじまる、、、」
ゴクリと息を呑むサキ。彼女にも勝敗は予想できなかった。
吹き荒ぶ嵐の中、最強最悪のテロリストと強大無比の炎姫との戦いが始まろうとしていた。
また、来週。




